ANAが、サウジアラビアのリヤド航空と提携に向けた覚書(MoU)を結びました。2026年8月18日の発表です。日本とサウジアラビアを結ぶだけの話ではなく、リヤドを乗り継ぎ地点として中東とアフリカへ広げていく、というのが両社の説明です。
リヤド航空は、名前を聞いたことがない人のほうが多いかもしれません。それもそのはずで、この会社が旅客便を飛ばしはじめたのは2026年6月です。生まれてまだ3か月足らずの航空会社と、ANAが手を組もうとしています。
わたしがこの発表を読んでいちばん気になったのは、書かれている中身よりも、書かれていない部分でした。覚書には「いつから」がひとつも出てきません。コードシェアの路線も、マイルの積算率も、これから協議するとしか書かれていない。つまりこれは、決まったことの発表ではなく、これから決めますという発表です。
この記事では、ANAの公式発表に書かれていることだけをもとに、想定されている提携の中身、リヤド航空という会社の実像、そしてマイルを貯めている人にとって何が変わりうるのかを整理します。
覚書で決まったのは「これから話し合う」ということ
今回結ばれたのは覚書(MoU: Memorandum of Understanding)です。契約ではありません。具体的な提携の検討を進めることに基本合意した、という段階です。
発表文にも「具体的な提携の検討を進めることに基本合意し」と書かれています。ここを取り違えると、明日からリヤド行きのANA便が予約できるように読めてしまいますが、そういう話ではありません。
ANA側の署名は代表取締役社長の平澤寿一氏、リヤド航空側はCEOのトニー・ダグラス氏です。リヤド航空は、サウジアラビアの政府系ファンドであるパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)が全額出資するフルサービスキャリアで、2023年3月の設立以来、2030年までに世界100都市以上を結ぶことを目標に掲げています。
想定されている3つの提携内容
発表文には、想定される協力内容が3つ挙げられています。実現の順番としても、たいていこの並びになります。手前のものほど早く、奥のものほど時間がかかります。
| 提携の内容 | 利用者にとって何が変わるか |
|---|---|
| インターライン契約(連帯運送) | 1枚の航空券で両社の便を乗り継げます。出発地で最終目的地まで手荷物を預けられるスルーチェックインにも対応する予定です。 |
| コードシェア(共同運航) | 相手の便にANAの便名が付きます。対象路線はこれから協議する、と書かれています。 |
| マイレージプログラムの相互連携 | 搭乗でのマイル積算や、特典航空券の相互利用などを検討します。積算率や必要マイル数は未公表です。 |
インターラインは、航空会社どうしの提携としてはいちばん軽い形です。乗り継ぎの手続きが1枚の航空券で済むようになり、荷物も通しで預けられる。ここまでは比較的すぐに実現します。
いっぽう、マイレージの相互連携は時間がかかります。積算率をどう設定するか、特典航空券を何マイルで開放するか、どのシステムでつなぐか。決めることが多く、両社の収支に直結するからです。発表文でも「段階的導入」ということばが使われています。
コードシェアの候補は3つの方向
コードシェアについては、想定している路線の方向が3つ示されています。地図を思い浮かべると、それぞれ役割がはっきり違うことがわかります。

| 方向 | 想定されている内容 |
|---|---|
| サウジアラビアから先へ | リヤドを経由して、中東やアフリカの各都市へつながる路線 |
| 日本国内各都市へ | 東京を経由して、ANAの日本国内線へつながる路線 |
| アジア経由でサウジへ | アジアなどの主要空港を乗り継ぎ拠点にした、リヤドへの路線 |
3つ目に注目してください。「アジア等の主要空港を乗り継ぎ拠点とした」と書かれています。これは裏を返すと、日本とリヤドを直行で結ぶ話は、いまのところ入っていないということです。
リヤド航空はまだ日本に乗り入れていません。ANAも中東方面の路線を積極的に増やしている状況ではありません。だから当面は、バンコクやシンガポールといったアジアの空港で乗り継ぐ形が現実的な入口になります。2026年度下期のANA国際線の計画でも、増便の重心はアジアとインドに置かれています。ANA国際線の2026年度下期の増便計画とあわせて読むと、この提携がどの流れの上に乗っているのかが見えてきます。
リヤド航空は、まだ生まれたばかりの航空会社
リヤド航空は2023年3月に設立され、旅客便の運航をはじめたのは2026年6月です。最初の路線はリヤドとロンドン・ヒースローを結ぶ便でした。
そこからの展開が異例の速さで、2026年に入ってからジッダ、ドバイ、カイロ、マドリード、マンチェスター、ムンバイ、ダッカ、イスラマバードと就航都市を積み上げています。アジア方面では、9月にマニラ線が加わる予定です。使っている機材はボーイング787とエアバスA350で、どちらも長距離を飛ばせる機材です。
会社の特徴として、ANAの発表文では「最先端の機内インテリア」「次世代のデジタル機内エンターテインメント」「サステナビリティへの取り組み」「サウジアラビアならではの心温まるホスピタリティ」の4つが挙げられています。新しい会社なので、機内の設備は当然ながらすべて最新の世代です。
ここで気をつけたいのは、リヤド航空がどの航空連合にも加盟していないことです。スターアライアンスでもワンワールドでもスカイチームでもありません。だからこそ、ANAとの関係をつくるには今回のような二社間の提携が必要になります。スターアライアンスとワンワールドの違いを押さえておくと、アライアンス加盟と二社間提携で何がどう違うのかがつかみやすくなります。
マイルはどうなるのか
マイルを貯めている人がいちばん知りたいのはここだと思います。現時点でわかっていることを正直に書きます。
- ANAマイレージクラブとリヤド航空のプログラムを相互に連携する方向で検討している
- 検討の対象は、搭乗でのマイル積算と、特典航空券の相互利用
- 積算率、必要マイル数、開始時期は、いずれも未公表
- プレミアムポイントの扱いについては、発表文に記載がない
つまり、いまの段階では「そういう方向で話し合う」以上のことは決まっていません。SFCを目指している人が予定に組み込めるような材料は、まだ出ていないと考えたほうがいいです。
それでも、方向としては期待できます。アライアンス外の提携で特典航空券が開放されると、そのアライアンスが手薄な地域に一気に穴が開くからです。ANAのマイルで中東からアフリカへ、というルートは、これまで選択肢がかなり限られていました。
いつから使えるのか、という肝心の答え
発表文には開始時期が書かれていません。「今後」「段階的に」ということばだけです。
航空業界の慣例で考えると、こうした覚書からインターライン契約の締結までは半年から1年、コードシェアの開始まではさらに時間がかかることが多いです。マイレージの相互連携はいちばん最後に来ます。旅行の予定を立てるうえでは、当面は影響がないものとして扱っておくのが安全です。
ただ、リヤド航空は2030年までに100都市という目標を掲げて、実際に半年足らずで10以上の都市に就航させている会社です。この会社の時計は、ふつうの航空会社より速く進んでいます。想定より早く形になる可能性は十分にあります。
わたしがこの発表で注目したこと
サウジアラビアは、いま国を挙げて航空と観光に投資しています。リヤド航空はその中心にある会社で、資金の出どころは政府系ファンドです。採算より先にネットワークをつくる、という順番で動けます。
その相手として、ANAは日本市場という乗り継ぎ先を提供します。リヤド航空にとっては、東京を押さえれば日本国内の主要都市まで一気につながる。ANAにとっては、自社では飛ばしにくい中東・アフリカ方面を、他社の翼を借りて埋められる。どちらにも利点があります。
気になるのは、この提携がどこまで深くなるかです。インターラインで終われば、利用者にとっては「乗り継ぎがすこし楽になった」で済みます。マイレージまで到達すれば、ANAのマイルで行ける場所の地図が書き換わります。そこまで行くかどうかは、これからの協議次第です。
まとめ
今回の発表を、要点だけに絞ると次のようになります。
- ANAとリヤド航空が、2026年8月18日に提携強化の覚書を締結した
- 想定されているのは、インターライン契約・コードシェア・マイレージ相互連携の3つ
- コードシェアの候補は、リヤド以遠の中東アフリカ、東京以遠の日本国内線、アジア経由のリヤド線の3方向
- 日本とリヤドを直行で結ぶ話は、現時点では出ていない
- 開始時期・積算率・必要マイル数は、いずれも未公表
続報が出るとすれば、まずインターライン契約の締結でしょう。そこが動いたときが、この提携が本物かどうかを見きわめる最初の節目になります。最新の情報は、ANAグループの公式プレスリリースで確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q. ANAのマイルでリヤド航空に乗れるようになりますか?
A. 現時点では乗れません。今回の覚書では、搭乗でのマイル積算や特典航空券の相互利用を「検討する」と書かれているだけで、開始時期も必要マイル数も公表されていません。マイレージの相互連携は3つの検討項目のなかでもっとも実現に時間がかかる部分です。
Q. 日本からリヤドへの直行便はできますか?
A. 今回の発表には直行便の話は含まれていません。コードシェアの想定として挙げられているのは「アジア等の主要空港を乗り継ぎ拠点としたリヤドへの路線」です。当面はアジアでの乗り継ぎが前提になります。
Q. リヤド航空はスターアライアンスに加盟していますか?
A. 加盟していません。リヤド航空はスターアライアンス・ワンワールド・スカイチームのいずれにも属していない独立系の航空会社です。だからこそANAとの関係をつくるには、今回のような二社間の提携が必要になります。
Q. リヤド航空はどんな航空会社ですか?
A. サウジアラビアの政府系ファンドであるパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)が全額出資するフルサービスキャリアです。2023年3月に設立され、2026年6月にリヤド〜ロンドン線で運航を開始しました。2030年までに世界100都市以上を結ぶことを目標に掲げています。
Q. いつから乗り継ぎが便利になりますか?
A. 時期は公表されていません。発表文には「今後」「段階的に導入」と書かれているだけです。まずインターライン契約が結ばれると、1枚の航空券での乗り継ぎとスルーチェックインに対応します。そこが最初の目安になります。
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