ANA国際線ファーストクラスに鹿児島の「あきほなみ 吟地米」——19農家だけが育てる米が9月1日から欧米6路線に

実りの季節をむかえた鹿児島の田んぼ

ANAが、国際線ファーストクラスの機内食に鹿児島県産米の「あきほなみ 吟地米(ぎんじまい)」を出します。2026年9月1日から11月30日までの3か月間です。鹿児島県、JA鹿児島県経済連との連携による取り組みで、8月21日に発表されました。

米の銘柄が機内食の発表になること自体、そう多くはありません。しかもファーストクラスの主食としての採用です。産地の側から見れば、これ以上ない舞台だと思います。

吟地米という名前は聞き慣れないかもしれません。じつはこれは品種名ではありません。「あきほなみ」という鹿児島のオリジナル品種のなかから、ある条件を満たしたものだけに与えられる呼び名です。その条件が、たった19農家という数字につながっています。

この記事では、どの便で食べられるのか、この米は何が特別なのか、そしてファーストクラスに乗らなくても味わえる場所はどこかを、ANAの発表内容にそって整理します。

対象は羽田・成田発の欧米6路線

提供されるのは、ANA国際線の日本発の欧米路線です。日本を出る便が対象で、期間は3か月間に限られます。

項目 内容
提供期間 2026年9月1日(火)〜11月30日(月)
対象クラス ANA国際線ファーストクラス
羽田発の対象路線 ロンドン、ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコ
成田発の対象路線 シカゴ、サンフランシスコ
連携先 鹿児島県、鹿児島県経済農業協同組合連合会(JA鹿児島県経済連)

ANAの国際線ファーストクラスは、そもそも設定のある路線が限られています。今回の6路線は、そのファーストクラスを設定している主要な欧米路線をほぼ網羅した形です。ロンドン、ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコ。どれも長時間のフライトで、機内で食事をとる回数も多くなります。

「あきほなみ 吟地米」とは何か

「あきほなみ」は鹿児島県のオリジナル品種です。秋にたわわに実った稲穂が波打つ様子から名づけられました。日本穀物検定協会の食味ランキングで、最高位の「特A」を取りつづけている品種です。

そのあきほなみのなかでも、鹿児島県北部の寒暖差が大きい米どころで、「匠たちの会」に所属する19農家だけが栽培したものを「あきほなみ 吟地米」と呼びます。品種の名前ではなく、産地と生産者を限定した呼称です。

19という数字を、あらためて見てみてください。鹿児島県全体であきほなみをつくっている農家は数えきれないほどいます。そのなかの19軒です。ANAの発表では、味わいの特徴を「粘り強くもちもちとした食感と、口の中でほどける軽やかな後味」と表現しています。

機内食の主食として考えると、この特徴には意味があります。機内は気圧が低く、乾燥しています。味覚も地上と同じようには働きません。そのなかで存在感を出しつつ、重たく残らない米というのは、条件としてかなり厳しいはずです。

なぜANAが県産米を機内に載せるのか

今回の取り組みは、おいしい食材を出すという話だけでは終わっていません。発表文では「持続可能な農業」を空から世界へ発信する、という言いかたがされています。

日本の農業の現場では、高齢化にともなう担い手不足と後継者の問題が深刻になっています。鹿児島は農業産出額が全国2位という農業県ですが、そこでも事情は変わりません。

そこでANAは、世界中の乗客が集まるファーストクラスという舞台から、この米と生産者の技術を発信します。ねらいは、農産物の国際的なブランド価値を高めることと、次世代の生産者の意欲につなげることです。機内食が、そのまま産地の広告塔になるという構図です。

この考えかたは、ANAがこれまで機内で扱ってきた飲みものの選びかたとも重なります。ファーストクラスの赤ワイン「紫鈴 rindo」にしても、ビジネスクラスの日本酒「浦霞 禅」にしても、選ばれた背景にはつくり手の物語があります。今回の米も、その並びに置かれたと考えるとわかりやすいです。

ファーストクラスに乗らなくても食べられます

ここが今回の発表のいいところだと思いました。機内での提供期間にあわせて、地上でも同じ米を出す店舗が用意されています。

店舗・施設 期間と内容
ANA FESTA 羽田空港第2ターミナル 60番ゲートフード店 9月1日〜30日。具材入りのおむすびのほか、塩むすびも用意されます
鹿児島華蓮 銀座店 9月1日〜。鹿児島黒牛や黒豚の料理の締めとして炊きたてで提供
ホテル ザ セレスティン東京芝 9月1日〜11月末(予定)。薩摩藩江戸上屋敷跡に建つホテルでの特別メニュー
華蓮 鹿児島店・大阪心斎橋店・博多店 9月1日〜。鹿児島の郷土料理とあわせて提供
SHIROYAMA HOTEL kagoshima 9月1日〜11月30日。割烹思水の会席、ザラウンジカサブランカの朝食膳「城山彩箱」で味わえます
おいどん市場 与次郎館 9月1日〜30日。特別販売。9月12日(土)には試食イベントも開催
結び屋(鹿児島パールライスのアンテナショップ) 9月1日〜30日。店頭精米されたものをおむすびや精米で購入できます
JAタウン(産地直送の通販サイト) 9月1日〜11月30日。鹿児島から全国へ発送

とくに現実的なのは、羽田空港第2ターミナルのANA FESTAです。国際線ファーストクラスとは何の関係もない旅の途中でも、おむすびとして同じ米を食べられます。塩むすびを用意しているのが、つくり手としての自信の表れだと思いました。

SHIROYAMA HOTEL kagoshima の朝食膳も気になります。桜島を望む三面ガラス張りのラウンジで、この米を朝に食べる。旅の目的として十分に成立します。

対象の6路線は、どれも長いフライトです

今回の対象になっている路線は、片道でおおよそ10時間から13時間かかります。この長さになると、機内での食事は1回では終わりません。出発してしばらくしてからのコースと、到着前の軽い食事と、少なくとも2回は食卓が用意されます。

ANAボーイング777-300ERの国際線ファーストクラス
ANAボーイング777-300ERの国際線ファーストクラス(写真:Wikimedia Commons / Jun Seita from Palo Alto, CA, U.S. / CC BY 2.0)

ANAの国際線ファーストクラスには、和食のコースが必ず用意されています。その献立の中心に置かれるのがごはんです。つまり今回の米は、3か月のあいだ、欧米へ向かうファーストクラスの和食を支える立場に置かれることになります。

ANAの国際線では、コースの食事とは別に、好きなタイミングで頼める軽食のメニューも用意されています。長距離便では、こういう「決まった献立の外」で出てくる一品のほうが記憶に残ることがあります。

JALのファーストクラスとの違いはどこに出るか

日本の航空会社が国際線ファーストクラスで日本らしさを打ち出すとき、選ぶ道はいくつかあります。JALは、日本のワインを国際線ファーストクラスに載せるという打ち出しかたをしてきました。長野のワイナリーがつくるソラリス 千曲川 シャルドネがその例です。

いっぽうANAは、今回、産地と生産者の数まで限定した米を選びました。飲みもので個性を出すのか、主食で出すのか。どちらがいいという話ではありませんが、着眼点の違いははっきりしています。ごはんは、ワインとちがって全員が口にします。19農家という数字が、そのまま全員に届く形になります。

機内誌「翼の王国」9月号に舞台裏が載ります

ANAの機内誌「翼の王国」の2026年9月号で、この米が機内食になるまでの背景と、生産者の想いが紹介される予定です。掲載は9月1日からです。

翼の王国はウェブでも読めます。機内で読み損ねても、あとから追いかけられます。19農家がどういう人たちなのか、匠たちの会がどういう集まりなのかは、プレスリリースでは触れられていません。そこはこの記事のほうで語られるはずです。

ファーストクラスの食卓は、これで一段そろいます

ANAの国際線ファーストクラスは、シャンパンにクリュッグ グランド・キュヴェを置いています。赤ワインには紫鈴 rindo があります。そこに、主食として19農家の米が加わる。

洋のコースを選んでも和のコースを選んでも、ANAのファーストクラスでは日本らしい要素にどこかで出会います。今回の米は、そのなかでもいちばん静かで、いちばん基本的なところに入ってきました。ごはんは目立ちません。でも、まずければ確実にわかります。

3か月という期間は短いです。9月から11月にかけて羽田や成田から欧米へ向かう予定がある人は、この期間にファーストクラスに座れるかどうかを、ひとつの判断材料にしてもいいと思います。

まとめ

  • ANA国際線ファーストクラスに、鹿児島県産「あきほなみ 吟地米」が登場する
  • 期間は2026年9月1日から11月30日まで
  • 対象は羽田発のロンドン・ニューヨーク・シカゴ・サンフランシスコ、成田発のシカゴ・サンフランシスコ
  • 吟地米は品種名ではなく、鹿児島県北部の「匠たちの会」に所属する19農家が育てたものだけの呼称
  • 羽田空港のANA FESTAや鹿児島の店舗、通販でも同じ期間に味わえる

詳しい提供内容や店舗の情報は、ANA国際線ファーストクラスの公式ページで確認してください。

よくある質問(FAQ)

Q. どの便に乗れば「あきほなみ 吟地米」を食べられますか?

A. ANA国際線ファーストクラスの日本発の欧米路線です。具体的には羽田発のロンドン線・ニューヨーク線・シカゴ線・サンフランシスコ線、成田発のシカゴ線・サンフランシスコ線が対象になります。提供期間は2026年9月1日から11月30日までです。

Q. 「吟地米」は品種の名前ですか?

A. 品種名ではありません。品種は鹿児島県のオリジナル品種「あきほなみ」です。そのなかでも鹿児島県北部の寒暖差が大きい米どころで、「匠たちの会」に所属する19農家だけが栽培したものを「あきほなみ 吟地米」と呼びます。

Q. ビジネスクラスやプレミアムエコノミーでも出ますか?

A. 今回の発表で対象になっているのは国際線ファーストクラスだけです。ビジネスクラスやプレミアムエコノミー、エコノミークラスでの提供については案内されていません。

Q. ファーストクラスに乗らずに食べる方法はありますか?

A. あります。羽田空港第2ターミナルの ANA FESTA 60番ゲートフード店では9月1日から30日までおむすびとして提供されます。ほかに鹿児島華蓮 銀座店、ホテル ザ セレスティン東京芝、華蓮の鹿児島店・大阪心斎橋店・博多店、SHIROYAMA HOTEL kagoshima などでも期間限定で味わえます。

Q. 自宅で買うことはできますか?

A. できます。鹿児島市の「結び屋」で9月1日から30日まで店頭精米で購入できるほか、JA全農が運営する産地直送の通販サイト「JAタウン」では9月1日から11月30日まで取り扱われます。

この記事を書いた人
TE travel 編集部
TE travel は、Team Elite メンバーによる旅行記録サイトです。ANAダイヤモンド・マリオット チタンエリート・ヒルトン ダイヤモンドなど、各プログラムの上級ステータスを実際に取得・維持しながら、ファーストクラス・ビジネスクラス・ラグジュアリーホテルを体験した記録を発信しています。ポイント・マイルの使い方から、上級会員だけが知る現場の実感まで、数字では伝わらない情報をお届けします。