2026年7月2日、宮城県塩竈市の酒蔵・佐浦から、ひとつの発表があった。ロングセラーの純米吟醸「浦霞禅(うらかすみぜん)」が、この夏のANA国際線ビジネスクラスの機内酒に採用される。1973年の発売から半世紀をこえて愛されてきた地酒が、世界へ向かう機内で提供されることになった。
ビジネスクラスの飲みものといえば、シャンパンやワインに目がいきやすい。けれど、和食の機内食に静かに寄り添う一杯として、日本酒を選ぶ楽しみもある。今回はその主役に選ばれた浦霞禅を、機内酒の目線で掘り下げていく。
浦霞禅とは——1973年から続く純米吟醸
浦霞禅をつくるのは、宮城県塩竈市に蔵をかまえる株式会社佐浦。享保9年(1724年)創業という長い歴史をもち、日本酒づくりで広く使われる「協会12号酵母」が発見された蔵としても知られている。日本酒の世界では、名前を聞けば背筋が伸びるような造り手だ。
その佐浦が1973年(昭和48年)に世に送り出したのが浦霞禅だった。当時はまだ「純米吟醸」ということばが一般には知られていない時代。地方の蔵が、地元の枠をこえて全国に本物の地酒を届けようとした、第一次地酒ブームの先頭に立った一本だった。
発売から半世紀以上がすぎたいまも、浦霞を代表するロングセラーとして愛されつづけている。流行に左右されず、静かに定番でありつづけること。これはじつは、いちばんむずかしいことでもある。
浦霞禅のスペックと味わい
浦霞禅は、山田錦とトヨニシキを50%まで磨いた純米吟醸酒。穏やかな果実のような香りと、フレッシュでほどよい旨味が持ち味で、蔵みずから「食中酒に最適」とうたっている。基本のスペックは次のとおり。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 種類 | 純米吟醸酒 |
| 原料米 | 山田錦・トヨニシキ |
| 精米歩合 | 50% |
| 日本酒度 | +2〜+3 |
| アルコール度数 | 15度 |
| 蔵元 | 株式会社佐浦(宮城県塩竈市) |
| 発売年 | 1973年(昭和48年) |
日本酒度は+2〜+3と、やや辛口よりの数値。香りは華やかに主張するタイプではなく、穏やかにまとまっている。だからこそ料理の味を消さず、和食の繊細さを引き立てる。機内食の和食コースに合わせる一杯としては、これ以上ないバランスだといっていい。
華やかな大吟醸を「主役の酒」とすれば、浦霞禅は「食卓を支える名脇役」。派手さで勝負するのではなく、飲み飽きしないことで選ばれてきた酒だ。長いフライトのあいだ、ゆっくりと料理とともに楽しむのに向いている。
ANA国際線ビジネスクラスの飲みものラインナップ
ANAの国際線ビジネスクラスでは、シャンパン・白ワイン・赤ワイン・日本酒・焼酎などが用意されている。今回の浦霞禅は、その日本酒の枠に加わることになる。TE travelでこれまで取り上げてきた機内の飲みものとあわせて、全体像を整理してみた。
| 種類 | 特徴 | 提供クラスの例 |
|---|---|---|
| 日本酒(浦霞禅) | 穏やかな果実香とフレッシュな旨味。食中酒向き | 国際線ビジネスクラス |
| シャンパン | 華やかな泡。乾杯やアペリティフに | ファースト・ビジネス |
| 白ワイン | すっきりとした酸味で魚料理に合う | ファースト・ビジネス |
| 赤ワイン | 肉料理やチーズと好相性 | ファースト・ビジネス |
機内の飲みものは季節ごとに入れ替わることが多い。浦霞禅の採用も2026年夏を中心とした期間が想定されるので、この夏にビジネスクラスに乗る予定があれば、ぜひ一杯たのしんでほしい。ワインのラインナップについては、ANAビジネスクラスの白ワイン グリューナー・フェルトリーナーの記事でくわしく紹介している。
機内食とどう合わせるか
ビジネスクラスの機内食は、和食と洋食から選べることが多い。浦霞禅の穏やかな味わいは、やはり和食コースとの相性がいい。だしのきいた前菜や、焼き物・煮物といった料理に、辛口の純米吟醸がすっとなじむ。
いっぽうで、食中酒として設計された酒なので、洋食の一皿に合わせても楽しめる。白身魚のグリルや、塩味を効かせた前菜であれば、白ワインのかわりに浦霞禅を選ぶという飲み方もいい。地上とは気圧のちがう機内では味覚の感じ方も変わるといわれるが、穏やかな香りの浦霞禅は、そうした環境でもバランスを崩しにくい。
機内食そのものの選び方については、ANAビジネスクラスの機内食ガイドでまとめている。あわせて読むと、当日のオーダーをより楽しめるはずだ。
佐浦という蔵と、塩竈という土地
浦霞禅を語るなら、造り手の佐浦にふれないわけにはいかない。創業は享保9年(1724年)。宮城県塩竈市で三百年ちかく酒をつくりつづけてきた老舗だ。塩竈は、日本三景の松島にほど近い港町で、古くから信仰と海の幸に恵まれた土地として知られている。
佐浦の名を日本酒の歴史に刻んでいるのが、「協会12号酵母」の存在だ。この酵母は佐浦の蔵で見いだされたもので、穏やかで上品な吟醸香をうむ酵母として、全国の蔵で使われてきた。日本酒づくりの土台をつくった蔵のひとつ、といっても言いすぎではない。
そうした背景をもつ蔵が、看板商品として半世紀みがきつづけてきたのが浦霞禅だった。ひとつの銘柄を長く定番として守ることは、じつは新しい酒を出すよりむずかしい。時代が変わっても味の芯を崩さず、けれど古くならない。その積み重ねが、機内酒という舞台に選ばれる信頼につながっている。
機内で浦霞禅を楽しむためのちょっとしたコツ
せっかくビジネスクラスで浦霞禅に出会えるなら、その一杯をより楽しみたい。搭乗前に知っておくと役立つポイントを、いくつかまとめておく。
- 和食コースと合わせる — だしや塩味を活かした料理に、辛口の純米吟醸がよくなじむ。前菜からメインまで通して楽しめる。
- 温度に注目する — 浦霞禅は冷やして飲むのが基本。機内では冷たい状態で提供されることが多いので、香りが立ちすぎず食事の邪魔をしない。
- 乗る便のクラスを確認する — 今回の採用は国際線ビジネスクラス。搭乗する便のクラスと機材は、予約時にチェックしておきたい。座席や機材の見分け方はANAビジネスクラス完全ガイドにまとめている。
- 飲みすぎに気をつける — 気圧の低い機内ではアルコールがまわりやすい。食事とともに、水も挟みながらゆっくり味わうのがいい。
機内食の和食と、辛口の純米吟醸。この組み合わせは、長いフライトのなかのちょっとした贅沢になる。目的地に着くまでの時間を、料理と一杯でていねいに過ごしてみてほしい。
地酒が世界の空へ——この採用が意味すること
1973年、浦霞禅は「地域の酒」という価値を全国へ広める役割をになった。それから半世紀。こんどはその舞台が、日本国内から世界の空へと広がる。
機内酒に採用されるということは、世界じゅうから乗ってくる乗客の口に、日本の地酒が届くということだ。塩竈という一つの町の蔵がつくった一本が、フライトの数時間のあいだに、静かに日本酒文化を伝えていく。派手なできごとではないけれど、じっくり味わうと深い意味のある採用だと思う。
気になった人は、地上でも味わってみてほしい。浦霞禅は佐浦のオンラインショップなどで720mlや300mlのボトルが手に入る。機内で飲んだ一杯を、家の食卓で思い出すのもいい。
よくある質問(FAQ)
Q. 浦霞禅はどのクラスで飲めますか?
A. 2026年夏の採用は、ANA国際線のビジネスクラスの機内酒としての提供です。ファーストクラスやプレミアムエコノミー・エコノミークラスでは、別の銘柄が用意される場合があります。
Q. 提供される期間はいつごろですか?
A. 2026年7月に発表された採用で、夏を中心とした期間の提供が想定されます。機内の飲みものは季節ごとに入れ替わることが多いため、最新の提供状況はANA公式ページで確認するのが確実です。
Q. 浦霞禅はどんな味わいの日本酒ですか?
A. 山田錦とトヨニシキを50%まで磨いた純米吟醸で、穏やかな果実のような香りとフレッシュな旨味が特徴です。日本酒度は+2〜+3のやや辛口。料理を引き立てる食中酒として親しまれています。
Q. 浦霞禅は機内以外でも買えますか?
A. 買えます。蔵元の佐浦のオンラインショップや酒販店で、720mlや300mlのボトルが手に入ります。機内で気に入った味を、自宅の食卓で楽しむこともできます。
Q. なぜANAは浦霞禅を選んだのですか?
A. 公式に理由が示されているわけではありませんが、穏やかな香りと料理を引き立てる味わいは、和食を中心とした機内食との相性がよく、機内という環境でもバランスを崩しにくい点が、食中酒としての選定につながったと考えられます。
機内酒の最新情報や提供クラスの詳細は、ANA公式サイトの国際線ビジネスクラス 機内食・ドリンクのページで確認できます。搭乗前に最新のラインナップをチェックしておくと安心だ。
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