ANA THE Suiteは、全日本空輸(ANA)が2019年7月から導入した国際線ファーストクラスのプロダクト名だ。B777-300ERに搭載されており、現時点で世界最高水準のファーストクラスシートの一つとして評価されている。
ファーストクラスというカテゴリーは多くのエアラインが廃止してきた中、ANAはプロダクトを大幅に刷新して「完全個室」という方向に進化させた。ロック付きドアで外部の視線を完全に遮断し、43インチ4Kモニター、フルフラットのベッドを一つの個室空間に詰め込んだ。このページでは、ANA THE Suiteの座席スペック・機内食・アメニティ・就航路線・特典航空券での取り方まで、詳しく解説する。
ANA THE Suite 基本スペック
| 項目 | スペック |
|---|---|
| 搭載機材 | B777-300ER |
| 座席数 | 8席(1-2-1配列) |
| 個室ドア | ロック付き(完全個室) |
| モニター | 43インチ 4K(民間旅客機世界初) |
| ベッドサイズ | 幅65cm × 長さ198cm(フルフラット) |
| HDMI接続 | 対応(外部機器を接続可能) |
| 就航路線 | 羽田↔ロンドン・ニューヨーク・サンフランシスコ等 |
| 導入時期 | 2019年7月〜 |
完全個室ドアの設計
ANA THE Suiteの最大のセールスポイントは、ロック付きの個室ドアだ。従来のファーストクラスシートは仕切りの高さで「半個室」的な空間をつくるものが多かったが、THE Suiteは天井まで届く高さのパネルとドアを組み合わせた完全個室を実現している。
ドアにはロック機構が付いており、乗務員が必要なとき以外は完全に外からの視線を遮断できる。睡眠中のプライバシーはもちろん、仕事や食事の際も周囲を気にせず過ごせる点は、長距離フライトで特に価値を感じる機能だ。
個室内の空間は約2.7平方メートル。シートを倒してフルフラットにしても余裕のある広さがあり、荷物を足元に置いても動線が確保される。窓側の1席(A・K列)は窓が個室に直接面しており、外の景色を楽しみながら過ごせる。中央の2席(D・G列)は窓がない代わりに、2名での旅行者が並んで座れる「ダブルベッドモード」が使える。
民間機世界初・43インチ4Kモニター
THE Suiteに搭載されているモニターは43インチの4K対応ディスプレイ。これは民間旅客機の客室座席としては世界で初めての4K対応であり、ANAが2019年の導入時に大きく訴求した機能だ。
解像度は3840×2160ピクセル。フルHDの4倍のドット密度で、座席との距離がおよそ1メートルでも画質の粗さを感じない。ANAのエンターテインメントシステム「ANA Experience」で提供される映画・音楽・地図などすべてのコンテンツを高精細で楽しめる。
さらに、HDMI端子が装備されており、ノートPCやタブレットを43インチのディスプレイに映し出すことができる。仕事でプレゼン資料を確認する用途にも、個人の動画を大画面で楽しむ用途にも使える柔軟な設計だ。モニター下部にはBluetoothヘッドフォン用のペアリングボタンも備わっており、機内備え付けのノイズキャンセリングヘッドフォンと組み合わせることで、映画館のような没入感を得られる。
シート・ベッドの詳細
シートはリクライニング角度を無段階で調整できる電動式だ。完全フラット時のベッドサイズは幅65cm・長さ198cm。これはビジネスクラスの多くの座席と比較しても広く、長身の人でも足が伸ばせる。
マットレスパッドはThe Ritz-Carltonとのコラボレーション製品ではなく、ANAが独自に開発したもので、厚みがあり底付き感がない。枕はゲルビーズ入りで頭が沈みすぎない設計になっている。毛布は軽くて保温性が高いダウン素材を使用しており、機内の乾燥した空気でも快適に眠れるように配慮されている。
座席の側面にはパーソナル収納スペースがあり、スマートフォン・メガネ・飲み物などを手の届く場所に収納できる。充電用のUSBポート(Type-AとType-C)と電源コンセント(110V・60Hz)が各座席に装備されており、長距離フライトでデバイスの充電に困ることはない。
機内食とドリンクサービス
THE Suiteの機内食は「食事の時間をあらかじめ決めない」オンデマンドサービスが基本だ。搭乗後に食事のタイミングを乗務員に伝えることができ、睡眠を優先したい場合は食事を後半フライトに回すこともできる。
メニューは和食と洋食から選択する形式。ANAのファーストクラス機内食は「料亭の懐石」のイメージで設計されており、前菜・スープ・メイン・デザートとコース仕立てで提供される。食器はドイツの高級ブランド「ローゼンタール」などの陶磁器やクリスタルガラスを使用しており、テーブルセッティングの質も高い。
和食コース(ANAホームページより)
洋食コース(ANAホームページより)
ファーストクラスといえばキャビアだ。ブリニ(小さなパンケーキ)に盛りつけ、クリュッグのシャンパンと合わせていただく。この組み合わせのためだけに乗っているといっても過言ではない。

クリュッグ グランド・キュヴェとキャビア(King’s Oscietra)。ブリニを添えて。
飛行機の中で懐石料理をいただく贅沢。お椀のだしの香りが個室内に広がる瞬間は、空の上にいることを忘れさせてくれる。

食後のドリンクには「響 21年」が用意されている。ファーストクラスでなければ出会えないラインアップだ。
小腹が空いたときに頼める鯛茶漬けも定番メニュー。深夜のフライトでも体に染み渡る一杯だ。

着陸2時間ほど前に届く朝食。和食の朝食は、長距離フライトの後半に日本に帰る実感をゆっくり与えてくれる。

飲み物はシャンパン・日本酒・焼酎・ウイスキー・ワインなど幅広いラインアップが揃う。シャンパンはクリュッグが採用されており、「シャンパーニュの帝王」と称される極上のキュヴェを機内でいただける。出発前のウェルカムドリンクから着陸前のスナックまで、乗務員は個別対応でサービスを提供する。
アメニティとパジャマ
THE Suite搭乗者には機内パジャマが提供される。素材はシルク混の柔らかな生地で、シャツとパンツのセット。サイズはS・M・Lから選べるが、搭乗直前に希望を伝えておくと確実だ。パジャマへの着替えは個室ドアを閉めたままできるため、他の乗客を気にする必要はない。
アメニティポーチはSHISEIDOとのコラボレーション製品が長年採用されてきたが、時期によってブランドが変わることもある。ポーチの中身はリップクリーム・ハンドクリーム・アイマスク・耳栓・歯ブラシセット・ソックス・スリッパが標準的な内容だ。洗面台にはスキンケア製品も揃っており、長距離フライト後の乾燥対策に使える。
靴を預けてスリッパに履き替えると、機内での移動が快適になる。THE Suiteのスリッパはソールがしっかりしており、機内トイレへの往復程度であれば不便を感じない設計になっている。
ANAファーストクラスラウンジ(出発前)
THE Suiteに搭乗すると、出発前はANAファーストクラスラウンジを利用できる。羽田空港の国際線ターミナルには「ANA SUITE LOUNGE」があり、個室型のダイニングスペース・バー・シャワールームなどが使える。
食事は「THE CONNOISSEURS」と名付けられたコーナーで、ラウンジ専用のシェフが調理した料理を提供している。季節ごとにメニューが変わり、日本料理・洋食ともに質が高い。バーエリアではシャンパン・日本酒・ウイスキーなどが揃い、フライト前のひとときをゆっくり過ごせる。
シャワールームは予約制で、チェックイン直後に予約しておくと待ち時間を短縮できる。タオル・アメニティ類は揃っており、羽田空港で前泊せずに深夜便に乗る場合も体を整えてから機内に入ることができる。
就航路線一覧(2026年現在)
ANA THE SuiteはB777-300ERのみに搭載されている。そのため、同機材が投入されている路線のみで搭乗できる。2026年現在の就航路線は以下のとおりだ。
| 路線 | 便名(代表) | 備考 |
|---|---|---|
| 羽田 ↔ ロンドン(ヒースロー) | NH211/212 | 約13時間 |
| 羽田 ↔ ニューヨーク(JFK) | NH109/110 | 約14時間 |
| 羽田 ↔ サンフランシスコ | NH107/108 | 約10時間 |
| 羽田 ↔ ロサンゼルス | NH105/106 | 約11時間 |
| 羽田 ↔ フランクフルト | NH203/204 | 約13時間 |
| 羽田 ↔ パリ(CDG) | NH217/218 | 約14時間 |
| 羽田 ↔ ミラノ(MXP) | NH205/206 | 約14時間・2025年増便 |
路線・機材の変更はANAの公式サイトで都度確認することを推奨する。B787での運航に変更されている場合はTHE Suiteは搭乗できないため、予約時に機材を確認しておくことが大切だ。
特典航空券での取り方と必要マイル数
THE Suiteを特典航空券で取ることは難しい。座席数が8席と少ない上に、特典航空券用に解放される席数は路線によっては1〜2席程度しかないことが多い。ただし、正しいタイミングと方法を知ることで確率を上げることができる。
ANAの国際線特典航空券に必要なマイル数(ファーストクラス・日本発・片道)は路線によって異なるが、目安は以下のとおりだ。
| ゾーン | 必要マイル(片道・スタンダード) | 対象路線例 |
|---|---|---|
| 北米 | 80,000マイル | ニューヨーク・サンフランシスコ・ロサンゼルス |
| 欧州 | 90,000マイル | ロンドン・パリ・フランクフルト・ミラノ |
特典航空券の空席は、出発354日前から照会できる。ANAマイレージクラブのウェブサイト・アプリで「ANA特典航空券」から検索すると、ファーストクラスの空席状況を確認できる。
確率を上げるための主なポイントは3つある。まず、解放日の深夜0時ちょうど(出発354日前)に予約サイトにアクセスする。次に、土日・祝日・年末年始など需要が集中する時期を避け、平日の出発便を狙う。そして、ANAのSFCやダイヤモンド会員になると特典航空券の空席照会が先行してできる場合があるため、上級会員資格の有無も活用したい。
おすすめの座席番号
THE Suiteは1-2-1の配列で8席あり、窓側の1人席(1A・1K・2A・2K)と中央の2人席(1D・1G・2D・2G)に分かれる。
一人での搭乗なら窓側の1A・2Kが特におすすめだ。窓が個室の正面方向にあり、着陸前の夜景や日の出の景色をそのまま眺められる。1Aと2Kはギャレー(厨房)から最も遠い位置にあり、食事の準備音や乗務員の動きが気になりにくいという利点もある。
2名での旅行であれば、中央の1D・1G(または2D・2G)がベストだ。仕切りを下げると隣の個室と行き来でき、食事や会話をともにしながら過ごせる。カップルや夫婦での搭乗で最もリクエストが多い組み合わせだ。
ANA THE Suite と JAL ファーストクラスの比較
JALは2024年からA350-1000型機にスライドドア付きの個室ファーストクラスを導入した。「JAL SUITE」として展開されており、座席数は6席。THE Suiteと同様に43インチモニターを搭載し、完全個室という点では共通している。
| 比較項目 | ANA THE Suite | JAL SUITE(A350-1000) |
|---|---|---|
| 機材 | B777-300ER | A350-1000 |
| 座席数 | 8席 | 6席 |
| ドア形式 | ロック付きスイングドア | スライドドア |
| モニターサイズ | 43インチ 4K | 43インチ 4K |
| ベッド幅 | 65cm | 67cm |
| 導入年 | 2019年 | 2024年 |
どちらを選ぶかは路線と日程に依存する部分が大きい。ロンドン・パリ・フランクフルトへのフライトはANA・JALともに運航しているため、機材を比較した上で選べる状況にある。JAL SUITEはA350-1000の新しい機内環境(静粛性・広胴体)の恩恵もあるが、THE Suiteは2019年から積み上げてきたサービス品質の高さに定評がある。詳しい比較はJAL vs ANA 徹底比較記事を参照してほしい。
まとめ
ANA THE Suiteは、ファーストクラスの中でも「個室の完成度」という点で突出したプロダクトだ。ロック付きドア・43インチ4Kモニター・フルフラットベッドを一つの空間にまとめた設計は、2019年の導入から数年が経った今でも世界トップクラスの評価を維持している。
特典航空券でのファーストクラス座席確保は難しいが、出発354日前の解放タイミングを狙うことで可能性は十分にある。THE Suiteを体験するという目標を持ってマイルを貯める旅も、それ自体が一つの楽しみになる。長距離の大西洋路線・欧州路線を飛ぶ際には、ぜひ候補の一つに入れてほしいプロダクトだ。
よくある質問
ANA THE Suite はどの路線で乗れますか?
2026年現在、B777-300ERが投入されている羽田発の長距離路線(ロンドン・ニューヨーク・サンフランシスコ・ロサンゼルス・フランクフルト・パリ・ミラノなど)で搭乗できます。路線や機材は変更される場合があるため、予約前にANA公式サイトで機材を確認することをおすすめします。
特典航空券でファーストクラスに乗るには何マイル必要ですか?
日本発・片道のスタンダード特典の場合、北米方面は80,000マイル、欧州方面は90,000マイルが目安です(2026年現在)。空席が少ないため、出発354日前に空席照会が開始される日の深夜0時に予約することが確率を上げる基本的な方法です。
ANA THE Suite の43インチモニターには何が映せますか?
ANAのエンターテインメントシステム「ANA Experience」の映画・音楽・地図などを4K画質で楽しめます。またHDMI端子でノートPCやタブレットを接続し、自分のデバイスの映像を43インチに映すことも可能です。
1人で搭乗するときのおすすめ座席はどこですか?
窓が個室の正面に位置する1A・2Kがおすすめです。ギャレーから最も遠い位置にあり、食事の準備音が届きにくく静かに過ごせます。2名での搭乗なら仕切りを下げて行き来できる中央席(1D・1G または 2D・2G)が人気です。
ANA THE Suite と JAL ファーストクラスはどちらがいいですか?
スペックはほぼ互角ですが、JAL SUITEはA350-1000の静粛性・広胴体が魅力で、2024年導入の新しさがあります。ANA THE Suiteは2019年から積み上げてきたサービス品質と、より多い路線での選択肢が強みです。どちらを選ぶかは路線・日程・貯めているマイルの種類で決めるのが現実的です。
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