2026年4月、ANAがスーパーフライヤーズカード(SFC)の制度変更を発表した。
マイラーの間で長年「一生もの」と呼ばれてきたこの上級会員資格が、2028年4月からは年間決済額によって2つのグレードに分かれる。SNSでは「さすがにやりすぎ」「修行が水の泡」という声が相次いでいる。
わたし自身もSFCを保有している。今回の変更は他人事ではない。発表内容を細かく読み解きながら、何が変わり、何がつづくのかを整理した。
「一生もの」が条件付きになる
そもそもSFCとは何か、おさらいしておきたい。ANAのSFCは、一定の条件を満たしてプラチナステータスを取得した年にのみ申し込める特別なクレジットカードだ。年会費を払いつづける限り、翌年以降もプラチナ相当の待遇——ANAラウンジの利用、優先搭乗、スターアライアンスゴールド——がそのまま維持される。
これが「SFC修行」と呼ばれる行動の根拠だった。1年間だけ搭乗回数を積み上げてプラチナを達成し、SFCさえ手に入れれば以降は飛びつづけなくてもよい、という設計だ。
今回の変更は、その前提を根本から変える。
SFC LITEとSFC PLUSの2階建て制度
2028年4月以降、SFC会員は年間のANAカード・ANA Pay決済額に応じて2つに分かれる。
- SFC PLUS:前年の決済額が300万円以上
- SFC LITE:前年の決済額が300万円未満
特典の差は次のとおりだ。
| 特典 | 現行SFC | SFC PLUS(300万円以上) | SFC LITE(300万円未満) |
|---|---|---|---|
| ANAラウンジ利用 | ○ | ○ | × |
| スターアライアンスステータス | ゴールド | ゴールド | シルバー |
| 優先搭乗 | ○ | ○ | ○ |
| 優先手荷物(ANA便) | ○ | ○ | ○ |
| 専用チェックインカウンター | ○ | ○ | ○ |
| ボーナスマイル(年間) | — | 5,000マイル加算 | — |
搭乗時の快適さを左右する「ラウンジ」と「スターアライアンスゴールド」の2つが、LITEでは丸ごと失われる。これが今回の変更の核心だ。
ラウンジを失うことの具体的な痛み
ANAラウンジは、長時間の乗り継ぎや早朝便での待ち時間を快適にする場所だ。食事、シャワー、静かな作業スペースが確保できる。エコノミー利用時でも搭乗前に落ち着いて過ごせるという体験は、SFCの特典の中でも実感値が高い。それがなくなる。
さらに痛いのは、スターアライアンスゴールドを失う影響がANA便以外にも及ぶ点だ。たとえばユナイテッド航空の低価格運賃で飛ぶ場合、スターアライアンスゴールドがあれば受託手荷物1個が無料だが、シルバーだとそれが消える。片道あたり50ドル(約7,500円)の追加コストになるケースもある。
国内外のスタアラ加盟航空会社でラウンジを使う機会がある人にとっても、ゴールドとシルバーの差は大きい。
救済措置①——ミリオンマイラーは無条件でPLUS
例外がある。ANAグループ運航便での通算搭乗マイルが100万ライフタイムマイルに達した会員は、年間決済額にかかわらずSFC PLUSの対象となる。
ただし、100万マイルという基準は非常に高い。ANAの国内線でたとえば羽田—大阪を往復すると約1,000マイル。単純計算で1,000往復が必要になる。現実的には、長年にわたり国際線をフルフラットのビジネスクラスで乗りつづけるような超ヘビーユーザーが対象だ。多くのSFC会員には縁遠い話になる。
救済措置②——家族カードの合算
もうひとつ見落とせない点がある。本会員の決済額に、家族カード会員の利用額が合算される。
家族全員でANAカードを日常的に使っていれば、300万円という基準に届きやすくなる。月25万円の決済が家族合計で達成できれば、1年で300万円になる計算だ。住宅ローンの返済や公共料金の引き落とし先をANAカードに集約している家庭なら、それほど遠い数字ではないかもしれない。
判定期間とスケジュール
制度が切り替わるまでのスケジュールは次のとおりだ。
- 最初の判定期間:2026年12月16日〜2027年12月15日
- 新区分でのサービス開始:2028年4月1日
2026年12月15日までの決済は判定に含まれない。実質的な準備期間は今年後半からはじまる。年末に向けて大きな支出(家電の買い替えや旅行予約など)をANAカードに集中させることが、最初の判定を乗り越えるためのひとつの対策になる。
300万円は現実的か
年間300万円というのは、月平均25万円の決済だ。これが高いか低いかは生活スタイルによって大きく変わる。
日常の食費・光熱費・通信費・サブスクを合計しても月10万円に届かない人もいる。一方で、家族の保険料、車のローン、事業関連の経費をカード払いにしている人であれば、それほど無理な数字ではない。
現実的に届かない層のために、今後は「SFC修行の前にカード決済力を試算する」という視点が必要になるだろう。修行して取得したSFCが、数年後にLITEに落ちるようでは意味が薄れる。
新規でSFCを取得する場合の変化
ミリオンマイラーを除く新規入会者は、一律でSFC LITEからのスタートになる。
これはこれまでとは大きく異なる点だ。以前は「修行してSFCを取れば、その瞬間から全特典が使える」だった。新制度では、入会時点ではLITEとして扱われ、最初の判定期間(2026年12月〜2027年12月)を経て300万円を達成してはじめてPLUSになる。
つまり、SFCを新規で取得した人は最低でも1年以上、ラウンジなしの状態がつづく可能性がある。
マイラーたちの本音
SNSやマイラーコミュニティの反応は、おおむね批判的だ。「さすがにやりすぎでしょ」「改悪で破滅です」という声が目立つ。「新社会人には厳しすぎる」「富裕層しか維持できない」という意見も多い。
わたし自身も正直、複雑な気持ちだ。SFCを取得した理由のひとつは、「一度取れば長く使える」という安心感だった。その前提が変わることは、過去の修行投資に対する裏切り感に近いものがある。
ただ一方で、ANAの立場から考えると理解できる面もある。航空業界はコロナ禍で大打撃を受け、ラウンジや優先サービスの維持コストは年々増している。「飛ばない会員」がラウンジを使いつづける構造は、持続可能性という観点では問題があった。
感情的な反発は理解できるが、制度の方向性そのものは、いずれこうなると予想していたマイラーも少なくないはずだ。
SFC修行は無駄だったのか
これまでSFCを取得した人にとって、今回の変更は「無駄だった」とはならない。
まず、2028年3月末までは従来どおりの全特典が使える。PLUSを維持できる決済力がある人は、以降もラウンジをつづけて使える。LITEになったとしても、優先搭乗・優先手荷物・専用カウンターはのこる。
問題は「ラウンジ目的でSFC修行をしていた人」だ。年間300万円の決済が難しい場合、2028年4月以降は搭乗時の体験が大きく変わる。修行にかけたコストと、今後得られる特典のバランスを冷静に試算し直す必要がある。
まとめ
今回の変更のポイントをまとめる。
- 2028年4月からSFCはSFC PLUSとSFC LITEの2種類になる
- 前年の決済額が300万円以上でPLUS、未満でLITEに自動的に分類される
- LITEではANAラウンジとスターアライアンスゴールドが失われる
- 優先搭乗・優先手荷物・専用カウンターはLITEでも維持される
- 100万ライフタイムマイル達成者は無条件でPLUS
- 家族カードの決済額は合算される
- 判定は2026年12月16日スタート、2028年4月から適用
- 新規入会者はLITEスタート
制度変更が実感として効いてくるのは2028年春だが、最初の判定期間はすでに今年末にはじまる。年間決済の見通しを今のうちに確認しておきたい。
詳しい公式情報はANA公式サイトのスーパーフライヤーズカードの制度変更(2028年度)で確認できる。
よくある質問
SFC LITEになるとANAラウンジは使えなくなりますか?
はい、使えなくなります。SFC LITEではANAラウンジへの入室資格が失われます。優先搭乗や優先手荷物など一部の特典は引きつづき利用できます。
300万円の判定はいつから始まりますか?
最初の判定期間は2026年12月16日から2027年12月15日です。この期間のANAカード・ANA Pay合計決済額が300万円以上であれば、2028年4月からSFC PLUSとして扱われます。
家族カードの決済額は合算されますか?
はい、合算されます。本会員のカード利用額に家族カード会員の利用額を合計して判定されます。家族全体で300万円を目指しやすい設計です。
ミリオンマイラーはSFC PLUSが保証されますか?
はい。ANAグループ運航便において100万ライフタイムマイルに到達している会員は、年間決済額にかかわらず無条件でSFC PLUSの対象となります。
これからSFCを取得した場合、最初はSFC LITEですか?
はい。ミリオンマイラーを除く新規入会者は一律でSFC LITEからのスタートになります。最初の判定期間に300万円を達成するとSFC PLUSへ移行します。
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