カモミ(Ca’ Momi)訪問記|ナパのダウンタウンで出会う本気のナポリピッツァとハートクラフトのワイン

ナパヴァレーの旅というと、丘の上のシャトーや高級テイスティングルームを想像しますが、心に残る一軒が街なかにあることもあります。カモミ(Ca’ Momi)。ナパのダウンタウンで、自家のワインと薪窯のナポリピッツァを出していた、イタリア人たちのワイナリー直営オステリアです。オステリアはその後、コロナ禍を経て2022年はじめに閉店しました。この記事は2017年の訪問の記録と、いまカモミのワインに会える場所の案内です。

わたしは2017年7月、オーパスワンやイングルヌックといった名門をめぐる旅の途中、ランチでここに立ち寄りました。結果から言うと、この旅でいちばんリラックスして食べて飲んだのがカモミでした。この記事では、そのときの体験を写真と価格の記録つきで紹介します。ナパヴァレー全体のまわり方は5つのワイナリーをめぐった訪問記のまとめにまとめています。

このときのナパヴァレーの旅は動画にもまとめています(Take Travel)

カモミとはどういう存在か

カモミは2006年、イタリア・ヴェネト出身のダリオ・デ・コンティ、ヴァレンティーナ・グオロ・ミゴット、ステファノ・ミゴットの3人がナパで立ち上げたワイナリーです。「Ca’ Momi」はヴェネツィアのことばで「モミの家」という意味。イタリアの家庭の食卓を、そのままナパヴァレーに持ち込んだような名前です。

彼らのモットーは「Heartcrafted(ハートクラフテッド)」。手仕事(handcrafted)ということばに心(heart)を重ねた造語で、店の壁にも大きくこの文字が掲げられています。ワインもピッツァも、効率より心を優先してつくる。オーパスワンのような世界の頂点を目指す哲学とは別の方向で、これもまたワインの国イタリアの正統な哲学です。

ナパのダウンタウンにあるカモミのオステリア(食堂)は、自家ワインのテイスティングルームとイタリア料理店がひとつになった空間です。丘の上のワイナリーと違って予約のハードルが低く、ぶどう畑ではなく食卓でワインを味わえる。ワイナリーめぐりの合間のランチにちょうどいい場所です。

カモミの畑を歩く

オステリアでのランチの前に、わたしたちはカモミの畑を案内してもらいました。ナパの南部、平らな土地にぶどうの列がまっすぐ並ぶ、飾り気のない仕事の畑です。丘の上の観光ワイナリーのような設えは何もありません。だからこそ、ワインづくりの日常がそのまま見えます。

カモミの畑 木陰からぶどうの列へ歩いていく

木陰を抜けて畑へ。左手の木の下には古い醸造道具が置かれている(筆者撮影)

カモミの畑のぶどう 7月の緑の房

7月上旬のぶどうはまだ緑の小さな房。ここから夏の日差しで色づき、9〜10月に収穫を迎える(筆者撮影)

7月上旬の房はまだ小さく、緑色です。ここから2か月ほどかけて色づき(ヴェレゾン)、糖度を上げて収穫に至る。スタッフが房を手に取りながら、今年の生育の話をしてくれました。オーパスワンのテイスティングルームで聞く「ヴィンテージの物語」の、これが出発点なのだとわかります。

カモミの畑の古い木製バスケットプレス

木陰に置かれた木製のバスケットプレス(垂直式の圧搾機)。ヨーロッパの伝統的な道具(筆者撮影)

木陰には、木の桶を組んだ昔ながらのバスケットプレスが置かれていました。イタリアの田舎の納屋にありそうな道具が、カリフォルニアの畑の隅にある。カモミというワイナリーの成り立ちを、ことばより雄弁に語る風景でした。

訪問記 — HEARTCRAFTEDの看板の下で

カモミ・オステリアの店内 HEARTCRAFTEDの看板と高い天井

高い天井の梁と裸電球、壁一面のボトル棚の上に「HEARTCRAFTED」の文字(筆者撮影)

店に入ると、まず天井の高さに驚きます。木の梁がむき出しの倉庫のような空間に、裸電球が点々と吊るされ、壁一面の棚にワインボトルがぎっしり並んでいます。その上に金属の文字で「HEARTCRAFTED」。カジュアルなのに設えの隅々までセンスが行き届いていて、ナパの街なからしい今っぽさとイタリアの温かさが同居した空間です。

昼どきでしたが観光客で混み合いすぎることもなく、木のテーブルに案内されました。メニューには「LUNCH | IL PRANZO」とイタリア語が併記され、前菜のチケッティ(ヴェネツィアの小皿)からピッツァ、パスタ、スープまで並びます。

iPadのワインリストが楽しい

カモミ・オステリアのiPadワインリスト Ca' Momi Rossoのページ

ワインリストはiPad。ボトルの写真・産地・合う料理まで表示される(筆者撮影)

おもしろかったのがワインリストです。紙ではなくiPadで渡され、ワインをタップすると、ボトルの写真、産地、ぶどう品種、アルコール度数、そして「合う料理」まで表示されます。2017年の時点でこれですから、かなり先進的でした。ワインに詳しくなくても、写真と説明を見ながら自分で選べる。この「敷居の低さ」は、格式あるワイナリーのテイスティングとは別の心地よさがあります。

当時の記録から、グラスワインの価格を一部紹介します。

ワイン(グラス) 価格(2017年7月時点)
2014 Ca’ Momi Rosso di Ca’ Momi(ナパヴァレー) 9ドル
2012 Ca’ Momi Reserve Chardonnay(カーネロス) 15ドル前後
2012 Ca’ Momi Reserve Pinot Noir(カーネロス) 20ドル

オーパスワンのグラスが50ドルの世界のすぐ隣で、ナパヴァレー産の自家ワインが9ドルから飲める。ナパの価格の幅広さを実感できる対比です。しかもこのRosso、果実味がしっかりあって毎日の食卓にちょうどいい味わい。アメリカのワイン誌で高く評価されてきた、知る人ぞ知る掘り出しものです。

薪窯のナポリピッツァ

カモミ・オステリアのナポリピッツァ 薪窯の焦げ目がついたコルニチョーネ

薪窯で焼かれたピッツァ。縁(コルニチョーネ)に美しい焦げ目。奥はHEARTCRAFTEDラベルの辛いオリーブオイル(筆者撮影)

カモミの名物は、ワインとならんでナポリピッツァです。イタリアの伝統製法にこだわった薪窯のピッツァで、運ばれてきた一枚は、縁がふっくら膨らんで、豹柄の焦げ目が入った正統派のナポリスタイル。生地はもちもちで、中心はナイフを入れると蒸気が上がるほどみずみずしい。ナパでこのレベルのピッツァに会えるとは思っていませんでした。

テーブルには「HEARTCRAFTED PICCANTE」のラベルが貼られた自家製の辛いオリーブオイルが置かれていて、これを後半に回しかけると味が引き締まって、ワインがさらに進みます。

カモミ・オステリアのイカスミパスタと赤ワイン

エビの載ったイカスミのパスタと赤ワイン。銅色の小鍋で供される(筆者撮影)

もう一皿はイカスミのパスタ。ヴェネツィアの郷土料理です。小さな両手鍋のまま運ばれてきて、上に大ぶりのエビとハーブ。真っ黒なパスタに赤ワイン、というヴェネツィアの家庭そのままの組み合わせを、カリフォルニアの光の中で食べる。カモミという店の成り立ちが、そのまま一皿になっているようなランチでした。

ワイナリーとしてのカモミ

カモミはレストランではなく、あくまでワイナリーです。ナパヴァレーのぶどうからロッソ、ビアンコ、スパークリングといった気軽なラインと、カーネロスのピノ・ノワールなどのリザーブラインをつくっています。方向性は一貫していて、「食事と一緒に楽しむワイン」。単体で完結する濃厚なナパワインとは違う、食卓のためのワインです。

ナパヴァレーの有名ワイナリーを一日まわると、じつは疲れます。テイスティングの連続で味覚も集中力も消耗するからです。その旅程にカモミのような「食堂で飲む一杯」を挟むと、旅全体のバランスがよくなります。高級テイスティングとカジュアルな食卓、両方あってこそのナパヴァレーです。

ナパのダウンタウンもあわせて歩く

カモミのあるナパ市のダウンタウンは、ここ十数年で大きく変わったエリアです。ナパ川沿いにレストランやテイスティングルームが増え、歩いて楽しめる「食の街」になりました。徒歩圏には、地元の食材や屋台料理が集まるフードホール「オックスボウ・パブリック・マーケット」があります。オイスターやクラフトビールの店が並び、ワイナリーめぐりとはまた違うナパの日常が見られる場所です。

ワイナリーは夕方に閉まるところが多いので、日中は畑のワイナリーをまわり、夜はダウンタウンで食事、という組み立てが使いやすいです。カモミはその両方の性格を持っているので、ランチにもディナーにも組み込めます。

その後のカモミ — オステリアの閉店と いまワインに会える場所

大切な追記があります。この記事で紹介したダウンタウンのオステリアは、コロナ禍を経て2022年のはじめに閉店しました。オーナーたちは閉店の告知で、「不況も、地震も、山火事も、深刻な人手不足も、そしてパンデミックも耐えてきた。けれど自分たちの健康と心も大切にしなければならない」という趣旨のことばを残しています。あの天井の高い空間と薪窯のピッツァがもう体験できないのは、本当に残念です。

いっぽう、ワイナリーとしてのカモミは健在です。ナパ市南部のワイナリーで少人数の予約制プライベートテイスティングをつづけていて、ワインは公式サイト(camomiwinery.com)からも購入できます。環境に配慮したワイナリーの認証プログラム「Napa Green」のメンバーでもあります。ハートクラフトの心は、レストランからワイナリーへ、いまも受け継がれています。

訪問情報(2026年時点)

項目 内容
名称 Ca’ Momi(カモミ)
場所 カリフォルニア州ナパ市南部のワイナリー(オステリアがあったのはダウンタウン)
スタイル ワイナリー(テイスティングは少人数の予約制)。ダウンタウンのオステリアは2022年に閉店
当時のランチ予算(参考) 1人30〜50ドル程度(グラスワイン込み・2017年)
予約 テイスティングは要予約。最新情報は公式サイト(camomiwinery.com)で確認を
アクセス ナパ市内中心部。オックスボウ・パブリック・マーケットからも徒歩圏

営業形態は変わることがあるので、訪問前に公式サイトで最新情報を確認してください。

よくある質問

Q. オステリアにはいまも行けますか?

行けません。ダウンタウンのオステリアは2022年はじめに閉店しました。カモミのワイン自体は、ナパ市南部のワイナリーでの予約制テイスティングと、公式サイトからの購入でいまも楽しめます。

Q. カモミのワインはいまどこで味わえますか?

ナパ市南部のワイナリーで、少人数の予約制プライベートテイスティングが受けられます。公式サイト(camomiwinery.com)から予約と購入ができます。

Q. カモミのワインは日本で買えますか?

流通は限られていますが、輸入されていることがあります。現地で気に入ったら、その場で買って持ち帰るのが確実です。ロッソは価格が手頃なので、お土産にも向いています。

Q. ナパのダウンタウンは車がなくても楽しめますか?

ダウンタウンだけなら徒歩で楽しめます。オックスボウ・パブリック・マーケットなど食の名所が集まっています。ただしオーパスワンなどのワイナリーへ行くには車かツアーが必要です。

まとめ — ナパの旅に「食卓」を足す一軒

オーパスワンの荘厳さ、イングルヌックの歴史、モンダヴィの物語。ナパヴァレーの名門めぐりは感動の連続ですが、その旅にカモミのランチが入ると、緊張と緩和のリズムが生まれます。9ドルのグラスワインと薪窯のピッツァがくれるのは、「ワインは毎日の食卓のものだ」という、いちばん基本の幸福です。

頂点のワインと食卓のワイン。その両方を一日で体験できるのが、ナパヴァレーという土地の懐の深さだと思います。オステリアは閉じましたが、カモミのワインはいまも生きています。ナパの旅の計画に、ワイナリーでの予約制テイスティングか、帰国後のオンラインでの一本を、ぜひ加えてみてください。

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この記事を書いた人
TE travel 編集部
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