ANAが2026年6月25日、上級会員向けクレジットカード「ANAスーパーフライヤーズカード(SFC)」について、4月に発表していた改定内容を見直すことを明らかにしました。今回見直しの対象になるのは、SNSを中心に大きな反発を呼んでいた「年間決済額300万円未満ならANAラウンジが使えなくなる」という変更です。詳細な内容は、9月末までに改めて案内されるとしています。
さらに翌6月26日の株主総会では、平澤社長がこの見直しの経緯を自ら説明しました。その内容も本文の後半に追記しています。SFC会員として実際にカードを保有し、空港ラウンジを日常的に使っているわたしたちにとって、これは見過ごせないニュースです。なにが発表され、なぜ反発が起き、社長はなんと語り、そしていま会員はどう動けばいいのか。落ち着いて整理しておきます。
4月に発表された改定内容——「300万円の壁」
そもそも、今回見直しの対象になっている改定は、2026年4月にANAが公表したものです。要点は次の一文に集約されます。

「ANAカード・ANA Payの年間決済額が300万円未満の場合、空港のANAラウンジが利用できなくなる」
これまでANAスーパーフライヤーズカードは、保有しているだけで国内空港のANAラウンジを利用できるのが大きな価値でした。SFC修行をして上級会員資格を得て、その資格をカードで半永久的に維持する——その見返りの中心が、まさにこのラウンジアクセスだったのです。
ところが4月の発表では、そのラウンジ利用に「年間決済額」という条件が新たに付くことになりました。しかも、ここがいちばん誤解されやすいところですが、4月案はラウンジだけの話ではありません。年間決済額によってSFCを2つの区分に分け、特典そのものを2階建てにする——それが改定の正体でした。
具体的には、ANAカード・ANA Payの年間決済額が300万円以上なら「SFC PLUS」、300万円未満なら「SFC LITE」に分かれます。そして、この2つでは受けられる特典が大きく変わります。
| 特典 | SFC PLUS(年300万円以上) | SFC LITE(年300万円未満) |
|---|---|---|
| ANAラウンジ利用 | 利用できる | 利用できない |
| スターアライアンスのステータス | ゴールド | シルバー |
| フライトマイル積算ボーナス | あり(区分到達で5,000マイル付与) | 対象外 |
つまりSFC LITEになると、国内のANAラウンジが使えなくなるだけでなく、スターアライアンスのステータスもゴールドからシルバーへ下がります。これは想像以上に大きな話です。シルバーになると、海外のスターアライアンス・ゴールド共通ラウンジ、優先搭乗、手荷物の優先受け取りといった、世界中で効く上級会員の優遇までまとめて外れてしまうからです。「ラウンジが使えなくなる」という見出し以上に、実際の打撃は深い——これが4月案でした。
この区分は2028年4月から導入される予定で、最初の判定期間は2026年12月16日から始まります。この1年間のANAカード・ANA Payの決済額(家族カードも合算)で、2028年度にPLUSかLITEかが決まる仕組みでした。ただし、ANAグループ運航便で100万ライフタイムマイルに到達したミリオンマイラーは、決済額に関わらずSFC PLUSの対象として優遇されます。
このSFC LITE・SFC PLUSという区分の中身については、別記事「SFC LITE・SFC PLUSの特典を完全比較」でくわしく解説しています。あわせて読むと、今回の見直しがどの部分に効いてくるのかがよりはっきりします。
なぜ反発が起きたのか
SFCの本質は「所属」に近いものでした。修行という手間とお金をかけて資格を取り、カードで維持する。その代わりに、空港では一段上の体験が約束される。会員はその関係を信じてカードを持ちつづけてきたのです。
年間300万円という決済条件は、ふだんからANAカードをメインカードにして高額決済をしている人にとっては難しくありません。けれど、SFCを「飛行機に乗るときの体験のために」維持してきた人にとっては、日常の買い物までANAカードに寄せないとラウンジが守れない、という話になります。条件をクリアできない会員にとっては、実質的な値上げ・サービス低下と受け取られました。
SNSでは「修行までして得た資格の意味が変わる」「後出しでルールを変えるのはどうなのか」といった声が相次ぎ、これが今回の見直しにつながったとみられます。上級会員という、ANAにとって最もロイヤルな顧客層からの反発だっただけに、ANAも対応を迫られた形です。
ネット上ではどんな声があがっているか
このニュースのコメント欄やSNSには、たくさんの声が集まっています。まったく同じ言い回しではありませんが、おおよそ次のような意見が目立ちました。わたしたちが読んでいて、温度の高さが伝わってきたものを整理しておきます。
いちばん多いのは、既存会員を軽く扱われたと感じる怒りです。「過去最高益を出しているのに、なぜいまある主要特典を切り下げる必要があるのか」「長年、高額決済もマイルの実績も積んできた会員が報われない」——そんな声が、もっとも多くの共感を集めていました。20年近くプラチナポイントを達成し、年400万円超を決済してきたという人からも、自分の積み重ねが切り捨てられるのか、という落胆が出ています。
発表のタイミングそのものへの疑問も目立ちます。「株主総会の前日に見直し検討を出してきたのはなぜか」「直前のJAL株主総会でJGC(JALグローバルクラブ)維持の姿勢が示されたことと関係があるのでは」——経営判断の透明性を問う、鋭い指摘でした。
判定の方法への違和感も強くあります。「マイルの実績ではなく、カードの決済額で線を引くのは、ANAのラウンジサービスとしておかしい」「いつも乗るのはANAというファンこそ大事にすべきではないか」。混雑の緩和が目的なら家族会員の見直しや同行者利用の有料化を、会費まわりが目的ならカード年会費の改定を——目的に合った直接的なやり方をすればよかったのに、決済額という間接的な手段を選んだから批判が大きくなった、という冷静な分析も見られました。
なかには「これを機にJALに乗ったら機内食もよくて、マイル縛りから解放されたい」という、他社への乗り換えをにおわせる声もありました。ロイヤルな顧客ほど、裏切られたと感じたときの反動は大きいものです。
| 声の種類 | おもな中身 |
|---|---|
| 既存会員の軽視への怒り | 最高益なのに主要特典を切り下げるのか。積み上げてきた実績が報われない |
| タイミングへの疑問 | 株主総会前日の発表、JALのJGC維持表明との対比 |
| 判定方法への違和感 | 決済額ではなくマイル実績で見るべき。間接的な手段が不透明 |
| 他社への流出 | これを機にJALへ、という声も |
| 一定の理解(少数) | ラウンジが混んでいるのは事実。なんらかの制限は必要という声も |
いっぽうで、少数ながら擁護的な見方もあります。「実際にラウンジは混んでいて、座れないこともある。なんらかの線引きは必要だ」という意見です。つまり、改定そのものを全否定する声ばかりではなく、やり方と伝え方が問題だった、という受け止めが多いのです。
これらの声に共通しているのは、「ANAが嫌い」だから怒っているのではない、ということです。むしろANAが好きで、長く付き合ってきたからこそ残念だ——そういう温度感です。だからこそANAも無視できず、見直しに踏み切ったのだと、わたしたちは見ています。
9月末までに改めて案内——見直しの中身はこれから
6月25日の発表でANAが明らかにしたのは、「4月の改定内容を見直す」という方針までです。具体的にどう変えるのか——300万円という基準を引き下げるのか、ラウンジ利用の条件そのものを撤回するのか、別の形に置き換えるのか——は、現時点では示されていません。
注目したいのは、ANAが公式サイトの案内のなかで「お詫び」まで述べていることです。先般発表した制度改定について多くの意見をもらっていること、いまその内容の見直しを検討していること、すでに案内した内容を再検討することになりお詫びする、という趣旨が、はっきりと書かれています。企業が一度発表した制度について正式に謝罪し、撤回をふくむ再検討に踏み込むのは、めずらしいことです。それだけ会員の声が重く受け止められた、ということでもあります。
ANAは、詳細を9月末までに改めて案内するとしています。つまり、今夏のあいだは「見直しが決まったが、中身は未定」という宙ぶらりんの状態がつづくことになります。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2026年4月 | SFCカードの改定を発表(年間決済300万円未満でラウンジ利用不可) |
| 2026年6月25日 | 改定内容を見直すと発表(公式サイトで「お詫び」を表明) |
| 2026年6月26日 | 株主総会で平澤社長が見直しの経緯を説明 |
| 2026年7月4日 | 景品表示法に触れるのではという指摘に、ANA広報部が「諸法令に抵触しない」と回答(報道) |
| 2026年上期中(9月末まで) | 見直し後の新サービス内容を改めて案内する予定 |
【続報】6月26日の株主総会で、社長が語ったこと
2026年6月26日、ANAホールディングスの定時株主総会が開かれ、SFCの見直しについて平澤寿一社長が自ら説明しました。ここで、4月の改定がなぜ生まれ、なぜ見直すことになったのかが、経営トップのことばではっきりしました。わたしたちが受け止めた要点を整理します。
まず、改定をした理由について。社長は「SFCは長年多くのお客様にご愛顧いただき、年々会員が増えている。いっぽうで、将来にわたって安定的にサービスを提供することが難しくなってきた」という趣旨を述べました。具体的には、羽田・新千歳・福岡・那覇といった主要空港で、ピーク時間帯にラウンジが混みすぎて座れない・入れないことが起きていること。そして、この混雑は2030年度に向けてさらに悪化すると見ていること。空港の施設じたいを広げるのは難しいため、なんらかの線引きが必要だと判断した——そういう説明でした。社長によると、ANAは搭乗回数を基準にする案や、入会資格そのものを厳しくする案など、いくつかのやり方を検討したうえで、年間の決済額という物差しにたどり着いたといいます。つまり、ラウンジ混雑への対応が改定の出発点だった、ということが、社長のことばではっきりしたわけです。
つぎに、見直すことにした理由について。社長は「4月23日の発表以降、株主・お客様から非常に多くの声をいただいた。その意見に真摯に耳を傾け、改定内容の見直しを行うことにした」と語りました。さらに「1日も早く信頼関係を取り戻したい」とも述べています。利用者の気持ちに十分に応えられなかった、という反省がにじむ発言でした。
この総会では、運航会社であるANAの平澤社長だけでなく、持ち株会社ANAホールディングスの芝田浩二社長も発言しています。芝田社長は4月の改定をめぐって、当初「一定程度の離反は織り込んでいる」という趣旨の説明をしていました。一定数の会員が離れることは見込みのうち、という受け取られ方をしたことばです。これがロイヤルな会員を軽んじているように響き、反発をさらに強めていました。総会で芝田社長はこの点について、適切なことばづかいに努めるとしたうえで「申し訳ございませんでした」と陳謝しました。運航会社のトップだけでなく、持ち株会社のトップまでが頭を下げた——そこに、今回の一件をANAがどれだけ重く受け止めているかが表れています。
そして、いちばん気になる「見直し後の中身」については、新しいサービス内容を上期中(9月末まで)をめどに改めて案内する、というところまで。300万円という基準を引き下げるのか、区分そのものをやめるのか、別の形にするのか——具体的な方向はこの日も示されませんでした。撤回なのか、線引きの緩和なのかは、まだ読めません。
なお同じ株主総会では、SFC以外にも、5月のシステム刷新で起きた国内線の不具合を7月末までに解消する見通しや、最安運賃「シンプル」で満席時に搭乗を断ることは「絶対にない」と明言したことなども話題になりました。SFCの一件だけでなく、足もとの信頼回復が問われた総会だったといえます。
マイラーやブロガーのあいだでも、この総会の発言を受けたレビューや分析がさっそく出はじめています。論点はおおむね「社長が混雑という事情を認めたのは理解できる。ただ、決済額で線を引くやり方が本当に最適なのかは別問題だ」というあたりに集まっています。9月末の正式案内で、ANAがこの宿題にどう答えるか——そこが次の焦点になります。
【続報】「景品表示法に触れるのでは」という声と、ANAの回答
7月に入ってから、この一件には法律の面からの論点も加わりました。専門メディアの取材にANA広報部が答えた内容が、2026年7月4日に報じられています。
きっかけは、SNSで広がったひとつの疑問でした。ANAはこれまで、スーパーフライヤーズカードを持ちつづけるかぎり上級会員の待遇が続くという趣旨で案内してきた。それなのに、あとから年間300万円という決済条件を足すのは、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)に触れるのではないか——そういう指摘です。
これに対してANA広報部は、景品表示法をふくむ諸法令に抵触するものではないと認識している、という趣旨の回答をしています。根拠として説明されているのは、スーパーフライヤーズ会員の規約に、ANAの決定によって内容を変更したり廃止したりできる条項がある、という点です。つまり規約のうえでは、変更の余地はもともと残されていた、ということになります。
いっぽうで、これで全部が片づくわけではない、という見方もあります。SFCの中心にあるのは単なるカード付帯のサービスなのか、それとも上級会員としての待遇そのものなのか。後者だとすれば、あとから決済条件を足すことは契約の目的そのものに触れてくるのではないか——とくに既存会員については慎重に見るべきだ、という議論です。ここは専門家のあいだでも見解が分かれています。
わたしたちがここで注目したいのは、法律論の勝ち負けではありません。ANA自身が「法令には触れない」と言いきったという事実のほうです。つまり今回の見直しは、法的に迫られてやむなく引き戻したものではなく、会員の声を受けた経営判断としてやっている、ということになります。だとすれば、9月末の発表がどこに着地するかを決めるのは、法律ではなくANAの意思です。意思で決めるからこそ、既存会員への配慮がどう書かれるかが、いちばんの読みどころになります。
【続報】8月13日、日経が伝えた「誤算」
2026年8月13日、日本経済新聞がSFC見直しの背景を掘り下げた記事を載せました(14日に更新)。見出しは「ANA『SFC特典』見直しの誤算 後発国際線のけん引役、今や重荷に」。会員登録者向けの記事なので全文はここでは紹介しませんが、報じられた要点を、わたしたちの理解でまとめておきます。
ひとつめは、SFCがANAにとってどういう存在だったかという話です。ANAは国際線ではJALより後発でした。乗ってくれた人にもう一度乗ってもらう——その仕組みとしてSFCを育て、長く赤字だった国際線を黒字へ押し上げる原動力にしてきた。ところが会員が積み上がりつづけた結果、いまはその優遇そのものが運営の重荷に変わっている。制度の育ての親が、そのまま重荷になったという構図です。
ふたつめは、反発の大きさについてです。日経の報道では、4月の発表に対する会員の反応がANAの想定を超えていたとされています。これは6月の株主総会で持ち株会社の芝田社長が「一定程度の離反は織り込んでいる」という趣旨の説明を陳謝したこととも重なります。社内の見立てでは想定の範囲だったものが、実際にはその外まで広がった。だから、9月末の案内も形だけの手直しでは済まない、という読みかたができます。
みっつめ。この報道でわたしたちが注目したのは、ANAが「線引きそのものをやめる」とは言いにくい事情が、あらためて裏づけられたことです。ラウンジの混雑という運用の問題に加えて、上級会員の優遇にかかるコストが事業の重さとして語られている。だとすれば、9月末の発表が4月案の完全撤回になる可能性は、そう高くないと見ておくほうが安全です。基準の緩和、経過措置、ラウンジ条件の切り離し——そのあたりの組み合わせで着地する形を、いまのうちに想定しておきたいところです。
この日経の報道そのものを整理した記事は「ANA「SFC特典」見直しの誤算とは?国際線を支えた制度が今なぜ重荷になっているのか」にまとめています。また、9月末の発表を受け取るときに順番に確認したい論点は「ANA SFC見直し 9月末の発表をどう読むか」に7つに分けて書きました。
【続報】8月16日、専門メディアが問うた「300万円は現実的か」
2026年8月16日、航空・旅行の専門メディア「トライシー」が、SFCの制度変更を論じたコラムを載せました。書いたのはフリーライターの安藤龍さんです。見直しの表明から2か月ほどがたち、議論の中身が「反発が大きかった」から「では、いくらならいいのか」へ移ってきたことがわかる記事でした。
いちばんの論点は、年間300万円という数字の重さです。月に直すと25万円。日本の平均年収がおよそ450万円であることをふまえると、その額をカードで払いつづけられる人は限られます。かりにSFC会員の多くが年収1,000万〜1,500万円の層だとしても、税金や社会保険料、住まいの費用、教育費や貯蓄を引いたあとに残る「カードで払える生活費」はぐっと少なくなる。だから300万円という線はやりすぎではないか、というのがコラムの見立てです。
そのうえで落としどころとして挙げられていたのが、年間100万〜200万円という水準でした。クレジットカードの世界では、ボーナスポイントや優待の区切りとしてよく使われる金額です。暮らしの実感から遠くなく、会社の側も会員を選び分けられる。両方が立つ線として現実的ではないか、という提案です。
わたしたちがこの記事で大事だと思ったのは、金額そのものより、議論の位置が変わったことです。4月の発表から6月の見直し表明までは「300万円は高すぎる」という声の大きさが焦点でした。いまは、専門メディアが具体的な代案の数字を出すところまで来ています。9月末の案内を読むときも、まず目がいくのは金額でしょう。300万円のまま据え置かれるのか、100万〜200万円の帯まで下りてくるのか、それとも決済額そのものをラウンジの条件から外すのか。この3つのどれに近いかで、受け止めかたは大きく変わります。
【続報】8月19日、ANAアメックスのSFCカードも刷新へ——年会費が上がる
2026年8月19日、アメリカン・エキスプレスがANAとの提携カードを全面的に刷新すると発表しました。新しいカードの申し込み受付は、2026年9月2日の13時から始まります。見直しの中身そのものとは別の話ですが、SFC会員には直接ひびく発表でした。ANAアメリカン・エキスプレス・スーパーフライヤーズ・ゴールド・カードと、同スーパーフライヤーズ・プレミアム・カードも、この刷新の対象に入っているからです。ANA公式のスーパーフライヤーズカードのページにも、2026年9月2日以降の申し込み分からカードデザイン・特典・サービスおよび年会費等の改定がある、という注記が付きました。
いちばん大きいのは年会費です。標準版のゴールド・カードは本会員が34,100円から42,900円へ、家族会員が17,050円から21,450円へ上がります。プレミアム・カードは本会員が165,000円から187,000円へ。既存の会員については、新しい年会費は2026年11月21日以降の引き落とし分から適用されます。
| カード | 改定前の年会費 | 改定後の年会費 |
|---|---|---|
| ゴールド・カード(本会員) | 34,100円 | 42,900円 |
| ゴールド・カード(家族会員) | 17,050円 | 21,450円 |
| プレミアム・カード(本会員) | 165,000円 | 187,000円 |
| プレミアム・カード(家族会員) | 4枚まで無料 | 4枚まで無料 |
いずれも標準版の金額です。スーパーフライヤーズ版も年会費改定の対象だと注記されていますが、SFC版そのものの新しい金額は、この案内の時点では公表されていません。
上がるいっぽうで、足される特典もあります。年間の利用額に応じたボーナスマイルが新しくでき、ゴールドは年400万円以上で15,000マイル、プレミアムは年600万円以上で30,000マイル。ここにもスーパーフライヤーズカードを含む、と注記されています。羽田空港第2ターミナルのPOWER LOUNGE PREMIUMが同伴者1名まで回数の制限なく使えるようになり、飲食での20パーセントのキャッシュバック(年間の上限はゴールドが2万円、プレミアムが4万円)も加わります。既存の会員への適用は特典ごとに時期がちがい、ラウンジは9月2日から、飲食のキャッシュバックは10月29日から、利用ボーナスマイルは2027年1月1日からです。
いっぽうで、気をつけておきたい変更もあります。海外旅行傷害保険が、2026年11月1日から自動付帯ではなく利用付帯になります。旅行の代金をそのカードで払っていないと補償を受けられない可能性がある、ということです。カードをもっているだけで守られていた人は、支払いかたのほうを変えることになります。
この発表を、わたしたちはSFCの見直しと重ねて読んでいます。4月案が生きていれば、ラウンジを使えるかどうかは年間300万円の決済で決まります。その決済を受け止めるカードのほうが、年会費を上げ、しかも年400万円・600万円という新しいボーナスマイルの段を置いた。ANAカードに決済を寄せる人ほど報われる設計が、カード会社の側からも一段はっきりしたわけです。9月末の案内で300万円という線がどこに落ちるにせよ、決済を集めておく構えが無駄になりにくいことは、この発表からも読み取れます。
【続報】8月21日、経営学者が問うた「量と質のトレードオフ」
2026年8月21日、ダイヤモンド・オンラインにSFCの制度改定を論じた記事が載りました。書いたのは早稲田大学大学院経営管理研究科の長内厚教授です。見出しは「ANAの『SFC制度改定』は本当に改悪なのか」。会員の反発とは別の物差しで、この改定を読もうとした記事でした。
軸になっているのは、サービス業がいつもかかえる課題です。ラウンジの椅子にも、優先搭乗の列にも、数のかぎりがあります。会員が増えれば増えるほど、一人あたりの体験は薄まっていく。長内教授はこれを量と質のトレードオフと呼び、限られた資源の質を守りながら、大きくなった会員基盤をどう維持するかという問いとして立てています。混雑したラウンジや長くなった優先搭乗の列は、待ち時間とストレスを減らすというサービス本来の値打ちそのものを失わせてしまう。ここが出発点だという見かたです。
もうひとつ挙げられているのが、修行による会員の増えかたです。資格を取るためだけに搭乗を集中させるという動きは、制度をつくった当初には想定されていなかった。想定の外で会員が積み上がった結果として、いまの混雑があるという整理です。記事には「決済額による選別はそれほど悪くない」という見出しも立っていますが、そこから先は有料の部分なので、ここでは中身に触れません。
この2週間で出てきた3つの記事は、それぞれ立つ場所がちがいます。8月13日の日経は経営の内側から、8月16日のトライシーは会員の家計の感覚から、そして今回は経営学の枠組みから。並べてみると、議論の中心が「反発が大きかった」から「では、どう線を引くのが理にかなうのか」へ移ってきたことがわかります。
ただ、量と質のトレードオフという整理を受け入れたとしても、そこから決済額という物差しがまっすぐ出てくるわけではありません。ラウンジを混ませるのは空港にいる人であって、カードで買い物をした人ではないからです。混雑を減らしたいなら、搭乗の実績で見るほうが理屈は通ります。それでも決済額が選ばれたところに、ANAの別のねらいが混じっている——わたしたちはそう見ています。9月末の案内が、この二つのねらいをどう書き分けるか。そこがいちばんの読みどころです。
「300万円」の線引きを、どう受け止めるか
社長の説明であらためてはっきりしたのは、改定の出発点が「ラウンジの混雑」だったということです。SFCの会員数は、修行ブームもあって長年積み上がってきました。資格を一度取れば、あとはカードを持っているだけで半永久的にラウンジを使える——この仕組みが続いた結果、混雑が深刻になっていた。混んでいて座れないラウンジでは、本来のくつろぎという価値が薄れてしまいます。そこに手を打ちたい、というねらい自体は、わたしたちも理解できます。
問題は、その線引きの方法でした。ANAが選んだのは「実際にANAでお金を使ってくれている会員」を優先するやり方で、年間300万円という決済額がその道具になりました。けれど、ここに無理があった。長くSFCを支えてきたのは、必ずしも年300万円を決済する人ばかりではありません。飛行機にはよく乗るけれど日常の決済はそれほど多くない、という会員も大勢います。混雑を生んでいる原因と、決済額という物差しが、かならずしも一致していないのです。配慮と伝え方の段取りも足りませんでした。だからこれだけの反発になり、見直しに至ったわけです。
この構図は、上級会員制度がどの航空会社でも抱えるジレンマでもあります。優遇を手厚くすれば会員は増えるが、増えすぎると優遇の中身が薄まる。その綱引きのなかで、ANAは一度バランスを取り直そうとして、いったん引き戻した——そう読むと、今回の動きの意味が見えてきます。
JAL(JGC)との比較で見える、SFCのいま
ライバルのJALには、SFCに相当する「JGC(JALグローバルクラブ)」があります。JGCもまた、近年は資格制度の見直しが進み、従来のような「一度取れば一生」という形ではなくなりつつあります。上級会員制度を取り巻く環境は、ANAだけでなく業界全体で変わってきているのです。
だからこそ、今回のANAの見直しを「会員の声が通った勝利」とだけ受け取るのは、少しもったいない見方です。むしろ、上級会員のあり方そのものが問い直されている時代の入り口に、わたしたちは立っています。ラウンジに座れることだけを価値の中心に置くのではなく、マイルの貯め方・使い方、座席のアップグレード、海外での体験まで含めて、SFCを総合的に活かす視点が、これからはより大切になります。その全体像は「ANAマイル・SFC完全ガイド2026」にまとめています。
SFC会員はいま、どう動けばいいか
結論から言うと、いま慌てて大きな判断をする必要はありません。理由は3つあります。
ひとつめ。改定の中身そのものが見直しになったため、4月の「300万円未満でラウンジ不可」という前提でカードの解約や切り替えを判断するのは早すぎます。9月末の正式案内を待ってから動いても遅くありません。
ふたつめ。それでも年間決済額がラウンジ利用の鍵になる可能性は残っています。ANAカードをメインの決済手段に寄せておくこと自体は、マイルも貯まるので損になりません。固定費や日常の支払いをANAカードに集約しておけば、どんな着地になっても困りにくい備えになります。
みっつめ。そもそも、この区分が動き出すのは2028年度からです。最初の判定期間は2026年12月16日から。つまり、いますぐSFCの特典が変わるわけではありません。2026年から2027年にかけては、これまでどおりラウンジも優先搭乗も使えます。あわてて結論を出さなくていい時間的な余裕は、十分にあるのです。なお4月案では、SFC LITEに下がるとスターアライアンスのステータスもシルバーになり、優先搭乗や手荷物の優先受け取りといった世界共通の優遇まで外れる設計でしたが、その部分も含めて、いまは見直しの対象になっています。
これからSFC修行を考えている人にとっても、見直しはむしろ前向きな材料です。会員の声を受けてANAが立ち止まったということは、上級会員のラウンジ体験という価値を、ANA自身が軽く扱えないと判断したということでもあるからです。修行の段取りそのものは「SFC修行2026 完全ガイド」で解説しているとおりで、9月末の案内を見てから本格始動しても十分間に合います。
まとめ
2026年4月に発表されたANAスーパーフライヤーズカードの改定——年間決済300万円未満でANAラウンジが使えなくなるという変更は、上級会員からの反発を受けて見直されることになりました。詳細は9月末までに改めて案内されます。
いまの段階では、正式な着地を待つのが正解です。ANAカードへの決済集約を進めつつ、9月末の発表を冷静に見守る。それがSFC会員にとっていちばん損のない構えです。続報が出しだい、この記事でも追記していきます。
よくある質問
ANAスーパーフライヤーズカードの改定は中止になったのですか?
中止ではなく「見直し」です。2026年6月25日にANAが、4月発表の改定内容を見直すと発表しました。どう変えるかの詳細は、9月末までに改めて案内される予定です。
ANAは謝罪したのですか?
はい。ANAは公式サイトの案内で、先般発表した制度改定について多くの意見をもらっていること、見直しを検討していること、すでに案内した内容を再検討することになりお詫びする、という趣旨を表明しています。発表済みの制度を正式に謝罪して再検討するのは、めずらしい対応です。
2026年6月26日の株主総会で社長は何と言いましたか?
ANAの平澤寿一社長は、改定の背景として、会員増加で羽田・新千歳・福岡・那覇などの空港ラウンジの混雑が深刻になり、2030年度に向けてさらに悪化する見込みだと説明しました。そのうえで、4月の発表後に株主・利用者から非常に多くの声をもらったため見直すことにした、「1日も早く信頼関係を取り戻したい」と述べ、新しいサービス内容は上期中(9月末まで)に案内するとしました。300万円という基準を変えるかどうかなど、具体的な方向は示されませんでした。
SFCの改定は景品表示法に違反しないのですか?
ANA広報部は2026年7月の取材に対し、景品表示法をふくむ諸法令に抵触するものではないと認識している、という趣旨で回答しています。スーパーフライヤーズ会員の規約に、ANAの決定で内容を変更・廃止できる条項があることが根拠とされています。いっぽうで、既存会員への適用については慎重に見るべきだという指摘も出ており、専門家の見解は分かれています。
4月に発表された改定の内容は何でしたか?
年間決済額(ANAカード・ANA Pay)でSFCを2区分に分け、300万円以上は「SFC PLUS」、300万円未満は「SFC LITE」とする内容でした。LITEになるとANAラウンジが使えなくなり、スターアライアンスのステータスもゴールドからシルバーへ下がります。2028年度からの導入予定で、これがSNSを中心に反発を受けました。
SFC PLUSとSFC LITEは何が違うのですか?
SFC PLUS(年300万円以上)はANAラウンジ利用可・スターアライアンス ゴールド・マイル積算ボーナスありで、従来のSFCとほぼ同じです。SFC LITE(年300万円未満)はANAラウンジ利用不可・スターアライアンス シルバーとなり、海外での優先搭乗や優先手荷物といった優遇も外れます。なお、これらは見直しの対象です。
いつから変わりますか?判定期間はいつですか?
4月案では2028年度からの導入で、最初の判定期間は2026年12月16日から始まる予定でした。この1年間のANAカード・ANA Payの決済額(家族カードも合算)で区分が決まります。2026〜2027年のうちは現状の特典のままです。
いまSFCカードを解約したほうがいいですか?
急ぐ必要はありません。改定の中身そのものが見直しになっており、しかも区分が動き出すのは2028年度から。9月末の正式な案内を待ってから判断するのが安全です。当面(2026〜2027年)はラウンジも優先搭乗もこれまでどおり使えます。
見直し後の詳細はいつわかりますか?
ANAは、2026年9月末までに改めて案内するとしています。それまでは「見直しは決定、中身は未定」という状態がつづきます。
これからSFC修行をするのは不利になりますか?
不利になるとは限りません。会員の声を受けてANAがラウンジ条件を見直した事実は、上級会員の体験価値が守られたとも読めます。9月末の発表を確認してから本格的に動いても間に合います。
これからSFCカードに入会すると、最初はどちらの区分になりますか?
ANAの公式案内では、新しく入会する場合は、100万ライフタイムマイルに到達している方をのぞいて、一律で「SFC LITE」からのスタートになるとされています。区分の判定は、入会日が含まれる判定期間(12月16日から翌年12月15日まで)のANAカード・ANA Payの決済額で行われ、その判定期間が終わった翌年度から新しいサービス内容が適用されます。なお、プレミアムステイタスの有効期間中は、いまのステイタスのサービスもあわせて使えます。この取り扱いも見直しの対象になりうるので、2026年9月末の案内で確かめてください。(2026年8月25日時点のANA公式案内より)
ANAアメックスのスーパーフライヤーズカードは、9月2日からなにが変わりますか?
2026年8月19日にアメリカン・エキスプレスが発表した提携カードの刷新に、ANAアメリカン・エキスプレス・スーパーフライヤーズ・ゴールド・カードとスーパーフライヤーズ・プレミアム・カードも含まれます。新しいカードの申し込みは2026年9月2日の13時から。年会費が上がるいっぽうで、利用額に応じたボーナスマイルや羽田空港第2ターミナルのラウンジ特典が加わります。既存の会員の年会費は2026年11月21日以降の引き落とし分から新しい金額になり、海外旅行傷害保険は2026年11月1日から利用付帯に変わります。
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