ANAとアイベックスエアラインズ(IBEX)が2026年7月29日、「運航業務の管理の受委託」に関する包括的業務提携で合意したと発表しました。2029年度の事業開始を予定しています。同じ日にANAホールディングスは、エンブラエルE190-E2型機を8機追加発注することも決めています。
路線名も便名もまだ出ていない発表なので、地味に見えます。ただ、わたしはこれをこの夏いちばん実務的なニュースだと思っています。仙台や新潟、大分といった、いま70席の小さな機体でしか行けない区間の乗り心地が、数年後にまるごと入れ替わる話だからです。今回は発表された事実と、乗る側にとって何が変わるのかを整理しておきます。
7月29日に発表されたのは3つのこと
この日ANAグループから出たリリースは、内容の違う3本が同時に並びました。混ざりやすいので、先に切り分けておきます。
| 発表 | 内容 |
|---|---|
| ANA便の受委託事業に関する包括的業務提携 | ANAが販売、IBEXが運航を担当する新しい体制。2029年度開始予定 |
| E190-E2型機8機の追加発注 | 受委託事業に使う共通事業機として、確定発注で8機を追加 |
| 2027年3月期 第1四半期決算 | 売上収益6,727億円。提携とは別の発表 |
提携の中身はシンプルです。ANAが販売会社として路線便数の計画と販売を担当し、運送責任をもちます。IBEXは運航会社として、自社の乗務員でANA便を運航し、運航責任をもちます。機体はANAホールディングスからIBEXへリースし、整備はIBEXからANAへ委託する形になります。事業化には関係当局への申請と認可が前提です。
肝心の路線と便数は「今後協議予定」で、まだ決まっていません。ここは2027年以降の続報を待つことになります。
コードシェアと「受委託」はなにが違うのか
ANAとIBEXは、いまもコードシェア(共同運航)でつながっています。IBEXが運航する便にANAの便名がついていて、ANA便名で予約すればANAのマイルもたまる。すでにそういう関係です。
では今回の受委託はなにが違うのか。ひとことでいうと、席の売り方が変わります。
| 項目 | いまのコードシェア | 2029年度からの受委託 |
|---|---|---|
| 席の販売 | IBEXが自社便として販売し、一部の席をANAが販売 | ANAが全席を販売 |
| 路線・便数の計画 | IBEX | ANA |
| 運航(乗務員) | IBEX | IBEX |
| 機体 | IBEXが保有するCRJ700 | ANAホールディングスからリースしたE190-E2 |
| 整備 | IBEX | ANAへ委託 |
いまのコードシェアは、あくまでIBEXの便にANAが相乗りしている形です。受委託になると、路線を決めるのも、席を売るのも、機体を用意するのもANA。IBEXは操縦と客室、つまり飛ばすところに専念します。
IBEX側から見ると、これは経営の作り替えです。自社で需要を読んで席を売るリスクを手ばなし、運航の品質で稼ぐ会社になる。国内線は厳しい環境がつづいていますから、規模の小さい会社にとっては合理的な選択だと思います。
CRJ700からE190-E2へ——70席が100席クラスになる
乗る側にいちばん効いてくるのは、機材の交代です。
IBEXはいまボンバルディア(現MHI RJ)CRJ700型機を9機もっていて、1クラス70席で運航しています。この機体を2029年から順次退役させ、エンブラエルE190-E2型機に置き換えていきます。

| 項目 | CRJ700(現行) | E190-E2(後継) |
|---|---|---|
| 座席数 | 1クラス70席 | 100席クラス(メーカー標準は1クラス106席・2クラス97席、最大114席) |
| 配列 | 2-2 | 2-2 |
| エンジン | CF34 | PW1900G |
| 保有・発注 | IBEXが9機保有 | ANAHDが確定15機+オプション5機(2025年2月決定)に8機を追加 |
配列はどちらも2-2で、真ん中の席がありません。国内線の小型機で中央席に当たらないのは、それだけで価値があります。そこは引き継がれます。
変わるのは胴体の太さです。CRJ700はもともとビジネスジェットから発展した細い機体で、天井が低く、頭上の収納も小さい。座ってしまえば快適ですが、通路を歩くときの窮屈さは正直あります。E190-E2は同じ2-2でも客室断面がひとまわり大きく、天井にも荷物棚にも余裕があります。70席から100席クラスへの増加は、混雑期に席が取りやすくなるという意味でもあります。
ANAホールディングスは今回の8機について、低燃費・低騒音で運航コストを抑えられ、中長期的に国内線で機動的に需給適合を追求できる機材だと説明しています。100席クラスというのは、737-800(166席前後)では大きすぎ、70席では足りない区間にちょうど合う大きさです。
乗る人にとって変わること・変わらないこと
2029年度はまだ先ですが、いまわかっている範囲で整理しておきます。
まず、変わらないと考えられるところ。IBEXが運航するANA便名の国内線は、いまもANA便名で予約・搭乗すればANAグループ運航便としてマイルが積算されます。プレミアムメンバーは、ANA LOUNGEのある空港から出発する場合、ANA便名での搭乗ならラウンジが使えます。受委託になってANAが全席を売るようになれば、この扱いはむしろわかりやすくなる方向でしょう。ラウンジの条件は空港によって違うので、詳しくはANAラウンジを利用できる条件まとめにまとめてあります。
つぎに、まだ決まっていないところ。
- どの路線をこの体制で飛ばすのか(今後協議)
- 座席をどう仕立てるのか(1クラスか、2クラスか)
- プレミアムクラスを載せるのかどうか
わたしがいちばん気にしているのは3つめです。E190-E2はメーカー標準で2クラス97席の設定ができる機体です。つまり、上位クラスを載せられる大きさはあります。いま70席のCRJ700にはプレミアムクラスがありませんから、もし載るなら、仙台や新潟、大分といった路線での過ごし方が変わります。
ただし、これは発表されていません。ANAもIBEXも座席仕様には触れていないので、いまの時点では「載せられる機体である」以上のことは言えません。国内線の上位クラスがどういうものかは、ANA国内線プレミアムクラスの解説記事で詳しく書いています。
IBEXが飛んでいる路線
受委託の対象路線は未定ですが、いまIBEXが飛んでいる区間を知っておくと、話の見当がつきます。就航しているのは次の10空港です。
- 新千歳(札幌)
- 仙台
- 福島
- 新潟
- 中部(名古屋)
- 大阪(伊丹)
- 広島
- 松山
- 福岡
- 大分
仙台を軸にして、新千歳・中部・大阪・広島・松山・福岡・大分をむすぶのが基本の形です。ほかに福島〜大阪、新潟〜大阪、新潟〜福岡、中部〜松山、中部〜大分、大阪〜福岡といった区間があります。
並べてみると、羽田を通らない路線ばかりです。地方と地方を直接つなぐ、需要は確実にあるけれど大型機では持てあます区間。ANAグループが「持続可能な地域航空ネットワーク」と言うとき、想定しているのはこういう路線です。中部発の路線については、ANA中部〜北海道の季節路線でも触れています。
2029年度まで、なにを見ておくか
この提携は決まったばかりで、実際に飛ぶまで3年ほどあります。そのあいだの節目を並べておきます。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2025年2月 | ANAHDがE190-E2を確定15機・オプション5機で発注決定 |
| 2026年7月29日 | ANAとIBEXが受委託で包括提携に合意。E190-E2を8機追加発注 |
| 2028年度 | ANAグループへのE190-E2の受領開始予定 |
| 2029年度 | 受委託事業の開始予定。IBEXはCRJ700の退役を順次開始 |
途中で見ておきたいのは、対象路線の発表と、座席仕様の発表です。とくに座席仕様は、地方路線でプレミアムクラスに乗れる区間が増えるかどうかに直結します。上級会員制度の見直しがつづいているいま、修行の組み立てにも関わってきます。この2年の制度変更の流れは、上級会員制度で起きたことのまとめにあります。
もうひとつ、CRJ700に乗っておくなら期限があるということも書いておきます。退役がはじまるのは2029年からですが、日本でCRJ700に乗れる機会はIBEXがほぼ最後です。あの細い胴体と、地上を走るときの独特の低い視線は、あと数年で見られなくなります。乗っておくなら、いまのうちだと思います。
よくある質問(FAQ)
ANAとIBEXの提携はいつから始まりますか?
2029年度の事業開始を予定しています。2026年7月29日に包括的業務提携で合意した段階で、事業化には関係当局への申請と認可が前提となります。
いまのコードシェアとなにが違うのですか?
いちばん大きな違いは、ANAが全席を販売する点です。受委託では、ANAが販売会社として路線便数の計画と販売を担当して運送責任をもち、IBEXが運航会社として自社の乗務員でANA便を運航して運航責任をもちます。機体はANAホールディングスからIBEXへリースし、整備はANAが受託します。
どの路線が対象になりますか?
2026年7月29日の発表時点では決まっていません。プレスリリースにも「今後協議予定」と記載されています。IBEXが現在就航しているのは新千歳・仙台・福島・新潟・中部・大阪(伊丹)・広島・松山・福岡・大分の10空港です。
機材はどう変わりますか?
IBEXが保有する1クラス70席のCRJ700型機9機を2029年から順次退役させ、100席クラスのエンブラエルE190-E2型機に置き換えます。E190-E2はメーカー標準で1クラス106席・2クラス97席、最大114席を設定できる機体です。配列はCRJ700と同じ2-2で、中央席はありません。
プレミアムクラスは載りますか?
発表されていません。E190-E2はメーカー標準で2クラス97席の設定ができる機体ですが、ANA・IBEXとも座席仕様には触れていません。現行のCRJ700は1クラス70席でプレミアムクラスの設定はありません。
まとめ
ANAとアイベックスエアラインズが2026年7月29日、運航業務の受委託で包括的業務提携に合意しました。2029年度からANAが路線と販売を、IBEXが運航を担当する体制になります。あわせてANAホールディングスは、共通事業機となるエンブラエルE190-E2型機を8機追加発注しました。
乗る側から見れば、いちばんの変化は機材です。70席のCRJ700が、100席クラスのE190-E2に入れ替わる。配列は2-2のまま中央席なしで、客室はひとまわり広くなります。羽田を通らない地方と地方をむすぶ区間が、いまより乗りやすくなる可能性は高いと思います。
いっぽうで、路線も座席仕様もまだ決まっていません。予約に関わる話が出てくるのは2027年以降でしょう。最新の情報は、ANAグループのプレスリリースとANA公式サイトのIBEXエアラインズ コードシェア便のご案内でご確認いただけます。
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