カーブドッチワイナリー訪問記|新潟・角田浜 砂の畑のアルバリーニョと「泊まれるワイナリー」を歩いた2日間

日本海の海岸沿いに、ぶどう畑がひろがっている。新潟市の西のはずれ、角田山の麓の角田浜。ここに、日本のワイナリーの歴史を変えた場所があります。カーブドッチワイナリーです。

わたしは2021年の6月末、この角田浜に1泊して、2日間かけてカーブドッチとその周辺を歩いてきました。畑を見て、試飲カウンターに座り、樽の眠る貯蔵庫をのぞき、レストランで食事をして、締めくくりにビールまで飲み比べる。ワイナリーというより、ひとつの村に滞在したような2日間でした。この記事では、その訪問記と、カーブドッチというワイナリーの物語を紹介します。

カーブドッチとはどんなワイナリーか

カーブドッチは、醸造家の落希一郎さんが中心となって1992年に砂地の畑にぶどうを植えたことからはじまり、翌1993年に創業したワイナリーです。現地の案内板によると、畑の面積は8ヘクタール、年間の製造本数はおよそ7万本。主な品種は、赤がカベルネ・ソーヴィニヨン、白がアルバリーニョとセミヨンです。

特徴は、なんといっても土壌にあります。角田浜の畑は海岸砂丘の砂地。水はけがよすぎるほどよく、ふつうの作物には向かない土地ですが、ぶどうにとっては根を深く伸ばす理想の環境になります。この砂の畑と日本海からの風が、カーブドッチのワインの個性をつくっています。

創業のころ、日本酒の国・新潟でワイナリーをはじめると言って、信じてくれる人はほとんどいなかったといいます。資本金もない状態からのスタート。それでも「ここでしか飲めないワインをつくる」という一点を貫いて、30年かけていまの姿を築き上げました。大量生産や輸入ぶどうに頼らず、目の前の畑のぶどうだけでワインをつくる。当たり前のようで、当時の日本ではめずらしかったこの姿勢が、いま日本中に生まれている小さなワイナリーたちの手本になっています。

カーブドッチワイナリーのぶどう畑(新潟・角田浜)

6月末の畑では、青い小さな実が鈴なりに育っていました。この実が夏の陽射しと海風を受けて、秋にはワインになるぶどうへと変わっていきます。

スペインの品種アルバリーニョという答え

カーブドッチの名前を全国区にしたのが、白ぶどうのアルバリーニョです。スペイン北西部の海沿いの産地で育つ品種で、「海のワイン」と呼ばれることもあります。砂地と海風という角田浜の条件がこの品種にぴたりと合い、カーブドッチはいまや日本におけるアルバリーニョの先駆者として知られています。

味わいはフレッシュな酸とミネラル感が主役で、魚介との相性は抜群です。新潟といえば寿司にのどぐろ、南蛮エビと、海の幸の宝庫。地元の魚とアルバリーニョを合わせると、「この土地のワイン」ということばの意味が舌の上でわかります。日本酒の国・新潟に、日本酒と同じくらい海の幸に合うワインが生まれている。この発見だけでも、訪れる価値があると思います。

新潟ワインコースト — 1軒のワイナリーが村になった

新潟ワインコーストの案内板(Vin Vin Niigata wineries)

カーブドッチの物語でわたしがいちばん心を動かされるのは、ここが「1軒のワイナリー」で終わらなかったことです。

カーブドッチはワイナリー経営を志す人を育てる取り組みをつづけ、そこから巣立った人たちが、カーブドッチの周りに次々と自分のワイナリーを開きました。フェルミエ(2006年)、ドメーヌ・ショオ(2011年)、カンティーナ・ジーオセット(2013年)、そしてルサンクワイナリー。こうして角田浜には5軒のワイナリーが集まる「新潟ワインコースト」が生まれました。

歩いてまわれる距離に個性の違うワイナリーが5軒。それぞれの試飲カウンターをはしごできるこのエリアは、日本のどこにもない風景です。ひとつの成功が仲間を育て、仲間が集まって土地の価値そのものを変えていく。この構図は、ワインの味と同じくらい味わい深いものだと思います。

訪問記 — 試飲カウンターから樽の眠る貯蔵庫まで

カーブドッチの試飲カウンターで赤ワインと白ワインを飲み比べ

ワイナリーに着いたら、まずはショップの試飲カウンターへ。赤と白を1杯ずつお願いして、ゆっくり飲み比べます。目の前の畑で育ったぶどうのワインを、その畑の隣で飲む。ワイナリー訪問のいちばんの贅沢は、この距離の近さです。

カーブドッチのサブル(SABLE)とシャルドネのボトル

この日に出会って印象に残ったのが「サブル SABLE」。フランス語で「砂」を意味する名前で、まさに角田浜の砂の畑を表現した一本です。ラベルの砂色も美しく、砂の土地からはじまったカーブドッチの原点を、名前ごと味わえるワインだと思いました。ピノ・ノワールもあり、こちらは繊細で、淡い色合いから香りがふわりと立ちます。

カーブドッチの樽貯蔵庫に並ぶワイン樽

圧巻だったのは、樽の眠る貯蔵庫です。木の梁の下に、赤く染まった樽がずらりと並ぶ。ワインが静かに熟成していく時間を、そのまま目で見ているような空間でした。ナパやボルドーの巨大なセラーとは違う、手づくりの温度が伝わってくる貯蔵庫です。

レストランと薪小屋 — ワイナリーで食べて飲む

 

 

カーブドッチの敷地にはレストランやカフェがあり、地元の食材とワインを合わせたコースが楽しめます。6月末はちょうどバラの季節。ガーデンのバラが咲き、デザートにも花びらがあしらわれていました。ワイナリーの庭で育ったバラが皿の上にのる。こういう細部に、この場所の豊かさが表れています。

カーブドッチ敷地内で味わったクラフトビールの飲み比べ

意外な楽しみが、ビールです。カーブドッチは敷地内でクラフトビールも醸造していて、飲み比べセットが頼めます。ワインを一日楽しんだあとの、喉を潤すビール。これがまたおいしいのです。ワイナリーでビールの飲み比べができるのも、「村」のようなカーブドッチならではです。

泊まれるワイナリー — 温泉と宿

カーブドッチのもうひとつの顔が、「泊まれるワイナリー」であることです。敷地内には温泉施設のヴィネスパと、2つの宿泊施設があります。ワインを心ゆくまで楽しんで、温泉に入って、そのまま眠る。車の運転を気にせず試飲できるのは、ワイナリー巡りでは何よりありがたい環境です。

わたしも角田浜に1泊して、2日目はもう一度ゆっくり敷地を歩きました。朝の畑は空気が澄んでいて、前日とはまったく違う表情を見せてくれます。日帰りでも楽しめますが、この場所は泊まってこそ本領を発揮すると思います。

1泊2日のモデルコース

わたしの2日間をもとに、おすすめの流れをまとめておきます。

  • 1日目の昼すぎに到着して、まずはショップで試飲。畑とぶどうの様子も見ておく
  • 午後はガーデンを散歩して、ほかのワイナリー(フェルミエやドメーヌ・ショオなど)を歩いてはしご
  • 夕方はヴィネスパの温泉でひと休み。夜はレストランでワインと食事をゆっくり
  • 2日目の朝はもう一度畑を歩いて、薪小屋でビールの飲み比べ。ショップでお土産のボトルを選んで帰路へ

車で来る場合も、泊まりにすれば夫婦や仲間のだれもが試飲を楽しめます。ワイン好きの旅先として、これほど条件のそろった場所はなかなかありません。

施設情報・アクセス

項目 内容
名称 カーブドッチワイナリー(Cave d’Occi)
住所 新潟県新潟市西蒲区角田浜1661
営業時間 本館 9:00〜17:00/ヴィネスパ 9:00〜20:00
アクセス(車) 北陸自動車道 巻潟東ICから約15分
アクセス(電車) JR越後線 越後曽根駅から車で約10分(無料送迎バスあり・要問い合わせ)
施設 ワインショップ・レストラン・カフェ・クラフトビール醸造・温泉(ヴィネスパ)・宿泊施設2軒

営業時間・定休日は変更になる場合があります。訪問前に公式サイトでご確認ください。

よくある質問

カーブドッチの見学や試飲に予約は必要ですか?

ショップでの買い物や試飲は予約なしで楽しめます。レストランでの食事や宿泊、ワイナリーツアーは事前予約がおすすめです。

車がなくても行けますか?

行けます。JR越後線 越後曽根駅から車で約10分で、無料送迎バスも運行されています。試飲を楽しむなら、運転しなくていい手段で訪れるのがおすすめです。

新潟ワインコーストとはなんですか?

カーブドッチのある角田浜周辺に集まった5軒のワイナリー(カーブドッチ・フェルミエ・ドメーヌ・ショオ・カンティーナ・ジーオセット・ルサンクワイナリー)のエリアの呼び名です。歩いてワイナリーをはしごできる、日本でもめずらしい場所です。

カーブドッチの代表的なワインはなんですか?

白ぶどうのアルバリーニョが看板品種です。海岸砂丘の砂地と日本海の風が育てる、フレッシュな酸とミネラル感のある白ワインで、魚介との相性に優れています。砂の畑を名前にした「サブル」も、この土地らしさを味わえる一本です。

まとめ — 砂の畑からはじまった村

なにもなかった海辺の砂地に、ぶどうを植える。そこから30年で、ワイナリーが5軒集まり、レストランと温泉と宿ができ、人が集まる村になった。カーブドッチは、ワインのおいしさと同じくらい、その歩みそのものが味わい深いワイナリーです。

新潟駅から車で40分ほど。日本酒の国でワインの村に泊まる旅は、想像よりずっと豊かな時間でした。アルバリーニョの一杯を、ぜひ現地の風の中で味わってみてください。

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この記事を書いた人
TE travel 編集部
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