ナパヴァレーで一度だけ食事をするなら、どこがいいか。この質問への答えとして、わたしは迷わずオーベルジュ・デュ・ソレイユ(Auberge du Soleil)のテラスランチを挙げます。ラザフォードの丘の中腹、オリーブの木立に囲まれたテラスから、ナパヴァレーが一望できる。その景色を前に、ミシュランの星を持ちつづけるキッチンの料理と、地元のワインをいただく。2017年7月に体験したこのランチは、いまでもわたしの「レストランの記憶」の上位にあります。
この記事では、そのときの体験を写真とあわせて紹介します。ナパヴァレー全体のまわり方は5つのワイナリーをめぐった訪問記のまとめにまとめています。
このときのナパヴァレーの旅は動画にもまとめています(Take Travel)
オーベルジュ・デュ・ソレイユとはどういう場所か
オーベルジュ・デュ・ソレイユはフランス語で「太陽の宿」。その名のとおり、太陽の顔をあしらったロゴがシンボルです。はじまりはホテルではなくレストランでした。1981年、サンフランシスコの著名なレストラン経営者クロード・ルーアスが、ラザフォードの丘の斜面にフレンチレストランを開きます。「カリフォルニアの太陽の下に南仏のような食の楽園をつくる」という構想で、1985年には客室が加わり、オーベルジュ(宿)になりました。
いまではリゾートとして世界的に知られ、高級ホテルグループ「オーベルジュ・リゾーツ・コレクション」の原点でもあります。それでもこの場所の核は、いまも変わらずレストランです。「The Restaurant at Auberge du Soleil」は、エグゼクティブシェフのロバート・カリーのもとでミシュランの一つ星を18年連続で守りつづけています(2025年時点)。ナパヴァレーの高級レストランの中でも、これほど長く星を保っている店はほかにありません。
訪問記 — 丘の上のテラスへ

テラスからの眺め。眼下に白いパラソルの中庭、その先にナパヴァレーの畑と山並みがどこまでもつづく(筆者撮影)
この日はスプリング・マウンテンの山を下りて、ラザフォードの丘を登り、ランチの時間にあわせてオーベルジュ・デュ・ソレイユに向かいました。シルヴェラード・トレイルから脇道に入り、オリーブの木立の中の坂道を上がっていくと、テラコッタ色の建物が現れます。
案内されたテラス席からの眺めは、写真のとおりです。標高数百メートルの斜面から、ナパヴァレーの谷底が一望できる。手前には白いパラソルが並ぶ中庭、その向こうにぶどう畑のパッチワーク、正面にはマヤカマス山脈。ワイナリーのテイスティングルームからの眺めとはスケールが違います。「ナパヴァレーという地形」そのものがごちそうになっている場所です。
ランチ — 牡蠣とメインと、谷の景色

氷の上の牡蠣とレモン。奥にはテラスの手すり越しにナパヴァレー(筆者撮影)
ランチはコース仕立てのプリフィクス(現在は2コースまたは3コースから選択)です。わたしたちは前菜に牡蠣を選びました。氷を敷いた盆に、殻付きの牡蠣とレモン。西海岸の牡蠣らしい小ぶりで繊細な味わいに、冷えた白ワインを合わせます。強い日差し、乾いた風、遠くの畑。この環境で食べる冷たい牡蠣は、率直に言って反則です。

メインの肉料理。薄くスライスして野菜とハーブを重ねた、繊細な盛り付け(筆者撮影)
メインは肉料理を選びました。薄くスライスした肉に野菜とハーブを重ねた、見た目は簡素なのに香りの層が厚い一皿。カリフォルニア料理の「素材を最小限の手数で最大限に生かす」という哲学が、そのまま皿になっています。合わせるのはもちろんナパの赤。周囲を見ると、昼からしっかりボトルを開けているテーブルばかりで、それがまったく不自然に見えないのがこの場所の空気です。
ミシュラン星付きと聞くと身構えますが、ランチのテラス席はドレスコードも雰囲気もリラックスしています。サービスはていねいなのに堅苦しくなく、景色を楽しむ時間をたっぷり取ってくれる。「特別なのに気負わない」というバランスが、18年星を守りつづける理由なのだと思います。
ワインリスト — ナパの丘で選ぶ一本
ワインリストも、この店の大きな見どころです。ナパヴァレーの中心という立地を生かして、地元の名だたるワイナリーのボトルが厚くそろっています。おもしろいのは、いま自分が見下ろしている畑のワインを、そのまま頼めることです。「あのあたりがラザフォードの畑ですよ」とスタッフが指さした方向のカベルネをグラスで頼む。土地と皿とグラスがひとつの円でつながる体験は、産地のレストランでしか味わえません。
ソムリエのサービスも見事でした。予算と好みを軽く伝えるだけで、コースの流れに合わせた提案がすっと出てくる。ミシュランの星を長く保つ店は、料理だけでなくワインの水準もぶれないのだと実感します。
太陽のロゴとギフトショップ

ギフトショップにて。太陽の顔のロゴと、名物のチョコレートアーモンド(筆者撮影)
食後はギフトショップへ。太陽の顔のロゴが入ったグッズや、ここの名物のチョコレートがけアーモンドが並んでいます。ロゴの太陽は、開業以来この場所を見守ってきた紋章のようなもので、お土産にすると旅の記憶がきれいに持ち帰れます。

敷地の遊歩道から。オリーブの木立の間に客室棟の屋根が点在する(筆者撮影)
敷地内はオリーブの木立の中に客室棟が点在する造りで、食後の散歩だけでもリゾートの空気を味わえます。宿泊すればテラス付きの客室から同じ谷の景色を朝から晩まで独占できるわけで、ナパの宿泊先として世界のベストリスト常連なのも納得です。
40年つづく「太陽の宿」の物語
オーベルジュ・デュ・ソレイユが開業した1981年、ナパヴァレーはまだ「パリスの審判」(1976年)で世界を驚かせた直後の、発展途上の産地でした。高級リゾートも、目的地になるようなレストランもほとんどない。そこにクロード・ルーアスは、南仏プロヴァンスの丘をそのまま持ってきたような食の空間をつくりました。ワインの産地には、そのワインにふさわしい食と滞在が必要だ、という確信です。
結果は歴史が証明しています。このレストランを目当てに旅行者が集まり、宿が生まれ、その運営会社は「オーベルジュ・リゾーツ・コレクション」として世界の高級リゾートを束ねるブランドに育ちました。ナパヴァレーが「ワインを飲みに行く場所」から「食と滞在を楽しむ土地」へ変わっていく流れの、出発点のひとつがこの丘です。2005年からキッチンを率いるロバート・カリーは、その伝統を18年連続のミシュラン一つ星というかたちで守りつづけています。
訪問情報(2026年時点)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | The Restaurant at Auberge du Soleil(オーベルジュ・デュ・ソレイユ) |
| 所在地 | 180 Rutherford Hill Rd, Rutherford, CA 94573 |
| 評価 | ミシュラン一つ星(18年連続・2025年時点)。ルレ・エ・シャトー加盟 |
| シェフ | ロバート・カリー(2005年からエグゼクティブシェフ) |
| ランチ | 2コースまたは3コースのプリフィクス。テラス席が人気 |
| 予約 | 要予約(公式サイトまたはTock)。テラス席指定は早めに |
| アクセス | ラザフォードの丘の中腹。イングルヌックから車で約10分、ヨントヴィルから約15分 |
よくある質問
Q. ランチとディナーのどちらがおすすめですか?
はじめてならランチをすすめます。理由は景色です。ナパヴァレーの一望はこのレストランの最大のごちそうなので、明るい時間のテラス席で味わうのがいちばんです。予算的にもランチのプリフィクスのほうが手が届きやすいです。
Q. ドレスコードはありますか?
リゾートらしいスマートカジュアルで十分です。ランチのテラス席は特にリラックスした雰囲気で、ワイナリーめぐりの途中の服装でも浮きません。
Q. 予約は必要ですか?
必要です。特に景色のいいテラス席は人気なので、旅程が決まったら早めに公式サイトかTockで予約し、テラス希望を伝えておくのが確実です。
Q. ワイナリーめぐりとどう組み合わせるのがいいですか?
ラザフォードの丘の中腹という立地なので、イングルヌックやオークヴィルのワイナリーと同じ日に組むときれいにまとまります。午前に1か所テイスティング、昼はここでゆっくりランチ、午後にもう1か所という流れが黄金パターンです。
まとめ — 景色まで含めてひとつの料理
オーベルジュ・デュ・ソレイユのランチを一言でいうなら、「ナパヴァレーそのものを食べる時間」です。牡蠣もメインもワインも見事でしたが、記憶にいちばん濃く残っているのは、皿の向こうにあった谷の景色と、乾いた風と、テラスの光です。景色まで含めてひとつの料理として設計されている。だから40年以上、世界中の旅行者がこの丘を登りつづけているのだと思います。
ワイナリーめぐりの合間に、少しだけ贅沢なランチを。ナパヴァレーの旅に一度だけ「特別な食事」を入れるなら、この丘の上のテラスを推します。
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