オーパスワン訪問記|ムートンとモンダヴィが生んだ最高峰を屋上テラスで味わう

ナパヴァレーのハイウェイ29号線を北へ走っていくと、オークヴィルの畑の中に、白い石灰岩の低い建物が見えてきます。オーパスワン。フランス・ボルドーの名門ムートン・ロートシルトと、ナパヴァレーの革命児ロバート・モンダヴィが手を組んで生まれた、カリフォルニアワインの頂点のひとつです。

わたしがこのワイナリーを訪れたのは2017年7月。イングルヌックでのテイスティングを終えて、午後の早い時間にオークヴィルへ向かいました。この記事では、実際に訪問して体験したことを、当時の写真と価格の記録とあわせて紹介します。ナパヴァレー全体のまわり方は5つのワイナリーをめぐった訪問記のまとめに書いているので、あわせてどうぞ。

このときのナパヴァレーの旅は動画にもまとめています(Take Travel)

オーパスワンとはどういうワイナリーか

オーパスワンの物語は、二人の伝説的な人物の出会いからはじまります。ナパヴァレーのワイン産業を世界水準に引き上げたロバート・モンダヴィと、ボルドー格付け第一級シャトー・ムートン・ロートシルトのオーナー、フィリップ・ド・ロートシルト男爵。アメリカとフランス、それぞれの頂点に立つ二人が「ナパで世界最高のワインをつくる」という一点で合意し、1979年にファーストヴィンテージが生まれました。商業リリースは1984年です。

「Opus One」はラテン語で「作品番号1番」。作曲家が最初の作品に付ける番号です。二人の巨匠が生涯をかけてつくる最初の傑作、という意志がこの名前に込められています。ラベルに描かれた横顔のシルエットは、モンダヴィとロートシルト男爵の横顔を重ねたもの。1979年から変わらないこのデザインは、ワインの世界でもっとも有名なラベルのひとつです。

現在の建物は1991年の完成で、設計はスコット・ジョンソン。半円形の大屋根をもつ低層の建築は、地上部分を最小限に抑え、醸造設備と樽熟成庫の大半を地下に収めています。地下の安定した温度でワインを熟成させるための、機能がそのまま形になった設計です。外壁を覆う白い石灰岩はフランス産。ナパの強い日差しを受けて、建物全体が静かに光ります。

訪問記 — オークヴィルの入口に立つ

オーパスワンの入口 石柱に刻まれたOPUS ONEの文字とぶどう畑

入口の石柱。派手な看板はなく、石に「OPUS ONE」と刻まれているだけ(筆者撮影)

ハイウェイ29号線沿い、ロバート・モンダヴィ・ワイナリーのほぼ向かいに、オーパスワンの入口があります。目立つ看板はありません。石柱に小さく「OPUS ONE」と刻まれているだけです。ゲートをくぐると、オリーブの並木とぶどう畑のあいだをまっすぐな道が延びていて、その先に例の半円形の建物が現れます。このアプローチの静けさだけで、ここがほかのワイナリーと違う空気の中にあることがわかります。

建物に入ると、天井の高いエントランスホールはひんやりとして薄暗く、外の眩しさとの対比で美術館のような印象を受けます。観光バスでにぎわうワイナリーとはまったく違う、抑制のきいた空間です。

ウェルカムカードとPartners’ Room

オーパスワンのウェルカムカード 名前が手書きされている

受付で渡されたウェルカムカード。訪問者の名前が一枚ずつ手書きされている(筆者撮影)

受付で名前を伝えると、手書きのウェルカムカードを渡されました。「Opus One welcomes Takehiko Yoshioka, Party of 2」 — わたしの名前と人数が、その場で一枚ずつ書き込まれています。このカードを「Partners’ Room(パートナーズ・ルーム)」で見せると、テイスティングと購入ができるという仕組みです。たった一枚のカードですが、工場見学ではなく「招かれた客」として扱われていることが伝わってきて、悪い気はしません。

テイスティングはグラス売りです。わたしが訪問した2017年7月時点の価格は、次のとおりでした。

ワイン グラス1杯の価格(2017年7月時点)
2013 Opus One 50ドル
2011 Opus One 65ドル
Overture(オーヴァチュア) 25ドル

グラス1杯50ドル。日本の感覚だと驚く価格ですが、オーパスワンはボトル1本400〜500ドル前後で取引されるワインです。フルボトルを開けずに、最高のコンディションで1杯だけ試せると考えると、じつは合理的な価格設定です。Overture(序曲という意味)はオーパスワンのセカンドワインで、まずこちらで入口を試すという選び方もできます。わたしは迷わず2013年のオーパスワンを選びました。

屋上テラスで味わう一杯

オーパスワンの屋上テラスから見るぶどう畑とマヤカマス山脈

屋上テラスからの眺め。まっすぐな並木道の先にオークヴィルの畑が広がる(筆者撮影)

グラスを受け取ったら、屋上のテラスに上がれます。これがオーパスワンの体験のハイライトです。緑の絨毯のようなぶどう畑がどこまでもつづき、正面にはマヤカマス山脈。頭上には星条旗がはためいています。眼下に見えるのは、このワインを生んだ畑そのものです。

オーパスワンのグラスとクラッカー 屋上テラスにて

グラスにはオーパスワンのロゴ入りナプキンとクラッカーが添えられる(筆者撮影)

グラスにはクラッカーが数枚、ロゴ入りのナプキンに載せて添えられます。余計なチーズ盛り合わせもチョコレートもありません。ワインそのものと向き合ってほしい、という姿勢の表れだと感じました。

2013年のオーパスワンは、若さの残る濃いルビー色。黒系果実の凝縮した香りにダークチョコレートと杉のニュアンスが重なり、口に含むと、力強いのに角のないタンニンが静かに広がります。ナパのカベルネらしい豊かさと、ボルドー的な品のよさが同居している。「力強いのに品がある」という、このワインについてよく言われる表現が、飲んでみるとそのままの意味で腑に落ちます。畑を見下ろすテラスで、その畑から生まれた一杯を飲む。30分ほどの時間でしたが、いまでもはっきり思い出せる体験です。

オーパスワンというワインを知る

オーパスワンはボルドースタイルのブレンドです。カベルネ・ソーヴィニヨンを主体に、カベルネ・フラン・メルロー・プティ・ヴェルドー・マルベックを年によって組み合わせます。年間生産量は約2万5千ケース。世界中に割り当てで販売されるため、日本で買うと定価より大幅に高くなることが多く、「現地でグラスで飲む」はじつはもっとも手頃な楽しみ方のひとつです。

熟成のポテンシャルは20〜30年以上といわれます。同じテイスティングで2011年(当時65ドル)が並んでいたように、ヴィンテージ違いを飲み比べられるのも現地ならではです。冷涼で難しい年だった2011年と、恵まれた2013年。同じ畑・同じ哲学でも、年によってワインの表情はまったく変わります。

訪問情報(2026年時点)

項目 内容
名称 Opus One Winery(オーパスワン)
所在地 7900 St Helena Hwy, Oakville, CA 94562
エリア オークヴィルAVA(ナパヴァレー中央部)
予約 事前予約制(公式サイトから。ウォークイン不可)
テイスティング料金の目安 80〜200ドル程度(プログラムによる)
アクセス サンフランシスコから車で約1時間30分。ナパ市内から約20分
所要時間の目安 1〜2時間

予約と料金の仕組みは変わることがあるので、最新情報は公式サイト(opusonewinery.com)で確認してください。週末と収穫シーズン(9〜11月)は数週間前に埋まることが多いので、旅行の日程が決まったら早めの予約をすすめます。

よくある質問

Q. 予約なしで行けますか?

行けません。オーパスワンはすべてのテイスティングが事前予約制です。公式サイトからプログラムを選んで予約します。人気が高いので、旅程が決まりしだい予約するのが確実です。

Q. ボトルは現地で買えますか?

買えます。Partners’ Roomで購入できます。日本への持ち帰りは、個人使用の少量なら税関申告のみで通ることがほとんどです。日本で買うより大幅に安いことが多いので、荷物に余裕があれば現地購入がおすすめです。

Q. ワイン初心者でも楽しめますか?

楽しめます。ただし1杯の単価が高いので、まずはセカンドワインのOvertureから試すか、先に向かいのロバート・モンダヴィでナパワインの基礎を体験してから訪れると、違いがよくわかって満足度が上がります。

Q. 何月に行くのがいいですか?

一年を通じて楽しめますが、畑の緑がもっとも美しいのは5〜7月、収穫の活気を見たいなら9〜11月です。夏は日差しが強いので、屋上テラスに出るなら帽子とサングラスがあると快適です。

まとめ — 一杯のワインが記憶になる場所

オーパスワンの体験は、豪華さで圧倒するタイプのものではありません。手書きのカード、静かな建物、畑を見渡すテラス、そして一杯のワイン。要素はシンプルです。でも、そのすべてが「世界最高のワインをつくる」という一点に向かって整えられていて、訪問者はその意志を全身で感じることになります。

ナパヴァレーには500を超えるワイナリーがありますが、「ワインの頂点とはどういうものか」を一杯で教えてくれる場所は、そう多くありません。ナパに行くなら、予約の手間をかけてでも訪れる価値のあるワイナリーです。

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この記事を書いた人
TE travel 編集部
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