ANA Bid My Priceがビジネスクラスへ拡大——2026年8月下旬から日本=香港・韓国線が入札の対象に

香港国際空港のスポットに駐機するANAのボーイング787-8(JA820A)

ANAが、入札でアップグレードできるサービス「Bid My Price」を、2026年8月下旬からビジネスクラスにも広げます。対象になるのは、ANA運航の日本=香港線と日本=韓国線です。エコノミークラスの航空券を買った人が、自分で金額を決めて入札し、いちばん高く入れた人から順にビジネスクラスの座席が割り当てられます。

Bid My Price 自体は以前からあるサービスでしたが、これまでアップグレード先はプレミアムエコノミーだけでした。ビジネスクラスが対象に入るのは今回がはじめてです。しかも、その第一号が長距離路線ではなく、香港と韓国という近距離路線から始まります。

わたしがこの発表でいちばん気になったのは、値段でも路線でもありませんでした。公式ページの注記のほうです。入札でビジネスクラスに座っても、マイルもプレミアムポイントも増えません。ここを知らずに飛びつくと、期待していたものが手に入らないことになります。

この記事では、ANA公式ページに書かれている規定だけをもとに、対象路線・対象の航空券・申し込みの流れ・落とし穴を整理します。

ビジネスクラスへの入札は日本=香港・韓国線から

ANAの国際線オプショナルサービスのページには、こう書かれています。2026年8月下旬より韓国・香港路線のビジネスクラスへのアップグレードが入札サービスの対象になる、と。Bid My Price の案内ページにも「2026年8月下旬よりビジネスクラスへのアップグレードサービスを一部路線で開始いたします」という一文が出ています。

香港国際空港のターミナル外観
香港国際空港のターミナル外観(写真:Wikimedia Commons / Diego Delso / CC BY-SA 3.0)

対象になる路線は、ANA運航の日本と香港、日本と韓国を結ぶ路線です。日本国内線は含まれません。また、コードシェア便でANA運航ではない便も対象外になります。

なぜ香港と韓国なのか。公式には理由の説明がありません。ただ、この2つはどちらもフライト時間が短く、ビジネスクラスの座席数もそれほど多くない路線です。長距離路線でいきなり始めるより、規模の小さいところで運用を試すという読みかたはできます。

プレミアムエコノミーとビジネスクラスで、対象がまるで違う

ここが混同しやすいところです。同じ Bid My Price でも、アップグレード先によって対象路線も対象の予約クラスも別々に決まっています。表にまとめます。

項目 プレミアムエコノミーへ ビジネスクラスへ(8月下旬から)
対象路線 日本=アメリカ・カナダ・ヨーロッパ・オーストラリア・シンガポール・マレーシア・タイ・インドネシア・ベトナム・フィリピン・トルコ 日本=香港・韓国
対象の予約クラス Y/B/M/U/H/Q/V/W/S/L/K Y/B/M/U/H/Q/V/W/S
L・K クラス 対象になる 対象にならない
日本国内線 対象外 対象外

ビジネスクラスへの入札では、L と K が外れています。この2つは、いわゆる格安のエコノミー運賃に割り当てられることが多い予約クラスです。つまり、いちばん安く買った航空券からビジネスクラスへ跳ぶことはできない、という線引きになっています。

自分の航空券の予約クラスは、購入後の予約確認画面やeチケット控えで確認できます。運賃の名前ではなく、アルファベット1文字のほうを見てください。

共通の条件もあります。ANAのウェブサイトで航空券を買っていること、そしてANAから案内メールが届いていることです。旅行会社経由で買った航空券は対象になりません。さらに、旅程の開始国がインドとメキシコの場合も対象外です。

入札から結果が出るまでの流れ

申し込みは、自分から探しに行くものではありません。対象になる人へ、出発の数日前にANAから案内メールが届きます。そこからスタートします。

段階 内容 タイミング
1. 案内メール 対象者にANAから入札の案内が届く 出発の数日前
2. 入札 定められた金額の範囲内で、自分で入札額を指定する 締切は出発2日前(48時間前)
3. 支払い情報の登録 クレジットカード情報を登録する。この時点では請求されない 入札と同時
4. 結果の通知 当選ならEMDお客様控が届く。落選もメールで連絡が来る 出発24時間前まで

アップグレードは、入札額の高い人から順に確定していきます。同じ金額で複数の人が入札していた場合は、購入した航空券の予約クラス、ANAマイレージクラブの会員ステイタス、入札した日時、という順番で優先度が決まります。

ここは上級会員に有利なしくみです。同額で並んだとき、ダイヤモンドやプラチナのほうが先に確定します。とはいえ第一の基準はあくまで金額なので、ステイタスがあれば安く入札しても通る、という話ではありません。

落選しても、入札した金額が引き落とされることはありません。エコノミークラスのまま搭乗することになります。なお、アップグレードできたかどうかの個別の問い合わせは受け付けていない、と公式に明記されています。

マイルもプレミアムポイントも増えない

ここがいちばん大事なところです。

公式ページの注意書きには、マイル積算、ANAプレミアムポイント積算、および行程の変更可否は、入札前に購入した航空券に適用されている運賃規則に基づく、と書かれています。

言いかえると、こういうことになります。入札でビジネスクラスの座席に座っても、積算されるマイルとプレミアムポイントは、もともと買ったエコノミークラスの運賃のままです。ビジネスクラスの積算率にはなりません。

だから、この制度は修行には使えません。プレミアムポイントを効率よく貯めてスーパーフライヤーズカードを目指している人にとって、Bid My Price は数字のうえでは1ミリも前に進まない買いものです。座り心地と食事だけを買っている、と考えたほうが正確です。

ANAのSFC制度そのものが大きく動いている時期でもあります。制度変更の中身についてはANAのSFC制度変更「年間決済300万円」は非現実的?改悪見直しの可能性を考察で整理しています。修行の計画を立てている人は、そちらと合わせて読んでください。

逆に言えば、修行を気にしない人にとっては素直なサービスです。短い路線で、シートと機内食とサービスを、その日の空席状況しだいの値段で買う。それだけの話になります。ANAのビジネスクラスの食事についてはANAビジネスクラスの機内食ガイドにまとめてあります。

手荷物はエコノミーのまま。座席も選べない

アップグレードが確定しても、ビジネスクラスの条件がすべて手に入るわけではありません。公式ページには例外がいくつも並んでいます。順に見ていきます。

  • 無料で預けられる手荷物の個数と重さは、ビジネスクラスの条件ではなく、もともと買ったエコノミークラスの運賃に基づきます
  • アップグレード先の座席は自分で選べません。空席の状況によっては、出発24時間前からのオンラインチェックインで変更できる場合があります
  • エコノミークラスで隣どうしの席を取っていても、アップグレード後に隣の席は保証されません
  • アップグレードが確定したあとは、元のエコノミークラスの座席にも戻れません
  • 確定後は変更も払い戻しもできません。マイルやアップグレードポイントを使ったアップグレードもできなくなります
  • 同じ予約に複数の対象便がある場合でも、すべての便がアップグレードされるとはかぎりません
  • 案内メールを受け取ったあとに予約を変更すると、入札は無効になります

ラウンジについては、公式ページに個別の記載が見当たりません。座席と付帯サービスをアップグレードするサービス、という書きかたにとどまっています。使えるかどうかを確実にしたい場合は、出発前にANAへ確認してください。

手荷物の扱いは、はっきり例外だと明記されています。ここは期待しないほうがいいところです。香港や韓国からの帰りに買いものをたくさんする予定なら、入札とは別に手荷物のことを考えておく必要があります。

支払いはクレジットカードだけ。通貨によって使えないカードがある

支払い方法はクレジットカードのみです。デビットカードやマイルは使えません。使えるブランドは VISA、MasterCard、Diners、American Express の4つですが、選ぶ通貨によって制限があります。

今回の香港・韓国線で気をつけたいのは、American Express です。公式の注記に、American Express はマレーシアリンギット、インドネシアルピア、タイバーツ、香港ドル、韓国ウォンでは利用できない、と書かれています。つまり、香港ドルや韓国ウォンを選んで入札するなら、アメックスは使えません。日本円で入札すれば問題ありません。

Diners のほうは、マレーシアリンギットとインドネシアルピアが使えません。こちらは今回の対象路線には直接ひびきません。

入札できる通貨には、日本円、米ドル、カナダドル、英ポンド、ユーロ、シンガポールドル、マレーシアリンギット、タイバーツ、インドネシアルピア、ベトナムドン、スウェーデンクローナ、トルコリラ、香港ドル、韓国ウォンが並んでいます。香港ドルと韓国ウォンが含まれているのは、現地発の乗客も想定しているからでしょう。

もうひとつ知っておきたいのは、請求元です。入札金額と追加で必要になる税金・手数料は、ANAではなくパートナー企業の Plusgrade 社(カナダ)から請求されます。カード会社との契約や選んだ決済通貨によっては、別に事務手数料がかかることがあります。カードの明細に見慣れない名前が出ても、あわてないでください。

いくらで入れるのが妥当なのか

入札額は自由に決められるわけではありません。画面にゲージが表示され、定められた金額の範囲のなかで指定するしくみになっています。上限も下限もANA側が決めます。

相場については、ANAは一切公表していません。しかも当選ラインは便ごとに変わります。同じ路線・同じ時間帯でも、その日のビジネスクラスの空席が多ければ安く通り、少なければ高くても落ちます。誰かの成功例をそのまま真似ても、次の便で同じ結果になる保証はありません。

考えかたとしてわかりやすいのは、その路線のビジネスクラスの正規運賃と、自分が払ったエコノミー運賃の差額を先に出しておくことです。その差額を上回る金額を入れるくらいなら、はじめからビジネスクラスの航空券を買ったほうが確実で、しかもマイルとプレミアムポイントもきちんと積算されます。

入札で買う価値があるのは、差額よりはっきり安い金額で通ったときだけです。上限いっぱいまで釣り上げてしまうと、この制度を使う理由そのものがなくなります。

なお、機内で待っている座席は路線と機材で変わります。日本=香港・韓国線に入る機材と座席のちがいはANA機材ガイド2026|777と787の違い比較で確認できます。予約時に機材を見ておくと、入札額を決める判断材料になります。

まとめ

ANAの Bid My Price が、2026年8月下旬からビジネスクラスに広がります。対象はANA運航の日本=香港線と日本=韓国線で、予約クラス Y から S までのエコノミー航空券をANAのウェブサイトで買い、案内メールを受け取った人が入札できます。締切は出発48時間前、結果は24時間前までにメールで届き、落選しても請求はありません。

ただし、マイルもプレミアムポイントも増えません。無料の預け手荷物もエコノミーのままです。座席も選べません。買えるのは、その便のその日の座り心地と機内サービスだけです。

そう割り切って、正規運賃の差額よりはっきり安い金額で入れる。この制度との付き合いかたは、それに尽きると思います。

対象路線や条件は今後変わる可能性があります。入札の前に、かならずANA公式サイトの Bid My Price のページで最新の内容をご確認ください。

よくある質問(FAQ)

Q. Bid My Price でビジネスクラスに入札できるのはどの路線ですか?

A. 2026年8月下旬から、ANA運航の日本=香港線と日本=韓国線が対象になります。日本国内線は対象外です。プレミアムエコノミーへの入札はこれまでどおり、日本=アメリカ・カナダ・ヨーロッパ・オーストラリア・シンガポール・マレーシア・タイ・インドネシア・ベトナム・フィリピン・トルコの各路線が対象です。

Q. どんな航空券をもっていれば入札できますか?

A. ANAのウェブサイトで購入したエコノミークラスの有償航空券で、ビジネスクラスへの入札の場合は予約クラスが Y/B/M/U/H/Q/V/W/S のいずれかであることが条件です。L と K は対象になりません。あわせて、ANAから入札の案内メールを受け取っている必要があり、旅程の開始国がインドとメキシコの場合は対象外です。

Q. 入札でアップグレードすると、マイルやプレミアムポイントは増えますか?

A. 増えません。マイル積算とANAプレミアムポイント積算は、入札前に購入した航空券の運賃規則に基づくと公式に明記されています。ビジネスクラスの座席に座っても、積算はエコノミークラスの運賃のままです。SFC修行の実績にはなりません。

Q. 入札の締切と、結果がわかるタイミングを教えてください。

A. 入札の最終締切は各便の出発2日前(48時間前)です。結果は出発時刻の24時間前までにメールで通知されます。当選した場合はEMDお客様控が届き、落選した場合も連絡が来ます。落選時に入札額が請求されることはありません。

Q. 支払いに使えるカードに制限はありますか?

A. 支払いはクレジットカードのみで、VISA、MasterCard、Diners、American Express が使えます。ただし通貨による制限があり、American Express は香港ドルと韓国ウォンでは利用できません。日本円を選べば問題ありません。請求はANAではなくパートナー企業の Plusgrade 社(カナダ)から行われます。

この記事を書いた人
TE travel 編集部
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