ストップオーバーとは、飛行機の乗り継ぎ地に24時間を超えて滞在し、その街も旅の目的地のひとつとして楽しむ仕組みのことです。日本語では「途中降機」と呼びます。
たとえば「東京 → バンコク → シンガポール」という旅程を1枚の特典航空券で発券し、バンコクで2泊してからシンガポールへ向かう。これがストップオーバーです。バンコクは通過点ではなく、正式に入国して観光や食事を楽しめる「もうひとつの目的地」になります。
「1枚のチケット=1つの目的地」という思い込みを外したとき、旅の設計はまるで変わります。わたし自身、ストップオーバーとオープンジョーを覚えてから、特典航空券の使い方が一段深くなりました。
この記事では、混同されやすいトランジットとの違いを整理したうえで、ANAマイル・JALマイルそれぞれのストップオーバールール(2026年7月時点)と、複数都市を回る旅程の実例までを解説します。特典航空券のルールは変わりやすいので、実際の予約時には必ず各社の公式サイトで最新の条件を確認してください。

ストップオーバーとトランジットの違い
どちらも「経由地に立ち寄ること」ですが、意味はまったく違います。分かれ目は滞在時間です。
トランジット(Transit)は、次の便に乗るために空港へ立ち寄る24時間以内の通過型乗り継ぎです。「通過」が本来の意味で、その都市を目的地として訪れるわけではありません。空港の制限区域内で次の便を待つケースが多く、街には出ないのが基本です。
いっぽうストップオーバー(Stopover)は、経由地に24時間を超えて滞在することです。ANAは「24時間を超える滞在」、JALは「24時間以上の一都市滞在」を途中降機と定義しています。正式に入国して、ホテルに泊まり、観光もできます。
| 項目 | トランジット(乗り継ぎ) | ストップオーバー(途中降機) |
|---|---|---|
| 滞在時間 | 24時間以内 | 24時間超(JALは24時間以上) |
| 位置づけ | 通過点 | 旅の目的地のひとつ |
| 過ごし方 | 空港内で待つことが多い | 入国して観光・宿泊ができる |
| 特典航空券での扱い | 乗り換え回数の範囲内なら自由 | 特典の種類ごとに回数・条件の制限がある |
日常会話の「乗り継ぎ」は、この両方を含む広いことばです。予約や航空会社とのやり取りでは、24時間以内か超えるかで扱いが変わることを覚えておくと迷いません。
オープンジョーとは
ストップオーバーとセットで覚えたいのがオープンジョー(Open Jaw)です。チケット上に「飛行機でつながれていない区間」がある旅程を指します。
たとえば「東京 → ロンドン着、パリ発 → 東京」という旅程なら、ロンドン〜パリの区間がオープンジョーです。この区間の移動は自由で、ユーロスターでも、別の航空券でも構いません。空白部分が開いた顎(open jaw)に見えることから、この名前がついています。
ギャップが1カ所のものをシングルオープンジョー、目的地側と出発地側の2カ所にあるものをダブルオープンジョーと呼びます。ストップオーバーと組み合わせると、1枚の特典航空券で回れる都市がさらに増えます。
ANAマイルのストップオーバールール(2026年7月時点)
ANAの国際線特典航空券は、2025年6月24日の予約・発券分から制度が大きく変わりました。片道発券が可能になったいっぽうで、乗り換え回数などの条件も改定されています。ここでは改定後のルールで整理します。
ANAマイルで発券できる国際線の特典航空券は大きく2種類あり、どちらを使うかでストップオーバーの可否が変わります。
ANA国際線特典航空券(ANA便のみ)
ANA便だけで旅程を組む特典航空券です。ストップオーバーのルールは次のとおりです。
- 片道旅程では途中降機できません
- 日本発の旅程では途中降機できません
- 海外発の往復旅程に限り、目的地以外に1回の途中降機が可能です
つまり日本在住者が日本から出発する場合、この特典ではストップオーバーは使えません。ここがいちばん誤解されやすいところです。
提携航空会社特典航空券(スターアライアンス特典)
スターアライアンス加盟航空会社など、提携航空会社の便を含む旅程で発券する特典航空券です。スターアライアンスにはANAのほか、ルフトハンザ、シンガポール航空、ユナイテッド航空、タイ国際航空、エバー航空などが加盟しています。
- 往復旅程では、目的地以外に1回の途中降機が可能です(日本発でも使えます)
- 片道旅程では途中降機できません
- 途中降機は乗り換え回数に含まれます。乗り換えは往復旅程の場合、日本国内で往路・復路各1回まで、海外で往路・復路各2回までです
日本発でストップオーバーを使いたいなら、こちらの提携航空会社特典航空券を選ぶことが前提になります。
| 項目 | ANA国際線特典(ANA便のみ) | 提携航空会社特典(スターアライアンスなど) |
|---|---|---|
| ストップオーバー(日本発) | 不可 | 往復旅程で1回可 |
| ストップオーバー(海外発) | 往復旅程で1回可 | 往復旅程で1回可 |
| 片道旅程での途中降機 | 不可 | 不可 |
| オープンジョー | 可(条件あり) | 可(条件あり) |
| 片道発券 | 可(2025年6月24日以降) | 可(2025年6月24日以降) |
オープンジョーの条件(ANA)
ANAの特典航空券では、次の条件を満たせばオープンジョーを組み込めます。
- 往路の到着地と復路の出発地が異なる場合は、同一エリア内であることが必要です。エリアは3つに分かれており、エリア1が北米・ハワイなど、エリア2が欧州・中東・アフリカなど、エリア3が日本・アジア・オセアニアなどです
- 出発地と最終帰着地が異なる場合は、同一国内であることが必要です。ただしヨーロッパ内のみの旅程を除き、ヨーロッパは同一国とみなすなどの特例があります
- 往路到着地と復路出発地が異なるゾーンになる場合、必要マイル数は各ゾーンで必要とされるマイル数の2分の1ずつの合算になります
たとえば「東京 → フランクフルト着、パリ発 → 東京」なら、フランクフルトとパリはどちらもエリア2なので成立します。
なお、かつてANAマイルの使い道として人気だったスターアライアンス世界一周特典航空券は、2025年6月23日で新規発券を終了しました。世界一周を考えるなら、有償のスターアライアンス世界一周航空券や、後述するJALのワンワールド特典航空券が現実的な選択肢になります。
JALマイルのストップオーバールール(2026年7月時点)
JALマイルの国際線特典航空券は3種類あり、ストップオーバーの扱いがそれぞれ違います。結論からいえば、自由度がもっとも高いのはワンワールド特典航空券です。
JAL国際線特典航空券(JAL便のみ)
JALグループ便だけで組む特典航空券では、途中降機は設定できません。経由地での滞在は24時間以内の乗り継ぎとして扱える範囲までです。日本国内で乗り継ぐ場合も、24時間を超える滞在はできません。
JMB提携航空会社特典航空券
ワンワールド加盟社などJALの提携航空会社の便で利用する特典航空券です。途中降機(24時間以上の一都市滞在ならびに地上移動区間)は、旅程全体で3回まで可能です。ただし日本発着の旅程では、日本国内の途中降機はできません。また途中降機は1都市につき1回までです。
ワンワールド特典航空券
ワンワールド アライアンス加盟航空会社2社以上を組み合わせて利用する特典航空券で、JALマイルの使い道のなかでも屈指の自由度があります。
- 利用できる区間は1特典あたり8区間までです
- 途中降機(24時間以上の一都市滞在ならびに地上移動区間)は旅程全体で7回まで可能です
- 日本発着の旅程では、日本国内の途中降機はできません
- 途中降機は1都市につき1回までです
- 地上移動区間(オープンジョー)は旅程全体で1回設定でき、滞在時間にかかわらず1回の途中降機とみなされます
途中降機7回という枠を使えば、出発地に戻ってくる世界一周のような旅程も組めます。詳しくは「ワンワールド世界一周航空券2026」で解説しています。
| JALマイルの特典 | ストップオーバー | 補足 |
|---|---|---|
| JAL国際線特典航空券 | 不可 | 乗り継ぎは24時間以内 |
| JMB提携航空会社特典航空券 | 旅程全体で3回まで | 日本国内は不可・1都市1回まで |
| ワンワールド特典航空券 | 旅程全体で7回まで | 2社以上利用・8区間まで・日本国内は不可 |
ANAの提携特典が「往復で1回」なのに対し、JALのワンワールド特典は「旅程全体で7回」。複数都市をじっくり回る旅程を組みたいなら、JALマイルのほうが設計の幅は広いといえます。
使い方の実例 — 1枚の特典航空券で複数都市を回る

ルールだけではイメージしにくいので、実際に組める旅程の例を挙げます。
例1:ANA提携特典でバンコクに寄ってからシンガポールへ
- 往路:東京 → バンコク(途中降機・2泊)→ シンガポール
- 復路:シンガポール → バンコク(24時間以内の乗り継ぎ)→ 東京
ANA公式サイトでも例示されている、基本形の旅程です。目的地シンガポールへの往復に、バンコク滞在を1回組み込みます。途中降機は往路・復路のどちらか1回だけ使えます。
例2:ANA提携特典+オープンジョーでヨーロッパ3都市
- 往路:東京 → フランクフルト(途中降機・2泊)→ ローマ
- 地上移動:ローマ → ミラノ(鉄道などで自由に移動)
- 復路:ミラノ → 東京
ストップオーバーとオープンジョーの併用例です。フランクフルト・ローマ・ミラノの3都市を1枚の特典で回れます。往路到着地と復路出発地はどちらもエリア2(ヨーロッパ)なので、エリア条件も満たします。3都市を別々に往復することを考えれば、マイルの使い方として効率的です。
例3:JALワンワールド特典で多都市周遊
- 東京 → ドーハ(途中降機)→ ロンドン(途中降機)→ ヘルシンキ(途中降機)→ 東京
カタール航空・ブリティッシュ・エアウェイズ・フィンエアーなど、ワンワールド加盟社を2社以上組み合わせる例です。8区間・途中降機7回の枠内なら、さらに都市を足すこともできます。
ただし、こうした複雑な旅程はオンライン予約で完結しないことがあります。ANAの提携特典もJALのワンワールド特典も、旅程によっては電話での手配が現実的です。まずは「ストップオーバーを1つだけ入れる」シンプルな旅程から試してみるといいと思います。
注意点
ストップオーバーを使うときに、つまずきやすいポイントをまとめます。
- 途中降機は乗り換え回数に含まれます(ANA)。乗り換え回数の上限と合わせて旅程を設計してください
- 特典航空券でも、燃油サーチャージ・税金・空港使用料は別途かかります。経由地や利用する航空会社によって金額が変わります
- 日本発着の旅程では、日本国内での途中降機はできません(ANA・JALとも)
- 特典航空券のルールは変わりやすいです。2025年6月にはANAの制度が大きく改定され、スターアライアンス世界一周特典航空券も終了しました。この記事の内容は2026年7月時点のものです。予約前に必ず公式サイトで最新の条件を確認してください
- 特典枠に空席がなければ旅程は組めません。人気路線は早めの予約が肝心です
購入した航空券でも使えるか
ストップオーバーはマイル特典だけの話ではありません。通常購入する航空券でも、運賃の種類によっては途中降機が認められています。正規運賃や一部の正規割引運賃では設定できる場合があるいっぽう、割引の深い運賃やセール運賃では不可がほとんどです。安い席ほど条件は厳しくなります。予約時に運賃規則の「途中降機(ストップオーバー)」の欄を確認してください。
まとめ
要点を整理します。
- ストップオーバーとは、経由地に24時間を超えて滞在し、その街も目的地として楽しむ仕組み。24時間以内の通過はトランジット
- ANAマイルなら提携航空会社特典航空券(スターアライアンス特典)で、往復旅程につき1回の途中降機ができる。ANA便のみの特典は日本発では不可
- JALマイルならワンワールド特典航空券が旅程全体で7回までと自由度が高い。JMB提携社特典は3回まで、JAL便のみの特典は不可
- オープンジョーと組み合わせれば、1枚の特典で3都市以上を回る旅程も組める
旅程を設計する楽しさ、というものがあります。どの都市で降りるか、どこをつないでどこを開けるか。地図を広げて旅程を考えるあの時間が、旅の醍醐味のひとつだとわたしは思っています。ストップオーバーとオープンジョーは、その選択肢を大きく広げてくれる道具です。
よくある質問
ストップオーバーとトランジットの違いはなんですか?
滞在時間で区別します。トランジットは次の便に乗るための24時間以内の通過型乗り継ぎで、ストップオーバー(途中降機)は経由地に24時間を超えて滞在することです。ストップオーバーでは正式に入国して、その街を旅の一部として楽しめます。
ANAマイルでストップオーバーはできますか?
できます。スターアライアンスなど提携航空会社の便を含む「提携航空会社特典航空券」なら、往復旅程で目的地以外に1回の途中降機が可能です(2026年7月時点)。ANA便だけの「ANA国際線特典航空券」は、日本発の旅程では途中降機できません。どちらも片道旅程では途中降機できません。
JALマイルでストップオーバーはできますか?
特典の種類によります(2026年7月時点)。JAL便だけのJAL国際線特典航空券では途中降機は設定できません。JMB提携航空会社特典航空券は旅程全体で3回まで、ワンワールド特典航空券は旅程全体で7回まで途中降機が可能です。ただし日本発着の旅程では、日本国内での途中降機はできません。
ストップオーバーとオープンジョーは併用できますか?
ANAの提携航空会社特典航空券では併用できます。往復旅程で目的地以外に1回の途中降機を入れつつ、地上移動区間(オープンジョー)を組み込めます。地上移動区間は両端の都市を合わせて1回の乗り換えとして数えられ、往路到着地と復路出発地が異なる場合は同一エリア内である必要があります。
購入した航空券でもストップオーバーはできますか?
運賃の種類によります。正規運賃や一部の正規割引運賃では途中降機が認められている場合があります。割引の深い運賃やセール運賃では不可がほとんどです。予約時に運賃規則の「途中降機(ストップオーバー)」の欄を確認してください。
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