ストップオーバーとは何か——1枚の特典航空券で複数都市を旅する、マイル上級者の発想法

ANAのスターアライアンス塗装 ボーイング787


ロンドンに着いて、電車でパリへ移動して、パリから東京へ帰る。この旅程が、1枚の往復特典航空券で組める。

あるいは、フランクフルトで2泊してからローマへ飛び、ミラノから帰国する。それも1枚の特典で成立する。

旅を熟知している人がストップオーバーやオープンジョーの話になると目を輝かせるのは、このためだ。「1枚のチケット=1つの目的地」という思い込みを外したとき、旅の設計がまるで変わる。

ただ、この自由度を手にするには、いくつかの言葉と仕組みを正確に理解しておく必要がある。この記事では、混同されがちな4つの概念を整理したうえで、ANAのマイルでどこまでできるかを具体的に書く。

4つの言葉を整理する

「乗り継ぎ」「トランジット」「ストップオーバー」「オープンジョー」——どれも似たような場面で使われるが、意味はまったく違う。まずここをきちんと分けておく。

乗り継ぎ(のりつぎ)

途中の空港で別の飛行機に乗り換えること全般を指す、もっとも広い日本語。トランジットもストップオーバーも、どちらも「乗り継ぎ」の一種だ。日常会話では便利な言葉だが、予約や航空会社とのやり取りでは、もう少し正確な言葉が必要になる。

トランジット(Transit)

次の便に乗るために空港に立ち寄ること。24時間以内の通過型乗り継ぎを指す。「通過」が本来の意味で、その都市を目的地として訪れるわけではない。空港の外に出ることなく、制限区域内で次の便を待つケースが多い。

「トランジットビザ」という言葉があるのも、このためだ。入国はしないが、空港を通過するためだけにビザが必要な国がある。

多くの人が「トランジット」を乗り継ぎ全般の意味で使っているが、正確には「24時間以内の通過」に限った言葉だ。

ストップオーバー(Stopover)

最終目的地へ向かう途中の都市に、24時間以上滞在すること。

たとえば「東京→バンコク→ロンドン」という旅程を1枚のチケットで発券したとき、バンコクで2泊してから次のフライトに乗る——これがストップオーバーだ。バンコクは最終目的地ではなく、旅程の中に組み込まれた「寄り道」として設定されている。正式に入国して、街に出て、食事をして、観光もできる。

トランジットとの違いは明確だ。トランジットは「空港を通過するだけ」、ストップオーバーは「その街を、旅の一部として楽しめる」。

オープンジョー(Open Jaw)

チケット上に「飛行機でつながれていない区間」が生じる旅程のこと。たとえば「東京→ロンドン着、パリ発→東京」という旅程なら、ロンドン〜パリの区間がオープンジョーだ。その区間をどう移動するかは自由で、ユーロスターでも、別の航空券でも構わない。

「ニューヨーク発→成田着、羽田発→クアラルンプール」という旅程なら、成田〜羽田がオープンジョーにあたる。同じ都市の別々の空港間でも成立する。

その空白部分が顎の開いた状態(open jaw)に見えることから、この名前がついている。

オープンジョーには2種類ある

ギャップ(チケット上で飛行機でつながれていない区間)が1カ所か、2カ所かで、シングルとダブルに分かれる。

シングルオープンジョー——ギャップが1カ所

もっとも一般的な形。目的地側にだけギャップがある。

例:東京 → ロンドン着、[ギャップ] パリ発 → 東京
ロンドンに降り立ち、自分でパリへ移動してから東京へ帰る。往復ともに東京発着なので、出発地側は「閉じている」。

ダブルオープンジョー——ギャップが2カ所

目的地側と出発地側、両方にギャップがある。

例:東京 → ロンドン着、[ギャップ1] パリ発 → 大阪、[ギャップ2] 大阪〜東京
ギャップ1はロンドン〜パリ(ヨーロッパ内の移動)。ギャップ2は大阪〜東京(帰国後の国内移動)。東京を出発したのに、帰りは大阪に降り立つ形になる。帰国後すぐ大阪で仕事がある、といった場合に使える旅程だ。ダブルオープンジョーはANA予約センターへの電話で手配する必要があり、エリア条件の確認も必要になる。

ANA特典航空券——何ができて、何ができないか

ANAのマイルで発券できる国際線特典航空券は大きく2種類ある。どちらを使うかで、できることがまるで違う。

① ANA国際線特典航空券(ANA便のみ)

ANA便だけで旅程を組む。日本発の場合、ストップオーバーは設定できない。ただしオープンジョーは使える。

ANA国際線特典(ANA便のみ)
ストップオーバー 不可(日本発の場合)
オープンジョー 可(同一エリア内の条件あり)

オープンジョーの条件:往路の到着地と復路の出発地が異なる場合、両者は同一エリア内(例:ロンドンとパリはどちらもヨーロッパエリア)でなければならない。

② 提携航空会社特典航空券(スターアライアンス特典)

スターアライアンス加盟航空会社の便を1区間以上含む旅程で発券できる。スターアライアンスにはANAのほか、ルフトハンザ、シンガポール航空、ユナイテッド航空、タイ航空、エバー航空などが加盟している。こちらでストップオーバーが使えるようになる。

提携航空会社特典(スターアライアンス)
ストップオーバー 往路か復路に1回、無料
ストップオーバーの場所 最終目的地と同じエリア内
オープンジョー 可(条件あり)
ストップオーバー+オープンジョーの併用

「最終目的地と同じエリア内に限られる」という制約が重要だ。ヨーロッパ行きの旅程なら、ヨーロッパの都市でのストップオーバーが設定できる。ヨーロッパへ向かう途中でバンコクに1泊する、という組み合わせは認められない。

ストップオーバー+オープンジョーを組み合わせると

スターアライアンス提携特典で両方を組み合わせると、旅程の自由度がさらに上がる。1枚の特典で3〜4都市を訪問できる旅程が成立する。

ヨーロッパを例に考えてみる。

  • 東京 → フランクフルト(ストップオーバー:2泊)→ ローマ(最終目的地)→ ミラノ(オープンジョー出発地)→ 東京

フランクフルト・ローマ・ミラノの3都市を、1枚の特典で回る。3都市を別々に往復すれば3倍のマイルがかかるところを、この旅程なら追加マイルをほとんど使わずに組める。

旅程設計の醍醐味がここにある。どの都市で何泊するか、どの区間をオープンジョーにするか——パズルを解くように組み立てていく。旅を熟知している人ほど、このあたりで時間を忘れる。

ただし複雑な旅程はANA公式サイトのオンライン予約では完結しないことが多い。ANA予約センターに電話して、一緒に旅程を組んでもらうのが現実的だ。エリア条件や空席状況で希望通りにならないこともあるが、まずは「ストップオーバーを1つだけ入れる」シンプルな旅程から試してみるといい。

購入チケット(通常の航空券)でも使えるか

ストップオーバーはマイル特典だけの話ではない。通常購入する航空券でも、運賃の種類によっては途中降機が認められているケースがある。

ビジネスクラスの正規運賃や正規割引運賃(Yファン・Jファンと呼ばれるクラス)では、途中降機オプションが設定されている場合がある。東京からロンドンへのビジネスクラス正規運賃で、フランクフルトに1泊立ち寄ってからロンドンへ進む、という使い方だ。

一方、格安の割引運賃やセール運賃では途中降機が許可されていないことがほとんどだ。安い席を取るほど条件は厳しくなる。予約時に運賃条件の「途中降機:可/不可」の欄を必ず確認してほしい。

世界一周チケット(RTW)について

スターアライアンスにはかつて、地球を一周する「世界一周特典航空券(RTW)」があった。ストップオーバーを最大15回設定でき、5〜10都市以上を1枚の特典で回る大がかりな旅程が組めた。旅好きにとっては夢のような制度だった。

ただし、このRTW特典は2025年6月23日をもって新規発券が終了した。現在は新たに購入することはできない。

よくある質問

Q. ANA国際線特典航空券でストップオーバーはできますか?

ANA便のみを使う「ANA国際線特典航空券」では、日本発の場合ストップオーバーは設定できない。ストップオーバーができるのは、スターアライアンス加盟航空会社の便を1区間以上含む「提携航空会社特典航空券」に限られる。

Q. ANA国際線特典航空券でオープンジョーはできますか?

はい、ANA便のみの特典でもオープンジョーは設定できる。ただし、往路の到着地と復路の出発地が異なる場合は、両者が同一エリア内(例:ロンドンとパリはどちらもヨーロッパエリア)である必要がある。

Q. オープンジョーとストップオーバーを同時に使えますか?

スターアライアンス提携特典航空券では、ストップオーバーとオープンジョーを組み合わせることができる。旅程が複雑になるため、ANA予約センターへの電話での手配が必要になる。

Q. 購入チケットでもストップオーバーはできますか?

運賃の種類による。ビジネスクラス正規運賃や正規割引運賃では途中降機が可能な場合がある。格安の割引運賃やセール運賃では途中降機不可が多い。予約時に運賃条件の「途中降機:可/不可」の欄を確認してほしい。

Q. スターアライアンスの世界一周チケット(RTW)は今も買えますか?

いいえ。スターアライアンスの世界一周特典航空券(RTW)は2025年6月23日をもって新規発券が終了した。現在は新たに購入することはできない。

まとめ

4つの言葉を整理しておく。

  • 乗り継ぎ:途中で飛行機を乗り換えること全般を指す広い言葉
  • トランジット:24時間以内の通過型乗り継ぎ。空港を出ないことが多い
  • ストップオーバー:24時間以上の途中滞在。その街を旅の一部として楽しめる
  • オープンジョー:チケット上に飛行機でつながれていない区間がある旅程

ANAマイルでストップオーバーを活用するには、スターアライアンス提携特典を選ぶことが前提になる。さらにオープンジョーと組み合わせることで、1枚の特典で複数都市を巡る旅程が現実になる。

旅程を設計する楽しさ、というものがある。どの都市で降りるか、どこをつないでどこを開けるか——地図を広げて旅程を考えるあの時間が、旅の醍醐味のひとつだとわたしは思っている。ストップオーバーとオープンジョーは、その選択肢を大きく広げてくれる道具だ。

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