ANAプライベートジェットとLEXUSで巡る伊勢志摩3日間——1人980万円、10月31日と11月7日の各1組限定

英虞湾の夕景。三重県志摩市の横山展望台から見たリアス海岸

2026年8月3日、ANAグループ3社とトヨタ自動車が組んだ国内ツアーが発売されました。羽田からプライベートジェットで飛び、伊勢志摩をLEXUSのヘリコプターとヨットで巡り、アマネムに2泊する3日間です。旅行代金は1人980万円から。出発日は10月31日と11月7日の2日だけで、各日1組しか受け付けません。

国内旅行の値段としては、ちょっと見たことのない水準です。ただ、中身をひとつずつ見ていくと、この数字の出どころはかなりはっきりしています。わたしはこのツアーを「高い国内ツアー」ではなく、日本のラグジュアリー旅行がどこまで来たかを示す1本だと受け取りました。順番に整理します。

ANA X・ANAビジネスジェット・トヨタが組んだ第1弾

今回の商品を発売するのはANA Xです。プライベートジェットの手配をANAビジネスジェット、客室での接遇をANAビジネスソリューションが担い、そこにトヨタ自動車が陸・海・空のLEXUSモビリティを持ち込みました。ANAの発表では、この4社の協業の第1弾という位置づけになっています。

商品名は「至高のモビリティが織りなす、神宿る伊勢志摩リトリート3日間 ~陸・海・空で紡ぐシームレスな奇跡~」。長い名前ですが、言っていることは単純で、移動を目的地までの手段ではなく旅の中身そのものにする、という設計です。

実際、行程表を見ると移動時間がやたらと長い。羽田から県営名古屋空港までのプライベートジェットは約120分あります。定期便なら1時間かからない区間です。この120分のあいだに、伊豆七島、下田、富士山界隈、南アルプスの上空を遊覧します。速く着くための飛行機ではなく、長く飛ぶための飛行機になっているわけです。

旅行代金は1人980万円から。人数が減ると上がる

料金は1人あたりの表示です。同行者が減るほど1人あたりの負担が重くなります。ジェットもヘリもヨットも1組で貸し切るので、頭数で割る前提の値づけになっているためです。

1組の人数 プライベートジェット付き(東京発着) 名古屋発着コース
4名1室 980万円 490万円
3名1室 1,280万円 630万円
2名1室 1,900万円 920万円

いずれも1人あたり・税込の金額です。4名で申し込んだ場合、1組の総額は3,920万円になります。名古屋発着コースは県営名古屋空港に自分で行き、自分で帰る前提で、羽田〜名古屋のプライベートジェットが外れるぶん、ちょうど半額です。この差額がジェットのチャーター代にあたると読めます。

さらに1日目に熊野古道・熊野那智大社・青岸渡寺・那智の滝を空から巡るコースを足すことができ、こちらは1組あたり590万円です。人数割ではなく組単位なので、4名で入れれば1人あたり147万5,000円の追加になります。

食事は2泊のあいだに朝食2回、昼食3回、夕食3回。1日目のアマネム到着から3日目の近鉄名古屋駅まで添乗員が同行します。

3日間の行程

日程 おもな内容
1日目 LEXUS LMで自宅から羽田空港へ。7時〜9時発のファルコン2000LXSで県営名古屋空港へ(約120分・伊豆七島や富士山界隈を遊覧)。LEXUS Helicopterで間崎島の「MOKU ISESHIMA 鮨裕 禅」へ(約60分・夫婦岩や伊勢神宮外宮を上空から)。昼食のあとヘリで約15分、14時から16時ごろアマネム着。夕食はアマネムダイニング
2日目 午前はアマネムのプライベート エクスペリエンス。11時30分に出発し、通常は入れない海女小屋で海鮮焼きの昼食。LEXUS LY680で英虞湾クルーズ(約2時間30分・真珠の取り出し体験、海底熟成酒の引き上げ、海女漁見学から1つ選択)。松井真珠プライベートバーで夕景を眺め、19時から志摩観光ホテル「ラ・メール」で夕食。21時50分ごろアマネムへ戻る
3日目 10時にホテルで正装(訪問着)へ着替え、11時にLEXUS LMで伊勢神宮内宮へ。御垣内参拝と御神楽、おはらい町の散策で約4時間15分。着替えたあと宇治山田駅へ移動し、レストラン列車「レ・サヴール志摩」で近鉄名古屋駅へ(約120分)。20時から22時のファルコン2000LXSで羽田へ(約1時間)、LEXUS LMで自宅まで

3日間で、飛行機・ヘリコプター・ヨット・ハイヤー・観光列車と5種類の乗り物に乗ります。乗り換えのたびに待ち時間が消えているのがこの行程の肝で、空港での並びも、タクシー待ちも、チェックインの列も出てきません。

駐機するダッソー ファルコン2000LXS

使われる4つのモビリティ

空を飛ぶのはダッソーの「ファルコン2000LXS」です。本格的な中型ビジネスジェットで、キャビンは立って歩ける高さがあります。定期便のビジネスクラスとは、そもそも比べる軸が違う乗り物です。運航はフジビジネスジェットが担当します。

ヘリコプターは「LEXUS Helicopter」。エアロトヨタの協力で、県営名古屋空港から間崎島、間崎島からアマネムへと2区間飛びます。伊勢志摩をヘリで移動する行程は、個人で組もうとすると発着地の確保からしてむずかしいところです。

海に出るのはLEXUSのフラッグシップヨット「LY680」。英虞湾のクルーズでは、船内でANAのプレミアムスタッフが接遇にあたります。客室乗務員の技術を船の上に持ち込むという発想で、ここがANAが組んでいる意味のいちばん見えやすい部分だと感じました。

陸は「LEXUS LM」。自宅から羽田までの往復も、伊勢志摩での移動もこの車です。運行は日の丸リムジンとエムケイが担います。

泊まるのはアマネム。食事は鮨・海女小屋・ラ・メール

2泊するのはアマンの「アマネム」です。英虞湾を望む約25万平方メートルの敷地に、スイートとヴィラがわずか32室。各ヴィラに99平方メートル以上の広さと自家源泉のプライベート温泉があります。約2,000平方メートルのアマン・スパには水着で入るサーマルスプリングがあり、滞在中は1泊につき1つ、プライベート エクスペリエンスを無料で選べます。

食事は3日間とも場所を変えます。1日目の昼は伊勢志摩国立公園内の離島、間崎島にある1日1組限定のオーベルジュ「MOKU ISESHIMA 鮨裕 禅」。2日目の昼は現役の海女が使う海女小屋での海鮮焼きで、通常は立ち入れない場所だと案内されています。2日目の夜は志摩観光ホテル「ラ・メール」の「優雅なる晩餐」。鮑ステーキと伊勢海老クリームスープという、このホテルの看板が並ぶコースです。

帰りの近鉄でもレストラン列車「レ・サヴール志摩」でフレンチをいただきます。予約の都合で手配できない場合は、ほかの近鉄観光特急になる可能性があると注記されています。

伊勢神宮 内宮の鳥居と参道

3日目は正装で御垣内参拝

この行程でいちばん性格が出ているのが3日目です。朝10時に部屋で訪問着に着替え、そのまま伊勢神宮内宮へ向かいます。一般の参拝者が入れない御垣内へ進み、御神楽の奉納まで行います。

御垣内参拝には服装の決まりがあります。だからこそ、ホテルの部屋でゆっくり着替える時間が行程に組み込まれ、着替えたあとの移動もLEXUS LMになっている。参拝が観光の一項目ではなく、旅のいちばん奥に置かれていることがわかります。

1日目にヘリで夫婦岩・二見興玉神社・伊勢神宮外宮の上空を通るのも、この流れの伏線です。空から神域を見て、2日目に海と食で身体をゆるめ、3日目に正装で内宮へ入る。3日間の順番そのものが、参拝までの助走として組まれています。

この価格を、どう見るか

1人980万円という数字は、単体で見ると現実離れしています。ただ、内訳を分解すると、ふつうの旅行商品とは足し算の仕方が違うことがわかります。

プライベートジェットの往復チャーター、ヘリコプター2区間、ヨットの独占チャーター、アマネムのヴィラ2泊、1日1組の鮨、御垣内参拝の手配、そして各所での貸切。どれも1組のためだけに用意され、頭数が増えても総額はほとんど変わりません。だから4名なら1人980万円、2名なら1人1,900万円という、人数が減るほど高くなる価格表になります。この形になっている時点で、これは席を売る商品ではなく、日程まるごとを売る商品です。

そのうえで、わたしがおもしろいと思ったのは、ANAが定期便の外側で商品をつくり始めたことです。国際線のビジネスクラスは、機材の世代でシートがまるごと変わる世界で、どの便に当たるかを予約前に調べる話をANAビジネスクラス「当たり機材」の見分け方2026で書きました。定期便である以上、選べるのは席までです。今回のツアーは、その制約をまるごと外したところに商品をつくっています。

実際の座り心地でいえば、定期便の頂点はANA THE Roomで、わたしはこれを何度も体験してきました。個室に近い空間で長時間を過ごす快適さは、いま世界のビジネスクラスでも上位に入ります。それでも、空港に行き、保安検査を抜け、搭乗口で待つという手順は消えません。今回のツアーが売っているのは、その手順のほうです。

上級会員の制度が各社で見直され、「ステータスで買える快適さ」の相場が変わりつつあることは「一度取れば一生」が終わった年で整理しました。ラウンジも優先搭乗も、定期便という枠のなかの優遇です。その枠を出た商品が国内で正式に発売されたことのほうが、金額よりも大きな変化だと思います。

申し込みは9月14日17時まで

受付は2026年8月3日14時に始まり、締切は9月14日17時です。出発日は10月31日と11月7日の2日で、各日1組、2名から4名まで。最少催行人員は1組2名です。添い寝プランの設定はありません。

プライベートジェット付きコースの送迎範囲は東京23区内が基本で、そのほかにも一部対応できる地域があるとされています。名古屋発着コースは県営名古屋空港での集合・解散で、そこまでの交通は自分で手配します。ツアーが中止になった場合、自分で手配した交通の取消料は自己負担になる点は押さえておきたいところです。

ANAは今後、このツアーをモデルケースとして、要望に応じた一部カスタマイズ型の展開も視野に入れると発表しています。三重県とANAホールディングスは観光振興・食の販路拡大・人づくりを柱に包括連携協定を結んでおり、今回の商品もその流れのなかにあります。伊勢志摩ツーリズムやアマネムといった地元のパートナーと組み、高付加価値の観光で地域にお金を落とす設計です。同じ枠組みで、ほかの地域に第2弾が出てくる可能性は高いとみています。

予約と問い合わせはANAトラベラーズ国内ツアーデスクの専用番号(050-3172-2337、9時30分〜18時、土日祝と12月29日〜1月3日は休み)です。行程と料金の詳細は、ANA公式サイトの至高のモビリティが織りなす、神宿る伊勢志摩リトリート3日間で確認できます。天候や運航状況によって行程が変わる場合があるという注記も出ているので、申し込み前にいちど目をとおしておくと安心です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 旅行代金は1組の金額ですか、1人の金額ですか。

1人あたりの金額です。プライベートジェット付きコースで4名1室なら1人980万円なので、1組の総額は3,920万円になります。人数が少ないほど1人あたりは高くなり、2名1室では1人1,900万円です。

Q2. 出発日と定員を教えてください。

出発日は2026年10月31日(土)と11月7日(土)の2日です。各日1組限定で、1組2名から4名まで。最少催行人員は1組2名です。

Q3. 名古屋発着コースは何が違いますか。

羽田〜県営名古屋空港のプライベートジェットと、自宅からの送迎が含まれません。県営名古屋空港での集合・解散になり、そこまでの交通は自分で手配します。そのぶん料金はちょうど半額で、4名1室なら1人490万円です。

Q4. どんな乗り物に乗りますか。

プライベートジェット「ファルコン2000LXS」、「LEXUS Helicopter」、LEXUSのフラッグシップヨット「LY680」、ハイヤーの「LEXUS LM」、そして帰路のレストラン列車「レ・サヴール志摩」です。英虞湾のクルーズでは、船内でANAのプレミアムスタッフが接遇にあたります。

Q5. 伊勢神宮の御垣内参拝も含まれますか。

含まれます。3日目にホテルで訪問着に着替えてから内宮へ向かい、御垣内参拝と御神楽の奉納を行います。着替えの時間も行程に組み込まれています。

この記事を書いた人
TE travel 編集部
TE travel は、Team Elite メンバーによる旅行記録サイトです。ANAダイヤモンド・マリオット チタンエリート・ヒルトン ダイヤモンドなど、各プログラムの上級ステータスを実際に取得・維持しながら、ファーストクラス・ビジネスクラス・ラグジュアリーホテルを体験した記録を発信しています。ポイント・マイルの使い方から、上級会員だけが知る現場の実感まで、数字では伝わらない情報をお届けします。