正直に言う。ANAファンとして、2025年から2026年にかけての一連の発表は、読むたびにため息が出た。
国際線特典航空券の必要マイル数が最大70%近く引き上げられ、スターアライアンス世界一周特典が廃止になり、アップグレードポイントも2027年3月末で消滅する。そして2026年5月からは国内線の運賃体系がまるごと変わり、「シンプル」運賃では座席指定すらできない。
「改悪」という言葉が、これほど素直に当てはまる年もなかった。
ただ、感情だけで語っても前には進めない。この記事では、2025〜2026年のANAの変更点をひとつひとつ整理し、ファンとして何を失い、何が残っているのかを正直に書いていく。怒りに共感しながら、それでも「どう使うか」を考えたい人のための記事だ。
2025〜2026年、ANAに何が起きたのか
変更の規模が大きすぎて、ひとつひとつを追うのが追いつかなかったという人も多いと思う。まず全体を俯瞰してみる。
2025年4月、ANAは国際線特典航空券の必要マイル数を大幅に引き上げると発表した。2025年6月24日以降の予約・発券分から適用されるこの改定は、一部のクラスとシーズンでは50〜70%近い値上げとなった。同時に、スターアライアンス世界一周特典の新規発券が2025年6月23日で終了することも発表された。
そして2025年11月、ANAはアップグレードポイントを2027年3月末で廃止すると発表した。長年、上級会員の「最大の楽しみ」だった制度が消えることになった。
さらに2026年5月19日、国内線運賃がまるごとリニューアルされた。旧来の「スーパーバリュー」「プレミアム旅割」などは姿を消し、「シンプル」「スタンダード」「フレックス」の3体系に一本化された。
これだけの変更が、1年ちょっとの間に立て続けに起きた。ANAファンが疲弊するのは当然だ。
以下に、主な変更点を時系列で整理する。
| 時期 | 変更内容 | 評価 |
|---|---|---|
| 2025年6月24日〜 | 国際線特典航空券 必要マイル数の大幅引き上げ | 改悪 |
| 2025年6月24日〜 | 国際線特典航空券 片道発券が可能に | 改善 |
| 2025年6月23日 終了 | スターアライアンス世界一周特典 新規発券終了 | 廃止 |
| 2027年3月31日 廃止 | アップグレードポイント廃止 | 廃止 |
| 2026年5月19日〜 | 国内線運賃をシンプル・スタンダード・フレックスに刷新 | 一部改悪 |
国際線特典航空券の必要マイル数引き上げ——数字で見る「改悪」の深刻さ
いちばん多くのマイラーが絶句したのが、2025年6月24日から適用された国際線特典航空券の必要マイル数の改定だ。
対象となったのは、韓国・ロシア1(Zone2)、アジア1(Zone3)、アジア2(Zone4)、オセアニア(Zone10)など複数のゾーン。特にビジネスクラス以上のハイシーズンでの値上げ幅は大きく、「2年前には夢のような数字だったのに」という声が続出した。
Zone7(欧州・ロシア2)のビジネスクラス・ハイシーズンは改定前と比べて+69%の引き上げ。韓国・ロシア1(Zone2)のビジネスクラス・ハイシーズンでも+52%だ。「ほぼ倍」という感覚を持ったマイラーも多い。
以下に、改定前後の主な変更をまとめる。
| 路線ゾーン | クラス | シーズン | 改定前(往復) | 改定後(往復) | 増加率 |
|---|---|---|---|---|---|
| Zone2(韓国) | ビジネス | ハイ | 25,000マイル | 38,000マイル | +52% |
| Zone4(アジア2) | ビジネス | ハイ | 60,000マイル | 91,000マイル | +51% |
| Zone7(欧州) | ビジネス | ハイ | 75,000マイル | 126,000マイル | +69% |
| Zone4(アジア2) | ファースト | ハイ | 80,000マイル | 120,000マイル | +50% |
この数字を見て「まあしょうがないか」と思える人はほとんどいないだろう。ハワイ旅行のためにコツコツ貯めてきた10万マイルが、突然「夏のビジネスクラスには足りない」になる。それが今回の改定だ。
しかも、この改定は一度ではなかった。ANAのマイレージプログラムの改悪は2024年から続いており、2025年の改定はその第二弾という位置づけだ。連続する改悪に、長年のファンほど疲弊感を強く感じている。
東洋経済オンラインでも「”マイラー”から悲痛の声」と報じられたほどで、マイレージの魅力が大幅に下がったという評価はマイラーコミュニティで広く共有されている。
スターアライアンス世界一周特典の廃止——旅好きにとって最大の喪失
「人生で一度はやりたかった」と思っていたマイラーも多いはずだ。スターアライアンス加盟航空会社を組み合わせて、文字どおり地球を一周できる世界一周特典。2025年6月23日の発券分をもって、この制度は新規発券が終了した。
すでに発券した分は有効期限まで使えるが、これから新たに組む旅程では使えない。「いつかやろう」と思っていた人にとっては、選択肢がひとつ完全に消えたことになる。
世界一周特典は、マイルの「夢の使い道」だった。エコノミークラスの搭乗で積んだマイルを使って、ビジネスクラスで世界を周る——そのロマンが、ひっそりと幕を下ろした。
惜しいのは、周知期間が短かったことだ。発表から終了まであまり時間がなく、「知らないうちに終わっていた」という人も少なくない。
アップグレードポイントの廃止——上級会員が失う「もっとも大切な特権」
ANAのダイヤモンド・プラチナ会員にとって、アップグレードポイントは年間の修行の「ご褒美」だった。エコノミーで予約した座席をビジネスクラスにアップグレードできるこのポイントは、2027年3月31日で廃止される。
「修行」と呼ばれるSFC取得のための搭乗を繰り返し、ステータスを維持してきた人々にとって、アップグレードポイントは制度の核心にあった。「ポイントが使えるから、ANAにこだわってきた」という人も少なくない。
廃止後の代替制度については詳細がまだ明らかになっていない部分もあるが、「同等の恩恵が得られる」とは期待しにくい状況だ。上級会員の間に、静かな諦めムードが広がっている。
これほどまでに上級会員が「損をした」と感じるような改定が続くと、修行へのモチベーションにも影響が出てくる。「SFCを取る意味が薄れてきた」という声も、マイラーコミュニティでは珍しくなくなった。
国内線新運賃「シンプル・スタンダード・フレックス」——LCC化という批判は正しいか
2026年5月19日搭乗分から、ANA国内線の運賃体系が全面的に刷新された。従来の「スーパーバリュー」「旅割」「プレミアム旅割」などの体系は姿を消し、「シンプル」「スタンダード」「フレックス」の3種類に統一された。
それ自体は「わかりやすくなった」とも言える。問題は、いちばん安い「シンプル」運賃に課された制限の内容だ。
| 項目 | シンプル | スタンダード | フレックス |
|---|---|---|---|
| 事前座席指定 | 不可(出発24時間前から) | 可 | 可 |
| 予約変更 | 不可 | 有料で可 | 無料で可 |
| 払い戻し | 有料 | 有料 | 無料 |
| 無料手荷物 | 1個(23kg) | 1個(23kg) | 1個(23kg) |
| アップグレード | 不可 | 可 | 可 |
| 購入期限 | 搭乗前日まで | 搭乗前日まで | 当日まで |
最大の問題は「事前座席指定不可」だ。シンプル運賃では、出発24時間前まで座席指定ができない。ANAダイヤモンド・プラチナ・ブロンズ・SFCといった上級会員であっても、「シンプル」を選んだ場合にはこの制限が適用される。
「ANAを長年使ってきたのに、席を選べない」——この一点が、最も多くの批判を集めた。
FRIDAYデジタルの取材では「新運賃に不満噴出」と報じられ、「空の格差社会の始まりか」という見出しまでついた。SNSでは「LCCじゃないんだから」「上級会員への敬意がない」という声が相次いだ。子連れの乗客が子どもと隣同士に座れない可能性も指摘され、「座席ガチャ」という言葉も広まった。
ANA側はこの変更について「旅行スタイルに合わせて選べる自由度を高めた」と説明している。たしかに、早めに計画を決めて最安値を狙う一人旅には合理的な面もある。しかし、「LCC化」「サービス低下」という批判が多く上がったのも事実で、特に長年ANAを使い続けてきたファン層の失望感は大きかった。
プレミアムクラスが「ファーストクラス」表記に——名称変更の意味と温度差
2026年5月19日の変更でもうひとつ気になったことがある。国内線の予約画面で、プレミアムクラスが「ファーストクラス(プレミアムクラス)」と表記されるようになった。
これはANAが国内線に導入した新予約システム「アマデウス アルテア(Amadeus Altea)」の仕様に基づく変更だ。アマデウスは世界200社以上の航空会社が使う業界標準のシステムで、その区分に合わせる形でプレミアムクラスが「ファーストクラス」の枠に分類されることになった。
ANA側は「サービス内容の変更はない」と説明している。座席も機内食も、もちろん料金も変わらない。あくまで予約システム上の表記だ。
ただ、ANAファンの受け止め方は複雑だ。
「プレミアムクラス」という名称は、ANAが長年使い続けてきた固有の呼称だ。「ファーストクラス」という言葉は国際線の最上位クラスを連想させる。国内線の座席に「ファーストクラス」と書いてあれば、初めて見る人は混乱するかもしれないし、逆に「名前だけファーストクラスになった」と感じる人もいるだろう。
Aviation Wireも「顧客との温度差」という表現でこの変化を報じた。航空会社の都合(システム統合)と、長年の呼称に愛着を持つユーザーの感覚のズレ。小さいようで、ファンには気になる変化だ。
サービスが変わらないのであれば、怒るほどのことではない。ただ、「なぜ変える必要があったのか」がユーザーに丁寧に伝わっていなかったことは、今回の一連の変更に共通する課題だと思う。
上級会員が感じた「裏切られた」という感覚の正体
長年ANAにこだわってきた人の怒りは、単に「損をした」というものではないと思う。それよりも深いところに、「信頼関係を一方的に壊された」という感覚がある。
SFC(スーパーフライヤーズカード)を取得するためにどれだけの修行を積んだか。ダイヤモンドを維持するために、乗りたくない便にも乗り続けてきた人がどれだけいるか。アップグレードポイントがあるから、ANAのカードを使い続けてきた人がどれだけいるか。
ロイヤルティプログラムは「あなたを大切にする」という約束の形だ。その約束が、毎年少しずつ書き換えられていく。しかも、一方的に。
「改悪」という言葉の裏にあるのは、そういう裏切られた感覚だ。数字の話ではなく、関係性の話だ。
これは日本のマイラーに限った話ではない。世界の主要航空会社が次々とマイレージプログラムを改悪してきた流れの中で、ANAもその波に乗った形だ。ただ、ANAはこれまで「他社より手厚い」という信頼を積み上げてきた。その信頼が傷ついたことが、失望の深さにつながっている。
ANAラウンジにマイルで入ることはできなくなった
「マイルでラウンジに入れなくなった」——この変化も、ANAファンの間で静かに失望を広げている。
国内線ANAラウンジ:マイル払い廃止、4,000円に
これまで、上級会員でない一般の乗客でも、1,000マイルを支払うことで国内線のANA LOUNGEに有料入室できた。その仕組みが、2026年5月19日搭乗分をもって廃止された。
改定後の国内線有料ラウンジサービスは、1名につき4,000円(税込)。お支払いは現金またはクレジットカードのみとなった。マイルで支払う選択肢はなくなった。
さらに、ラウンジを利用したときに積算されていたマイル(貯まる側)も、2026年5月18日搭乗分で終了している。「マイルで払って入る」も「入ってマイルが貯まる」も、同時になくなった形だ。
対象ラウンジは、新千歳・羽田・伊丹・福岡・那覇の5空港のANA LOUNGE。
国際線ANAラウンジ:こちらもマイル払いなし
国際線のANA LOUNGE(成田・羽田・ホノルル)についても、有料入室のお支払いはクレジットカードまたは現金のみだ。マイルを使って入室する仕組みは、国際線においても存在しない。
2025年9月16日購入分から料金が改定されており、現在の料金は以下のとおり。
| 申し込み方法 | 成田・羽田(税込) | ホノルル | お支払い |
|---|---|---|---|
| 事前(ANAウェブサイト) | 8,800円 | 80米ドル | クレジットカード / PayPal |
| 当日(空港カウンター) | 13,200円 | 対象外 | クレジットカード / 現金 |
なお、ANA SUITE LOUNGEは有料サービスの対象外で、ステータス会員や対象クラスの搭乗者のみ利用できる。
ステータス会員の無料利用は変わらない
誤解のないように書いておく。プラチナ・ダイヤモンド・SFCなどの上級会員、およびビジネスクラス・ファーストクラス搭乗者が、会員特典としてラウンジを無料利用できることは変わっていない。今回なくなったのは、「マイルや現金を支払って一般客が有料入室する」という仕組みのうち、マイル払いの部分だ。
それでも、「ここぞというときに1,000マイルを使えば入れた」という小さな自由がなくなったことは、ANAファンにとってひとつの喪失だ。
改善点もある——片道発券が可能になったこと
公平に書く。今回の一連の変更には、改善点もひとつある。
2025年6月24日以降の予約・発券分から、ANA国際線特典航空券が片道から利用できるようになった。これまでは往復での発券が基本で、片道発券には制約があった。
これは、旅程の自由度を高める点で確かな改善だ。日本を出てそのまま現地で乗り継ぐ旅、帰りは別のルートを使う旅——そういう「旅慣れた使い方」がしやすくなった。
ただ、必要マイル数が大幅に引き上げられた状態での「片道OK」は、手放しで喜べない。「自由度は上がったが、コストも上がった」という現実がある。それでも、旅の組み方の幅が広がったことは事実だ。
ANAファンはいまどうすればいいのか
感情を整理したあとで、現実的な話をする。怒りと失望は正当だ。ただ、今後もANAを使い続ける必要がある人には、動き方がある。
1. ローシーズンを狙う
今回の必要マイル数改定は、ハイシーズンへの集中的な引き上げだ。ローシーズンの改定幅は相対的に小さい。春・秋の旅行を軸にすれば、まだ以前に近いマイル数で使えるゾーンがある。「夏のビジネスクラスで欧州」は遠のいたが、「3月の欧州ビジネス」はまだ現実的だ。
2. 国内線はスタンダード運賃を基本にする
シンプル運賃の制限が不満なら、スタンダードを基本にするのがシンプルな答えだ。価格差はケースによるが、「座席指定できる安心」を買うと思えば許容できる範囲のことが多い。上級会員ならなおさら、スタンダード以上を選ぶほうが納得感がある。
3. マイルを長期に貯めすぎない
制度はまた変わるかもしれない。マイルは「貯める資産」ではなく「使い続けるポイント」として扱うほうが、リスクが小さい。ある程度たまったら、ローシーズンの旅行に充てていく、という使い方が現実的だ。「満を持して使おう」と待っているうちに改悪されるリスクを、過去2年で多くのマイラーが学んだ。
4. アップグレードポイントは2027年3月末までに使いきる
廃止が決まっているアップグレードポイントは、期限内に使いきることが最優先だ。「もったいないから取っておく」ではなく、積極的に使う。旅程の組み方によっては、かなり価値のある使い方がまだできる。2027年3月31日まで時間はあるが、早めに旅程を組んでおくほうが安心だ。
5. 特典航空券はエコノミーローシーズンも見直す
ビジネスクラスのハイシーズンが現実的でなくなった今、エコノミー・ローシーズンの特典航空券は相対的に「残されたコスパの良い使い道」になっている。近距離アジアや韓国・台湾といった短距離路線は、まだ現実的なマイル数で使えるゾーンがある。量より質を追うより、回数を増やして旅を楽しむ方向に切り替えるのも一つの考え方だ。
よくある質問
ANA新運賃のシンプル・スタンダード・フレックスはいつから適用ですか?
2026年5月19日搭乗分から適用されています。それ以前に購入した旧運賃のチケットは変更されませんが、2026年5月19日以降の新規購入はすべて新しい3体系が対象です。
ANAプラチナ・ダイヤモンド会員でもシンプル運賃だと座席指定できないのですか?
そのとおりです。上級会員であっても、シンプル運賃を購入した場合は出発24時間前まで事前座席指定ができません。上級会員としての座席指定優先サービスは、スタンダード以上の運賃に限って適用されます。
ANA国際線特典航空券の必要マイル数改定はいつから適用ですか?
2025年6月24日(日本時間0:00)以降に予約・発券した分から適用されています。それ以前に発券した特典航空券は、旧マイル数が適用されたままです。
スターアライアンス世界一周特典はまだ使えますか?
新規発券は2025年6月23日で終了しています。すでに発券済みの世界一周特典は、チケットの有効期限まで引き続き利用できますが、新たに世界一周特典を組むことはできなくなりました。
アップグレードポイントはいつまで使えますか?
2027年3月31日をもって廃止されます。それまでに保有するアップグレードポイントを使いきる必要があります。廃止後の残ポイントの扱いについては、ANA公式サイトで最新情報を確認してください。
ANA国際線特典航空券は片道で使えるようになったのですか?
はい。2025年6月24日以降の予約・発券分から、ANA国際線特典航空券は片道での利用が可能になりました。これまでは往復発券が基本でしたが、今後は片道ずつ別々に発券することもできます。ただし、片道分の必要マイル数は新しい改定後のチャートが適用されます。
まとめ——怒りを持ちながら、賢く使い続ける
2025〜2026年のANAの変更を一言でまとめるなら、「マイレージの価値が大幅に下がった年」だ。それは事実だし、怒りを感じるのは正当だ。
特典航空券の必要マイル数はハイシーズンで最大70%近く引き上がり、世界一周特典は廃止され、アップグレードポイントも消える。国内線では安い運賃で座席指定ができなくなった。上級会員へのリスペクトが薄れた、と感じるのは当然の受け止め方だ。
ただ、ANAはまだ国内最高水準のサービスを持つ航空会社であることも事実だ。787の快適な客室、地上スタッフのていねいな対応、ラウンジの質——これらは変わっていない。
失ったものを正確に把握した上で、残っているものをどう使うか。怒りを抱えながらも、賢く付き合う。それがいまのANAファンに残された、いちばん現実的な選択だと思う。
変化が続く以上、制度を追い続けることも大切だ。このサイトでも、ANAのマイレージ・運賃に関する情報を随時更新していく。
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