シリコンバレーは、世界のテクノロジー産業の中心地です。アップル・グーグル・メタ・テスラ・インテル — スマートフォンを開くたびに触れる会社、日常に溶け込んだサービスを生んだ会社の本社が、サンフランシスコからわずか50〜60キロ南の谷間に集まっています。
観光地としてのシリコンバレーは、テーマパークとはまったく異なります。巨大な建物、カラフルな彫刻、圧倒的なスケールのキャンパス — そういう「見せ場」がある場所ではありません。キャンパスの中に入れるわけでもなく、有名社員に会えるわけでもない。それでも、実際にこの場所に立つと、iPhoneもGmailもGoogleマップも、ここで動いている人間たちが作ったのだという実感が確かに押し寄せてきます。
テックやビジネスに興味がある人にとって、シリコンバレーは聖地巡礼に値する場所です。サンフランシスコに5〜6泊するなら、1日か半日をここに充てる価値はあります。この記事では、訪問できる主要スポットを実用的な情報とともにひと通り解説します。
シリコンバレーとはどこか
「シリコンバレー」という名称は、地図上の固定した行政区画ではありません。サンタクララ郡を中心に、南はサンノゼ、北はサンマテオ郡にかけての広いエリアをまとめて指す通称です。具体的な都市名で言えば、クパチーノ・パロアルト・マウンテンビュー・サニーベール・サンタクララ・メンロパーク・フリーモントなどが含まれます。
名前の「シリコン」は、半導体(シリコンチップ)に由来します。1950〜60年代にかけて、この地域にインテルをはじめとする半導体企業が集積したことから「シリコンバレー」と呼ばれるようになりました。現在ではソフトウェア・インターネット・AIが産業の中心ですが、名称はそのまま定着しています。
エリア全体の面積は約1,800平方キロメートル。東京都より広い範囲に、時価総額で世界の上位を占める企業の本社が並んでいます。その密度は世界に類を見ません。
シリコンバレーの歴史 — 半導体の谷からインターネットの帝国へ
この地域がテクノロジーの集積地になった起点として、多くの研究者が挙げるのが1939年です。スタンフォード大学の学生だったビル・ヒューレットとデイブ・パッカードが、パロアルトのガレージで1ドルの製品(オーディオ発振器)から事業を始めました。後にヒューレット・パッカード(HP)と呼ばれる会社の誕生です。
このガレージは「シリコンバレー誕生の地」として現在も保存されており、カリフォルニア州の歴史的建造物に指定されています(367 Addison Ave, Palo Alto)。見学は外観のみですが、それでも訪れる価値があります。
1950年代、スタンフォード大学のフレデリック・ターマン教授が研究者と産業界の橋渡しをする「スタンフォード研究公園」を設立し、企業の誘致を推進しました。この取り組みが大学とビジネスの連携という、今日のシリコンバレー文化の原型をつくりました。
1968年にはインテルが設立され、半導体産業の中心地としての地位が確立しました。1970〜80年代にはアップルとマイクロソフトが相次いで登場し、パーソナルコンピューターの時代が始まります。
1990年代のインターネット普及期にはヤフー・グーグル・eBayが生まれ、2000年代にはフェイスブック・YouTube・ツイッターが登場しました。2010年代以降はウーバー・エアビーアンドビー・スラックなど「シェアリングエコノミー」を代表するサービスがここから生まれています。
80年で1つのガレージ起業から世界経済の中枢へ。その軌跡が、シリコンバレーの地理的な場所に重なっています。
シリコンバレーへのアクセス
サンフランシスコ国際空港(SFO)はシリコンバレーとサンフランシスコの中間に位置しており、実はサンフランシスコ市内よりもシリコンバレーに近い空港です。日本からの直行便(ANA・JAL)はSFOに到着するため、空港レンタカーでそのままシリコンバレーへ向かう旅程も組めます。
| 出発地 | 手段 | 所要時間 | 備考 |
|---|---|---|---|
| サンフランシスコ市内 | レンタカー(US-101南) | 50〜70分(渋滞次第) | 自由度が高い。主要スポットの駐車場は無料が多い |
| サンフランシスコ市内 | Caltrain(4th & King駅発) | 40〜60分 | マウンテンビュー・パロアルト・サニーベール駅が最寄り。スポット間の移動はUber/Lyft |
| サンフランシスコ市内 | Uber / Lyft | 60〜90分 | 片道50〜80ドル程度。渋滞で料金が変動する |
| SFO空港 | レンタカー | 20〜35分 | 到着後すぐシリコンバレーへ向かう場合に最短。空港レンタカーは事前予約を推奨 |
複数のスポットを自分のペースでまわりたい場合はレンタカーが最も効率的です。アメリカのドライブは日本と同じ右ハンドル・左側通行ではなく左ハンドル・右側通行です。最初の1〜2時間は慣れるまでゆっくり走るとよいです。駐車場はほぼどのスポットも広大で無料です。
Caltrainは定時運行で信頼性が高く、パロアルト・マウンテンビューのスポットを中心にまわる場合は電車で行ってスポット間をUberで移動するという組み合わせも使いやすいです。
アップルパーク ビジターセンター(クパチーノ)
2017年に完成したアップル本社「アップルパーク」の敷地に隣接した、一般向けの施設です。アップルパーク本体(スペースシップキャンパス)への入場は関係者のみですが、ビジターセンターはだれでも入れます。
スペースシップとは何か
アップルパークの本社ビルは「スペースシップ」と呼ばれる円形の巨大建築物です。直径約461メートル、延床面積約26万平方メートル。約12,000人が働く施設です。建物は完全な円形(ドーナツ型)で、中心部は広大な庭園になっています。
設計したのは建築家ノーマン・フォスター(フォスター+パートナーズ)。スティーブ・ジョブズが生前に構想し、自ら承認したプロジェクトです。ジョブズの死後、後継のティム・クックが引き継いで完成させました。外壁はすべてガラス張りで、自然光と外気を最大限に取り込む設計になっています。
電力は100%再生可能エネルギーで賄われており、屋根には17メガワット規模の太陽光パネルが敷設されています。建設費は総額50億ドルとも言われ、世界で最も高価なオフィスビルのひとつです。
ビジターセンターの内部
ビジターセンターは2つのフロアで構成されています。1階はApple Storeと展示スペース、2階は屋上テラスになっています。
1階のApple Storeは通常のApple Storeとは異なり、アップルパーク限定のグッズが販売されています。Tシャツ・マグカップ・トートバッグ・キャップなどにアップルパークのロゴが入ったアイテムで、ここでしか手に入りません。アップル製品(iPhone・Mac・iPad等)も通常通り購入できます。
展示スペースでは「アップルパークの模型」が見どころです。巨大な縮尺模型がテーブルの上に置かれており、360度から全体像を眺められます。また、AR(拡張現実)体験が用意されており、iPadを使って仮想的にアップルパークの内部を見学することができます。実際には入れないキャンパス内の様子を、デジタルで体験するという逆説的な体験です。
屋上テラスからの眺め
2階の屋上テラスに出ると、フェンス越しにスペースシップの外観が視界に入ります。建物全体は木々に囲まれているため、完全な全景が見えるわけではありませんが、あの円形の屋根と巨大なスケールは実感できます。晴れた日には周辺の山並みも見えます。
テラス横にはカフェ(Caffè Macs — 従業員食堂と同名)があり、コーヒーや軽食を楽しめます。ここでアップルパークを眺めながらコーヒーを飲むという体験自体が、訪問の目的になります。
所在地:10600 N Tantau Ave, Cupertino, CA 95014
営業時間:月〜土 9:00〜20:00、日 10:00〜18:00
駐車場:無料(建物裏に広大な駐車場あり)
入場料:無料(Apple Store内の購入は任意)
スタンフォード大学(パロアルト)
パロアルトに位置するスタンフォード大学は、シリコンバレー観光の中でも最も内容が充実したスポットです。一般観光客が自由に入れるにもかかわらず、世界水準の建築・美術・景観が凝縮されており、半日かけても飽きません。
スタンフォード大学の歴史
スタンフォード大学は1885年に鉄道王リーランド・スタンフォードと妻ジェーンが、前年に15歳で亡くなった息子リーランド・スタンフォード・ジュニアを記念して設立しました。「カリフォルニアの子どもたちすべてが私の子ども」というジェーンの言葉から、授業料は無料(開学当初)という方針で始まりました。
現在の授業料は高額ですが、奨学金制度が充実しており、家庭年収が一定以下の学生は実質無償で通えるプログラムがあります。在学生・卒業生・教員の起業した会社の時価総額を合計すると、一国のGDPに匹敵するという試算もあります。
広さは約33平方キロメートル。東京ディズニーランドの約60倍の広さを持つキャンパスは、農場・研究所・ゴルフコース・スタジアムまで包含しています。
メモリアルチャーチ
キャンパスの中心「メインクワッド(中央広場)」の正面に建つ、スタンフォードのシンボル的建築です。1903年にジェーン・スタンフォードが夫リーランドを偲んで建てたもので、1906年のサンフランシスコ大地震で大きな被害を受けましたが、その後再建されました。
ファサード(正面)のモザイクは「聖書の場面」を描いた圧倒的なスケールの作品で、使われているモザイクタイルは数百万枚とも言われます。金地に描かれた人物像がびっしりと並ぶ様子は、ビザンチン様式の教会を思わせます。
内部は白大理石と木材で構成された荘厳な空間で、ステンドグラスからやわらかな光が差し込みます。礼拝がない時間帯は一般観光客も無料で内部に入れます。礼拝時間は週末が中心ですが、時間が合えば参列することもできます(予約不要)。
フーバータワー
キャンパスの目印となる87メートルの塔です。1941年に建設され、フーバー研究所(Hoover Institution)の本部として機能しています。フーバー研究所はスタンフォード大学に付属するシンクタンクで、政治・経済・歴史の研究で知られています。
展望台は2〜3ドルの入場料で一般公開されており、エレベーターで最上階まで上がるとキャンパス全体・サンフランシスコ湾・遠くにはサンフランシスコ市街までを見渡せます。晴れた日は視界が50キロ以上に及ぶこともあります。
スタンフォード大学を「上から見る」体験は、広大なキャンパスの規模感を一気に把握するのに最も効率的な方法です。
ロダン彫刻庭園(カンター・アーツ・センター前)
キャンパス内のカンター・アーツ・センター(美術館)の前に、ロダンの彫刻が野外展示されています。これはスタンフォードが所有するロダン作品のコレクションで、世界最大規模のロダン屋外展示のひとつとされています。
「考える人(Le Penseur)」の実物大像はここでも見られます。パリのロダン美術館と同じ鋳型から作られた正規のキャスト(鋳造品)です。ほかにも「カレーの市民」「地獄の門」の断片など、代表作が並んでいます。
カンター・アーツ・センター自体も無料で入れる美術館です。ロダン作品の屋内コレクションに加え、印象派・現代アート・写真など幅広い所蔵品があり、1〜2時間を過ごせます。
スタンフォードを輩出した企業・人物
スタンフォードとシリコンバレーの関係を理解するためには、ここから生まれた企業と人物を知っておく必要があります。以下は特に知られた例です。
| 人物 | スタンフォードでの立場 | 創業・関与した会社 |
|---|---|---|
| ラリー・ペイジ & セルゲイ・ブリン | 博士課程(中退) | グーグル |
| ジェリー・ヤン & デビッド・ファイロ | 博士課程(中退) | ヤフー |
| ヒューレット & パッカード | 学部・大学院卒業生 | ヒューレット・パッカード(HP) |
| リード・ホフマン | 修士課程卒業 | リンクトイン |
| ピーター・ティール | 法学部卒業 | ペイパル、パランティア |
| コンドリーザ・ライス | 政治学教授・プロボスト(副学長) | 第66代アメリカ国務長官 |
スタンフォードには年間約200万人が訪問します。学生が授業に向かう横を、観光客が地図を片手に歩く。そういう日常的な光景がある場所です。
スタンフォード大学の実用情報
キャンパスは広大なため、移動は自転車かシャトルバスが便利です。観光客向けの「テキニ・シャトル」がキャンパス内の主要スポットをまわっています(一部有料)。徒歩でメインクワッド・チャーチ・ロダン庭園・フーバータワーをまわるだけなら、2〜3キロの歩行で済みます。
駐車場はキャンパス周辺に複数ありますが、平日は学生・教職員優先のゾーンが多く、観光客が使えるのは指定の有料駐車場(1時間3ドル程度)に限られます。週末は規制が緩く、比較的自由に停められます。
所在地:450 Serra Mall, Stanford, CA 94305
キャンパス一般開放時間:24時間(建物は時間による)
入場料:キャンパス自体は無料。フーバータワー展望台は有料(2〜3ドル)
グーグルプレックス(マウンテンビュー)
マウンテンビューにあるグーグル(Alphabet)のメインキャンパスです。「グーグルプレックス」という愛称は「グーグル」と「コンプレックス(複合施設)」を合わせた造語で、1997年からこの呼び名が使われています。
キャンパスの規模
グーグルプレックスの敷地面積は約1平方キロメートル以上にわたります。オフィスビル・データセンター・カフェ・フィットネスセンター・医療クリニック・托児所 — 従業員が生活のほぼすべてをキャンパス内で完結できる設計になっています。この「フルサービスキャンパス」という発想が、その後のシリコンバレー各社に広く採用されました。
グーグルの従業員はコーポラーと呼ばれ、無料の食事(数十のカフェテリア)・無料のヘアカット・無料のフィットネス・社内シャトルバスが福利厚生として提供されています。こうした恵まれた環境がトップ人材を集め続けるための重要な手段になっています。
一般観光客が見られるもの
キャンパス内への一般立ち入りは制限されています。ただし、周辺の道路・公園からはキャンパスの外観を十分に楽しめます。
Amphitheater Pkwy や Charleston Rd 沿いを走ると、グーグルカラー(赤・青・黄・緑)に塗られた建物群が見えます。駐車場には数百台のグーグルカラーの自転車(Gbike)が並んでいる光景も見られます。これは従業員がキャンパス内の移動に使う共用自転車で、Googleが定期的にモデルを入れ替えています。
キャンパスの入口付近(1600 Amphitheatre Pkwy)には「GOOGLE」のロゴが入った看板とカラフルな恐竜の像があります。ここは写真スポットとして人気で、多くの観光客が立ち止まって撮影しています。以前は看板の前まで近づいて撮れましたが、現在はセキュリティの関係でフェンスが設置されており、道路側からの撮影になります。
また、Androidのバージョンに合わせた彫刻(アイスクリームサンドウィッチ・ジンジャーブレッドなど)が以前は並んでいましたが、2019年以降にAndroidのブランド変更とともに多くが撤去されました。一部は現在もGoogleのマウンテンビューキャンパスに残っています。
ショアバードパーク
グーグルプレックスに隣接するショアバードパーク(Shoreline at Mountain View)は、一般開放されている公園です。グーグルの建物群を背景にしながら、サンフランシスコ湾を眺められる絶好の場所です。
この公園はゴルフコース・セーリングエリア・野鳥観察区域を含む巨大な公園施設で、週末には地元の家族連れでにぎわいます。グーグル観光のついでに、湾岸の自然を楽しめます。特に夕方は光が柔らかくなり、湾の向こうに沈む夕日と建物群のコントラストが美しいです。
メタ(フェイスブック)本社(メンロパーク)
フェイスブック(現メタ・プラットフォームズ)の本社はマウンテンビューの北、メンロパークに位置しています。住所は「1 Hacker Way, Menlo Park」 — 「ハッカーウェイ」という道路名からも、この会社の文化が伝わります。
広大なキャンパムとフランク・ゲーリーの建築
メタのキャンパスは複数のビルが集まる大規模施設です。中でも注目されるのが、建築家フランク・ゲーリーが設計した「MPK20」ビルです。2015年に完成したこのビルは、1棟の建物の中に約2,800人が働くオープンスペース型のオフィスで、世界最大の「ワンルームオフィス」とも呼ばれます。屋上全体が歩行可能な屋上公園(ルーフガーデン)になっており、植物が植えられた起伏のある景観が特徴です。
一般観光客はキャンパス内には入れませんが、「ハッカーウェイ」の入口付近には「Meta」のロゴがあり、写真スポットになっています。入口近くには「Like」の親指サイン(ポーズ)の大きな彫刻もあります(近年メタへの社名変更に伴い変化あり)。
ハッカーカルチャーの痕跡
メタのキャンパス周辺の壁にはフェイスブック時代から続くストリートアート・壁画が多く描かれています。一部はアーティストを招いて依頼した作品、一部は従業員が手がけたものです。「Move fast and break things(速く動いて、壊せ)」というかつてのフェイスブックのモットーを表した作品なども見られます。
メンロパークはスタンフォード大学の南に位置しており、グーグルプレックスとのアクセスも30分程度です。シリコンバレー観光のルートに組み込みやすい場所です。
テスラ工場(フリーモント)
フリーモント市にあるテスラの自動車製造工場は、シリコンバレー観光の中でも最も「産業の現場」を体感できるスポットです。製造業とテクノロジーが交差する場として、ほかのIT企業本社とは異なる迫力があります。
工場の規模と歴史
テスラのフリーモント工場はもともと、GMとトヨタが共同で運営していた「NUMMI(ニュー・ユナイテッド・モーター・マニュファクチャリング)」という工場でした。NUMMIは2010年に閉鎖され、その施設をテスラが取得して改装・再稼働させました。
敷地面積は約530万平方フィート(約49万平方メートル)。数十棟の建物で構成され、一日あたり数百台のテスラ車(Model 3・Model Y・Model S・Model Xなど)が生産されています。製造の大半を自動化ロボットが担っており、人間のエンジニアとロボットが共存する現場を見学できます。
工場見学ツアーの詳細
工場見学はテスラが提供する無料のツアーです(事前オンライン予約制)。所要時間は約70〜90分。ツアーガイドに引率されながら、組み立てラインの一部を見学します。
見学できる主なエリアは以下のとおりです。
- ボディショップ:車体のフレームをスタンプ(プレス)する工程。アルミニウムの板が自動的に成形されていく様子を見られます
- 組み立てエリア:部品が車体に取り付けられていく工程。多数のロボットアームが精密な動きを見せます
- ペイントショップ:見学できない場合もありますが、入れると色付けの工程を観察できます
- 最終検査エリア:完成した車のチェックが行われる場所
工場内は写真撮影が一部制限されています(スマートフォンは持ち込める場合とそうでない場合があるため、予約確認メールで確認してください)。
デリバリーセンターと購入体験
工場に隣接してテスラのデリバリーセンターがあります。ここではテスラ車の納車(顧客への引き渡し)が行われており、日によっては新車を受け取る喜びに満ちたオーナーと出くわすことがあります。テスラの購入・試乗の相談もここでできます。
デリバリーセンターはツアーとは関係なく立ち寄れる場所です。実際のテスラ車に触れたり、内装を確認したりすることができます。
所在地:45500 Fremont Blvd, Fremont, CA 94538
アクセス:サンフランシスコから車で約40〜50分。グーグルプレックスから約20分
入場料:無料(事前予約必須)
予約方法:テスラ公式ウェブサイトの「Experience Tesla」→「Factory Tour」から
コンピューター歴史博物館(マウンテンビュー)
グーグルプレックスから徒歩圏内にある、世界最大規模のコンピューター関連博物館です。コンピュータリング・エンジニアリング・デジタル文化に興味があれば、数時間を余裕で過ごせます。技術に詳しくなくても、デザインの歴史や産業の変遷として見ると十分に楽しめます。
バベッジ機関
この博物館の目玉展示のひとつが「バベッジ機関(Babbage Difference Engine No. 2)」です。19世紀のイギリスの数学者チャールズ・バベッジが設計した、歯車式の計算機械です。
バベッジは1800年代に「コンピューター」の概念を考案しましたが、当時の技術では実際に製造することができませんでした。博物館に展示されているのは、彼の図面に基づいて2006〜2008年に実際に製作された実物大の複製品です。全重量約5トン、歯車の数約8,000個。電動モーターを使って実際に動作する様子を見ることができます。
シリコンチップが1ミリ以下の世界で計算するのに対し、バベッジ機関は何百キロもある金属の歯車で計算する。その対比を見るだけでも、コンピューターの歴史の深みが感じられます。
主要展示物
博物館の常設展は「Revolution — The First 2000 Years of Computing」という特大展示で、人類の計算の歴史を20のチャプターで追います。
| 展示テーマ | 主な展示物・内容 |
|---|---|
| 計算の始まり | 算盤・計算尺・機械式計算機 |
| 真空管コンピューター | ENIAC(世界最初の汎用電子計算機)の再現部品 |
| パーソナルコンピューターの誕生 | Altair 8800・Apple I・Apple II・初代Mac(1984年) |
| インターネットの誕生 | ARPANETの展示・Webの歴史 |
| ゲームの歴史 | ポン(Pong)・スペースインベーダー・任天堂ゲームウォッチまで実物展示 |
| AIと現在 | チェスを指すDeep Blue・音声認識・自動運転の展示 |
日本人にとって馴染み深い展示としては、任天堂のゲームボーイ・ファミコン・ソニーのウォークマン(デジタル音楽プレイヤーの文脈で)なども含まれており、日本の電子機器メーカーがコンピュータリング文化に与えた影響も描かれています。
所在地:1401 N Shoreline Blvd, Mountain View, CA 94043
営業時間:火〜日 10:00〜17:00(月曜定休)
入場料:大人 21ドル、学生・シニア 16ドル、12歳以下は無料
駐車場:無料
インテル博物館(サンタクララ)
サンタクララにあるインテル本社内の無料博物館です。インテルは1968年にゴードン・ムーアとロバート・ノイスによってシリコンバレーで設立され、半導体産業の礎を築きました。
博物館ではインテルの歴史とムーアの法則(半導体チップの集積度が2年ごとに2倍になるという経験則)の意味を実物展示で解説しています。1970年代の初期マイクロプロセッサから最新のチップまで、技術の進歩を視覚的に追えます。
シリコンウェーハ(半導体の材料となる薄い円盤)の製造工程も展示されており、iPhoneやMacに入っているチップがどのようにして作られるかを理解できます。入場は無料で、所要時間は45分〜1時間程度です。
所在地:2200 Mission College Blvd, Santa Clara, CA 95054
営業時間:月〜金 9:00〜18:00、土 10:00〜17:00(日曜定休)
入場料:無料
ヒューレット・パッカード創業の地(パロアルト)
前述のとおり、1939年にビル・ヒューレットとデイブ・パッカードが会社を起こしたガレージがパロアルトに現存しています。
住所は367 Addison Ave, Palo Alto。現在は一般家庭の前庭にある普通のガレージとして存在していますが、カリフォルニア州の歴史的建造物として青い標識が掲げられています。「Silicon Valley’s Birthplace(シリコンバレー誕生の地)」と書かれたその標識の前で写真を撮る観光客が後を絶ちません。
外観のみの見学になりますが、住宅街の中にある素朴なガレージであることが逆に印象的です。「ここから世界が変わった」という場所が、普通の家の前にあるという事実が、シリコンバレーの本質を物語っているように感じます。
パロアルト市内の歩き方
スタンフォード大学に隣接するパロアルトは、シリコンバレーの中でも最も洗練されたダウンタウンを持つ街です。「ユニバーシティアベニュー」という目抜き通りに沿って、カフェ・レストラン・書店・ブティックが並んでいます。
ユニバーシティアベニュー
パロアルトのメインストリートで、スタンフォード大学のメインゲートからカルトレイン(パロアルト駅)まで約1.5キロ続く通りです。
この通りには朝から深夜まで、スタンフォードの学生・教員・スタートアップ創業者・ベンチャーキャピタリストが混在しています。カフェのテーブルで次のビリオンダラー企業のアイデアが語られていても不思議ではない、独特の緊張感と活気があります。
飲食店は幅広く、地元住民に人気のハンバーガーショップから本格的なシーフードレストランまであります。
サンドヒルロード(ベンチャーキャピタルの聖地)
スタンフォード大学の北側を走る「サンドヒルロード(Sand Hill Road)」は、世界のベンチャーキャピタル(VC)が集積する特別な道路です。セコイア・キャピタル、クライナー・パーキンス、アンドリーセン・ホロウィッツなど、アップル・グーグル・フェイスブックに投資した世界トップクラスのVCオフィスが並んでいます。
道路自体はごく普通の車道で、観光名所というわけではありません。それでも、この静かな道路を1兆ドル単位の投資資金が動き続けていると知ったうえで走ると、ただの地方道路がまったく違って見えます。
シリコンバレーの食事
シリコンバレーのレストランは多様です。移民が多い地域柄、本格的なインド料理・タイ料理・ベトナム料理・中国料理が安く食べられる食堂から、ミシュランの星付きレストランまで幅広くあります。
ランチのおすすめエリア
| エリア | 特徴 | 価格帯 |
|---|---|---|
| パロアルト ユニバーシティアベニュー | スタンフォード近く。カフェ・アメリカンフード・タコス | 15〜35ドル |
| マウンテンビュー カストロストリート | 地元民に人気。インド料理・タイ料理・ラーメンあり | 12〜28ドル |
| クパチーノ(アップル周辺) | 中国系・韓国系・日本料理が充実。アジア系移民が多い | 10〜25ドル |
| サンノゼ ダウンタウン | 選択肢が豊富。イタリアン・メキシカン・ステーキハウス | 20〜60ドル |
クパチーノはアジア系移民が特に多く、日本料理・中国料理・韓国料理のレストランが充実しています。本格的なラーメン・寿司・焼肉が食べられる店があり、食事の選択肢に困りません。
シリコンバレーのホテル
サンフランシスコに泊まりながら日帰りでシリコンバレーを観光するのが一般的ですが、シリコンバレー内に宿泊するという選択肢もあります。
| ホテル名 | エリア | 特徴 |
|---|---|---|
| ロスアルトスヒルズ ロザウッド | メンロパーク | ラグジュアリーリゾート。スタンフォード・VCオフィス街に近い |
| フォーシーズンズ パロアルト | パロアルト | スタンフォード・ユニバーシティアベニューに徒歩圏内 |
| ヒルトン サンタクララ | サンタクララ | コンベンションセンター近接。インテル博物館にも近い |
| マリオット マウンテンビュー | マウンテンビュー | グーグル・コンピューター歴史博物館に近い。ビジネス利用も多い |
シリコンバレーのホテルはビジネス需要が強く、平日はサンフランシスコより高く、週末は下がる傾向があります。週末旅行ならコスト面でも有利です。
モデルルート
1日コース(レンタカー使用)
| 時間 | スポット | 所要時間 |
|---|---|---|
| 8:30 | サンフランシスコ出発 | — |
| 9:30 | アップルパーク ビジターセンター(クパチーノ) | 60〜90分 |
| 11:15 | スタンフォード大学(パロアルト) | 1.5〜2時間 |
| 13:30 | ユニバーシティアベニューでランチ | 1時間 |
| 14:45 | HP創業ガレージ(外観のみ / 367 Addison Ave) | 15〜20分 |
| 15:15 | グーグルプレックス周辺(外観・ショアバードパーク) | 45分 |
| 16:15 | コンピューター歴史博物館 | 1〜1.5時間 |
| 18:00 | サンフランシスコへ帰着 | — |
2日コース(テスラ工場・メタ・インテルを加える場合)
| 日程 | スポット |
|---|---|
| 1日目 午前 | テスラ工場見学(フリーモント)→ 移動 |
| 1日目 午後 | メタ本社外観(メンロパーク)→ グーグルプレックス → コンピューター歴史博物館 |
| 2日目 午前 | スタンフォード大学(2時間かけてじっくり) |
| 2日目 午後 | アップルパーク → インテル博物館 → サンノゼでディナー |
シリコンバレー観光の本当の楽しみ方
シリコンバレーはテーマパークではありません。入ったら「わあ」と声が上がるような仕掛けは、どこにもありません。建物は整然とした企業キャンパスで、道路は静かな郊外のそれです。
それでも、スタンフォードのキャンパスを歩きながら「ペイジとブリンはここでグーグルの論文を書いていた」と思うとき、グーグルの駐輪場に並ぶカラフルな自転車を見るとき、バベッジ機関の歯車が動く音を聞くとき — 何かが確かに響いてきます。
自分が日常的に使っているサービス・アプリ・デバイスを、「ここで動いている人間たちが、この場所から作った」という事実として捉えなおす体験。それがシリコンバレー観光の本当の目的です。テーマパークよりも地味で、しかしテーマパークよりも深く刺さるものがある場所です。
よくある質問
Q. グーグルやアップルの本社の中に入れますか?
基本的には入れません。アップルパークは「ビジターセンター」のみが一般開放されており、円形の本社ビル(スペースシップ)の中には入れません。グーグルプレックスも従業員・招待者のみです。メタ本社も同様です。スタンフォード大学のキャンパスはだれでも自由に歩けます。コンピューター歴史博物館とインテル博物館は入場料(またはインテルは無料)で入れます。テスラ工場は事前予約すれば見学できます。
Q. シリコンバレー観光はサンフランシスコから日帰りで足りますか?
主要スポット(アップルパーク・スタンフォード・グーグルプレックス・コンピューター歴史博物館)だけなら、1日あれば十分まわれます。テスラ工場・メタ本社・インテル博物館まで加えると、余裕のある2日間が必要になります。テスラの工場見学は所要90分で移動時間も考えると、1日の半分を使います。
Q. テスラの工場見学の予約はどうすれば取れますか?
テスラの公式ウェブサイトから予約できます。検索すると「Tesla Factory Tour」のページが見つかり、日時を選んで無料で予約できます。週末の枠は特に競争が激しく、数週間前に満員になることがあります。旅程が決まったらできるだけ早く予約するのがよいです。ツアーは英語のみで行われますが、重要な案内は紙でも提供されます。
Q. 電車(Caltrain)だけでシリコンバレー観光はできますか?
一部は可能ですが、スポット間の移動がネックになります。スタンフォード大学はパロアルト駅から徒歩15分でアクセスできます。グーグルプレックスはマウンテンビュー駅から徒歩20〜25分(または短距離Uber)。ただし、アップルパーク(クパチーノ)・テスラ工場(フリーモント)・インテル博物館(サンタクララ)はCaltrainの駅から離れており、そこからUberが必要になります。電車+Uberの組み合わせでも十分まわれますが、レンタカーの方がスムーズです。
Q. シリコンバレー観光で日本語は通じますか?
基本的には英語のエリアです。ただし、クパチーノ周辺はアジア系移民が多く日本語対応スタッフがいる飲食店もあります。スタンフォード大学・コンピューター歴史博物館・テスラ工場のツアーはすべて英語です。スマートフォンの翻訳アプリ(Google翻訳・DeepL)があれば、標識の文字を読んだりスタッフとのコミュニケーションには困りません。
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