ANAの新しい個室ビジネスクラス「THE Room FX」やファーストクラス「THE Suite」ばかりが話題になりがちだ。でも、長距離国際線の快適さを本当に左右するのは、機内でいちばん多くの席を占めるプレミアムエコノミーとエコノミーのほうだったりする。
その2クラスに、ANAがレカロ製の新シートを入れる。対象はボーイング787-9型機の長距離国際線仕様。2026年度から順次はじまり、合計19機に広がっていく。数字だけ見ると地味だが、中身を読むと、これはかなり実のあるアップデートだ。SFC会員として国際線によく乗る目線から、なにが変わるのかを整理しておく。
新シートのメーカーはドイツのレカロ
今回ANAが採用したのは、ドイツのレカロ・エアクラフト・シーティング製のシートだ。自動車のスポーツシートで名前を知っている人も多いと思う。あのレカロの航空機部門が、ANAの新しいプレミアムエコノミー(モデルR4)とエコノミー(モデルR3)をつくった。
レカロの航空機シートは、軽さと座り心地のバランスに定評がある。機体が軽くなれば燃費がよくなり、その分が運賃やサービスに回る。乗る側にとっても、つくる側にとっても理にかなった選択だ。
プレミアムエコノミー(R4)の進化点
いちばん変化が大きいのはプレミアムエコノミーだ。これまでANAのプレミアムエコノミーは「エコノミーよりは広いが、ビジネスには遠い」という中間の位置づけだった。新シートはその中間の質を一段引き上げてくる。
シートピッチは40インチ(約101センチ)で、従来比プラス2インチ。リクライニングも9インチ(約23センチ)まで深くなり、こちらもプラス2インチ。モニターは15.6インチの大画面になった。配列は2-3-2の1列7席で、これは従来と同じ。窓側でも通路に出やすい2席ブロックが選べるのはありがたい。
| 項目 | 新シート(R4) | 従来比 |
|---|---|---|
| シートピッチ | 40インチ(約101cm) | +2インチ |
| リクライニング | 9インチ(約23cm) | +2インチ |
| モニター | 15.6インチ | 大型化 |
| 座席配列 | 2-3-2(1列7席) | 据え置き |
長距離便でプレミアムエコノミーを選ぶ人の多くは、「ビジネスは高いけれど、10時間以上をエコノミーで耐えるのはつらい」という層だ。ピッチとリクライニングが2インチずつ伸びるのは、その層にとって体感が大きく変わるポイントになる。
エコノミー(R3)も地味に効く改善
エコノミーのモデルはR3。配列は3-3-3の1列9席で、シートピッチは33〜34インチと従来と同等だ。ここだけ見ると「変わっていない」と思うかもしれない。でも、ていねいに見ると改善はちゃんと入っている。
- リクライニングが6インチ(約15センチ)まで拡大(従来比プラス2インチ)
- ひざ元の空間がプラス1インチ(約2.5センチ)広がった
- モニターが13.3インチに大型化
- 電源コンセント・USB Type-A/Type-C・Bluetoothオーディオ接続に対応
ピッチが同じでもひざ元が1インチ広がるのは、薄型シェルの設計によるものだ。リクライニングが2インチ深くなるのも、長距離便では効いてくる。エコノミーは「我慢する空間」から「ちゃんと休める空間」へ、少しずつ寄っていく。
全クラス共通でBluetoothオーディオに対応
今回の新シートで個人的にいちばん歓迎したいのが、プレミアムエコノミー・エコノミーともにBluetoothオーディオ接続に対応したことだ。
これまで機内エンタメを自分のワイヤレスイヤホンで聴くには、専用のアダプターを持ち込む必要があった。新シートなら手持ちのAirPodsなどをそのままペアリングできる。USB Type-Cで充電しながら使えるのも、いまの旅のスタイルに合っている。地味だが、毎回のフライトで確実に効く改善だ。
導入は19機・2026年度から順次
新シートの対象は、787-9の長距離国際線仕様機19機。内訳は新造機3機と改修機16機だ。2026年度から順次搭載されていく。
つまり、すべての787-9がいきなり新シートになるわけではない。当面は新シート機と従来シート機が混在する。確実に新シートに乗りたいなら、予約時のシートマップ(プレミアムエコノミーが2-3-2配列か)や、機材・座席数の表記を確認するのが安全だ。THE Room FXのときと同じで、しばらくは「当たれば新シート」という時期がつづく。
新造機3機はそのまま新シートで飛びはじめ、改修機16機は整備のタイミングで順に入れ替わっていく。投入路線は長距離国際線が中心になる見込みで、ヨーロッパ線・北米線といった飛行時間の長い路線から恩恵を感じやすいはずだ。どの路線に新シート機が優先的に入るかは、運航がはじまってからのスケジュールで見えてくる。
| クラス | モデル | 配列 | モニター |
|---|---|---|---|
| プレミアムエコノミー | R4 | 2-3-2 | 15.6インチ |
| エコノミー | R3 | 3-3-3 | 13.3インチ |
新シート機で快適に過ごす座席選びのコツ
新シートに当たったとして、どの席を選ぶかでも快適さはずいぶん変わる。長距離国際線をよく使う立場から、いくつか実用的なポイントを挙げておく。
- プレミアムエコノミーの2-3-2配列なら、窓側A・K席は2席ブロックの窓側で、通路に出るとき隣をまたぐのは1人だけ。カップルや一人旅で落ち着きたいなら狙い目だ。
- エコノミーの3-3-3配列は、長距離なら通路側C・G席が無難。トイレや機内ストレッチに立ちやすく、ひざ元プラス1インチの恩恵も通路側でいちばん効く。
- 機内エンタメをワイヤレスで楽しむなら、Bluetoothイヤホンを充電満タンにして持ち込む。Type-Cケーブルがあれば道中で充電もできる。
- 前方席や非常口席は座席指定で追加料金がかかることがある。SFC会員などステータス保有者は事前指定の幅が広いので、早めにシートマップを押さえておきたい。
シートマップで配列を見れば、新シート機かどうかはある程度見分けられる。プレミアムエコノミーが2-3-2で7席並びになっていれば、新仕様の可能性が高い。予約のひと手間で快適さが変わるので、ここは惜しまないほうがいい。
プレミアムエコノミーは「買い」になったか
これまでANAのプレミアムエコノミーは、「ビジネスに手が届かないときの妥協案」という見られ方をされることが多かった。エコノミーよりはいいが、価格差ほどの満足が得られるかは微妙、という評価だ。
新シートはその評価を変えうる内容だと思う。ピッチ40インチ・リクライニング9インチ・15.6インチモニターという数字は、欧米キャリアの上位プレミアムエコノミーと並ぶ水準だ。10時間を超えるヨーロッパ便・北米便で、体が休まるかどうかは到着後のコンディションに直結する。差額を「睡眠と回復への投資」と考えれば、新シートのプレミアムエコノミーは十分に検討に値する。
マイルでアップグレードを狙う人にとっても、新シートはねらう価値が一段上がる。エコノミーで予約しておき、プレミアムエコノミーへのアップグレードが取れれば、体感の差は以前より大きくなる。ANAのマイル・特典の使い方は、こうした機材リニューアルのタイミングで見直すと効いてくる。
ビジネスクラスの新シートは6月のパリ航空ショーでお披露目
気になるのは上位クラスのほうだろう。787-9のビジネスクラス新シートは、6月のパリ航空ショーでお披露目される予定だ。世界の航空関係者が集まる場でのお披露目ということで、ANAがそれなりに気合いを入れているのがわかる。
すでに2026年3月には、新個室ビジネスクラス「THE Room FX」が東京・六本木で本邦初公開されている。787-9のビジネスがTHE Room FXと同じ思想でつくられるのか、別系統のシートになるのかは、パリでの発表で見えてくる。続報が出たらこのサイトでも追っていく。
よくある質問(FAQ)
Q1. ANAの787-9新シートはいつから乗れますか?
2026年度から順次搭載されます。対象は長距離国際線仕様の787-9で、新造機3機と改修機16機の合計19機です。当面は新シート機と従来シート機が混在します。
Q2. 新しいプレミアムエコノミーはどのくらい広くなりますか?
シートピッチが40インチ(約101センチ)になり、従来比プラス2インチです。リクライニングも9インチ(約23センチ)に拡大し、こちらもプラス2インチ広くなりました。
Q3. エコノミーはなにが変わりますか?
シートピッチは33〜34インチで従来と同等ですが、リクライニングがプラス2インチ、ひざ元空間がプラス1インチ広がりました。モニターも13.3インチに大型化しています。
Q4. 自分のワイヤレスイヤホンは使えますか?
使えます。新シートはプレミアムエコノミー・エコノミーともにBluetoothオーディオ接続に対応しているため、AirPodsなどを機内エンタメに直接ペアリングできます。
Q5. ビジネスクラスの新シートはいつ発表されますか?
787-9のビジネスクラス新シートは、6月のパリ航空ショーでお披露目される予定です。2026年3月には新個室ビジネス「THE Room FX」が東京で本邦初公開されています。
新シートの最新情報や対象機材の確認は、ANA公式サイトでチェックするのが確実です。予約時はシートマップで配列を確認し、新シート機を狙っていきたい。
TE travel 

